こんにちは、飛田和緒です。今回ご紹介する和菓子は、京都文化博物館に程近い静かな通り佇む亀屋則克さんの『浜土産(はまづと)』です。以前、雑誌で見て、いつか食べてみたいなぁと思っていました。
第13回 亀屋則克『浜土産』と八田亨さんの板皿
亀屋則克さんは、勅題菓を始めたことで京菓子の歴史に残る亀屋良則の分家になります。京の名門の系譜を継ぐだけあり季節を表す生菓子や干菓子は、さすがの美しさ。お店の格子戸には大きな暖簾が下がっていますが、暖簾がなければ店舗には見えない構えに京都らしい奥ゆかしさがあります。
浜土産は、5月中旬から9月中旬の夏限定の涼菓で、初代が大正時代に考案したそうです。京都市は海から離れていますが、暑い夏に蛤を眺めることで涼しさを感じて欲しいという思いだったのでしょうか。風流な磯馴籠(そなれかご)に、大きさのそろったきれいな蛤が入っています。あしらわれているヒノキの葉は軽い防腐の役割もあり、装いだけでなく実用性も備わっていました。
初めてみたときから、気になっていたのはその作り方。まるで獲ったばかりの蛤のように、ぴったりと口を閉じているのです。殻を開くと隙間がなく、まるで最初から中にあったかのように貝の形そのままの寒天が。そして、すっきりと透明な琥珀色の寒天の真ん中に一粒、浜納豆が浮かぶように入っています。どうやって、こんなにもきれいなお菓子ができるでしょう! 食べるのがもったいないくらいですが、空いた貝殻ですくって食べるという一興も楽しめ、そんな遊び心もおつです。
口に入れるとつるんとしていて、その後、寒天のしっかりとした食感が味わえます。味は、味噌味の浜納豆のわずかな塩気が、琥珀糖の控えめな甘さを引き立てています。てっきり豆は甘いと思い込んでいたので、意表をつくおいしさです。見た目も味も驚きを与えてくれる宝石のような涼菓は、忘れられない逸品となりました。
器は、大阪府堺市で作陶芸されている八田亨さんの板皿です。こちらの連載でしばしば出てくる、鎌倉のNEARさんで最近購入しました。木製以外でちょうどいい大きさの長方形の皿を探していたときに見つけました。大きさが26.5cm×1cmで幅も厚みもあるのでどっしりとしていて、板のように平らなので、安定感があります。白掛けされた板皿の肌の感じが珍しく、色味が和洋どちらの料理にも合うとも思ったのが惹かれた理由。普段は、刺身やカルパッチョをのせたり、オードブルのようにチーズをのせたりして使っています。土の力強さがありつつ、シンプルな形状なところが良いですね。
さて、我が家の食卓を少しご紹介。
7月は夏野菜の真っ盛り! ナス、トマト、キュウリ、スッキーニといろいろあり、毎日どれかを料理したり、混ぜ合わせたり。
春はハウス栽培が多かったキュウリも、この時期は露地栽培になります。生野菜としてはもちろん、熱を加えた料理もよく食べます。出始めの細くて小さいものは、見た目が良いので切らずに丸ごと使用。最初に塩をふり、ニンニク、唐辛子を入れて、オリーブオイルまたは米油で炒めます。普通のサイズが出てきたら、皮をむいて半分に切り種の部分を取って、食べやすい大きさに切って炒めます。塩コショウをしたら、豚コマやひき肉を合わせてご飯のおかずに。キュウリも最盛期を過ぎると太いものが出てくるので、皮をむき食べやすい大きさに切って煮物に。塩少々と梅干しとダシで煮ると、冬瓜煮のような料理に。ちなみに皮は中華スープや、味噌汁に使います。キュウリは冷たいものと思われがちですが、温かい料理でもおいしいですよ。