第21回 豆子郎の『豆子郎』と伊藤環さんの器

こんにちは、飛田和緒です。今回ご紹介するのは山口県山口市に本店がある、豆子郎さんの『豆子郎』です。しばらく縁がなかった外郎(ういろう)を久しぶりに食べたくなり、今回は味を知っている名古屋の外郎ではなく、食べたことのない山口外郎を取り寄せてみました。

豆子郎は「とうしろう」と読みます。この名前は、創業者が菓子作りの“しろうと”だったことに由来しているそうです。満州鉄道のエンジニアだった創業者が戦後、昭和23年に中国から山口に戻り、おいしいお菓子作りを目指したことから豆子郎の歴史が始まります。300年以上の歴史がある山口外郎をもとに、それを超える味を目指して研究を重ね、既存のものとは一線を画した「豆子郎」を作りだしました。ですので、山口外郎ではなく、豆子郎というお菓子、という表現が正しいかもしれません。
私の外郎のイメージは、大きくてずっしり。子どもの頃に父が出張のたびに買ってきてくれた名古屋外郎で、包丁で厚く切って食べていました。一方、豆子郎は切る必要はありません。細くて長さは10cmほどと、とても食べやすい大きさです。
山口外郎は、材料にわらび粉と小麦粉を合わせています。豆子郎はそこに豆を加えているのが特徴。もっちりしつつプルっと柔らかく食後感が軽いのは、米粉を使っていないからでしょう。口あたりの良い食感とちょうど良い大きさで、3本ペロリ。甘さがとても上品なのも、あとを引く理由かもしれません。味は小豆と抹茶の2本組。驚きがあったのは、抹茶です。口にするとふわりと香りが広がります。抹茶の香りがしっかりと残るお菓子はそう多くありません。その食感と風味で、外郎のイメージが一新されました。
おいしさを保つために、豆子郎はフィルム密封包装されています。いまでは珍しくありませんが、実はこちらの創業者が発案したそうです。日持ちさせたい、という思いはエンジニアだからこそ実現できたこと。何気なく手にしていた密封包装ですが、改めてその功績はとても大きいと感じました。

今回の器は、伊藤環さんの作品。個展を開けばファンが集まる作家さんです。以前は、三浦半島にアトリエがあり、我が家から近かったので何度か訪れていました。現在のアトリエは岡山。引っ越されたあとも、東京のギャラリーやショップで購入しています。伊藤環さんも好きな作家のひとりなので、豆皿、茶碗、花器、湯呑みなど、たくさんの作品を揃えましたが、2011年の震災で割れてしまい、かなり数は減りました。ですので、金継ぎして大切に使っている作品もありますよ。この皿は10数年前でしょうか、アトリエにうかがったときに購入しました。直径が15.5cm で使い勝手のよいサイズ。取り皿にしたり、お菓子をのせたり、活躍してくれます。横に添えた菓子楊枝は、山椒の木の枝。実はこれ、父の手作りです。曲がっているのが案外いいな~と思っています。

さて、我が家の食卓を少しご紹介。
11月の初旬は、柿を毎年たくさんいただくので、干し柿を作ります。皮をむいて、紐でつなげて、吊るして、カビが生えないように雨に注意・・・だけでなく我が家の場合は、とんびやカラスにも注意。干し柿好きの私と鳥の戦いです(笑)。11月中はまだ食べられませんが、変化する様子を楽しんでいます。そして、この時期は漬物をよく食べます。おし漬け(塩漬け)した京菜やキュウリを塩出しして、甘酢漬けするほか、醤油をからめたり、ぎゅーっと水気を絞って刻みしょうがを和えたり。漬物は我が家に欠かせない、ご飯のおともです。

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