〇月×日
「とんかつ」を再評価し、ゆるぎない日本の至宝料理と定義した「東京とんかつ会議」の出現以来、とんかつを取り巻く環境は変わった気がする。
その中でも高田馬場「とんかつひなた」の部位食べ比べは、とんかつの可能性を大きく広げた。
そして昨年オープンの「銀座かつかみ」。食べ比べに高級感を持たせ、ワインとのペアリングも導入。〆にはかつ丼、ソースカツ丼、カレー、カツカレー、生姜焼き丼を完備。そうそう、これこれと、酒飲みが欲していたアイテムが揃っている。
仕掛けたのは、だいたいいつも楽しくてわくわくするお店を生み出す、阿部光峰氏。揚げ手はひなたの初期を担った日向氏。
まずは表面に浮いた肉汁を吸い、ワインを飲む。肉を齧る。塩を振って齧る。レモンを絞って齧る。ソースをちょこっとつけて齧る。
恍惚とした気分のまま、次は別の部位で永久機関の如く幸せを繰り返す。で、コース5000円から。
【3月の食日記】
SHOP INFORMATION
▶ 店名 銀座かつかみ
▶ URL https://katsukami.com/
SHOP INFORMATION
▶ 店名 とんかつ ひなた
▶ URL http://www.tonkatsu-hinata.jp/
〇月×日
昨年オープンした「赤坂 渡なべ」。なんだかこの店内、既視感があると思っていたら「アムリット」があった場所だった。
キャラ立ち十分なご主人は、柔軟性と客筋の良さで有名な「赤坂 津やま」出身だけに、引き出しが豊富。コースが主体だけれど、それ以外にも酒飲みなら垂涎ものの酒肴メニューも。好きな数だけ焼いてくれるセロリ餃子、隠し味が絶妙なポテサラ、しっとりとした自家製からすみ……。
一人用の鍋もあるので、その日の食材をアレンジしてオンリーワン鍋も楽しめる。先日はサクラマスと春キャベツと新玉ネギ鍋。あまりの美味しさに汁まで飲み干し、盃は止まるところを忘れ。
もちろん最後は名物の鯛茶漬け。あぁ、そういえばお米ってふくよかだったんだなあ、と噛みしめる。
こんなお店の常連になりたい。
SHOP INFORMATION
▶ 店名 赤坂 渡なべ
▶ URL http://www.akasaka-watanabe.net/
〇月×日
1957年創業。渋谷の老舗「元祖うな鐡」。*他の「うな鐡」は無関係らしい。
さまざまな部位を駆使したうなぎ串焼き8本コースで2080円と、なんとも楽しく嬉しい値段と内容。
この手の人気大衆店に共通することだけれど、若かろうがアルバイトだろうが、サービススタッフのコミュニケーション能力が非常に高く、気持ちがいい。一見、怖そうだったとしても。
SHOP INFORMATION
▶ 店名 元祖うな鐡
▶ URL http://www.unatetsu.com/main.html
〇月×日
話題の恵比寿「小泉料理店」へ。
20年以上続いた喫茶店だったという場所で、流行りのワンオペビストロ。
コースは3800円、4500円、5000円。それぞれメインが豚、羊、牛で前菜は一緒。
ご主人(もちろん苗字は小泉さん)はフレンチ、和食、中華と経験しているらしく、これまた流行りのジャンルレスでワインはビオ。
もちろん、なんちゃって系ではなく、コトリヤードというブルゴーニュの郷土料理を鰆、白子、芽キャベツ、蕪という素材で、少しエスニックな酸味を入れてみたり、鴨肉とモツでシュウマイを作ったりと、楽しさと美味しさがきちんと共存している。こんな店が近所にあったらたまらんだろう。
そしてなぜかBGMはストーンズ、クイーン、ピンクフロイドなどなど。「ザ・ウォール」を聴きながら食事をしていると、やたらと酒が進むことを発見した。
SHOP INFORMATION
▶ 店名 小泉料理店
▶ URL https://www.facebook.com/Ryori10k/
〇月×日
2月のオープン前から話題沸騰だった「恵比寿えんどう」。コース2万で、現在は昼、18時、20時半の3回転制。穴子ではなく鰻の握りだったり、握り専用の箸を作ったりと、新たな試みが目を引く。
SHOP INFORMATION
▶ 店名 恵比寿 えんどう
▶ URL https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13231081/
〇月×日
最近、独り飲食時に好きな浜田山「シクロ」。
シェフの経歴がすごいというのはいろいろな方が書いているので割愛するけれど、ツボを押さえていて、きちんと美味しい。
そしてひとりでサービスをこなすメガネ君がまたいい。なにひとつ出しゃばらないけれど、メニューを熟知し、的確。コミュニケーション能力も高く、話していると楽しい。何者だろう。
オーナーが選曲しているというBGMは、「シクラメンのかほり」(布施明)から、「クリスマス・イブ」(山下達郎)、ベトナム人のロックをはさんで「ハナミズキ」(徳永英明ね)と、ここはマイルドな「歌京」かい? と思うほどで、一人でも全く飽きないため、食も酒も進む。
ベトナム風生姜焼きにミンカレー、鶏肉とレモングラス。また新たな酔い止め薬を手に入れ、安心して333ビール、白、白、赤。場所を移して赤、赤、赤、赤……。時に大人は、嬉々として道を外す。
SHOP INFORMATION
▶ 店名 ベトナム食堂シクロ
▶ URL https://localplace.jp/t100154772/
〇月×日
娘が人生最大レベルでヒマになり、入学に向けなぜか腹筋運動などをしているので、横浜のパンフェスへ連れて行くことに。というわけで息子への置き弁。いんげんと豚肉の梅和え、特製割り下のすき焼き風、鶏ももパリパリ焼き、白醤油ベースの玉子焼きに、沢庵寺のたくあん漬け。
〇月×日
数十年ぶりの中華街。信頼しているグルメドクターのポストを参考に「金陵」へ。2階でチャーシュー丼を食べたらあまりに美味しいので、1階で腸詰と共に夕飯用にテイクアウト。もっといろいろ買えばよかった。
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▶ 店名 金陵
▶ URL http://www.kinryou.com/
〇月×日
京都在住の方から、いいワインバーに行きたいとリクエストが。
大変詳しい方にリサーチしたところ、こちら「ランパール」がベストだと。
サイトを拝見すると、オーナーはかつて名シェフを輩出した「アンフォール」、そして「ラグラップ」出身。いわゆる”五十嵐系”なので間違いないだろうと思ったら、その通りで。
食事はアラカルトで、メニューにはフレンチの実質旨いものが並ぶ。
アミューズブッシュはもちろんブーダン。
馬肉のタルタルと今年初のホワイトアスパラ。周りにはこちらも旬のホタルイカ。メインは豚足を鳥のもも肉で包んだ一品。
そしてなんといっても15種のチーズ。最近、カジュアルなフランス料理店が多く、実はあまりオンメニューしていなかったりするので嬉しい限り。
2014年のリースリングはボトルで、赤はそれぞれグラスで2~3杯。マールまで飲んでひとり1.3万ほど。
昔からのフレンチ好きが、セミカジュアルに使うにはたまらないと思う。
SHOP INFORMATION
▶ 店名 La cave des Remparts~ランパール
▶ URL http://www.la-cave-des-remparts.com/
〇月×日
辛いのがNGな息子が「これなら食べられる!」とびっくりした「島本の明太子」。全然知らなかったけれど、美味いです。そして娘に明太子、息子にはタラコという面倒が無くなり大変ありがたい。
さらに、朝日新聞に掲載された山脇りこ先生の「新ジャガの梅干し煮」をさっそく。梅干しとバター、しかも煮物なんて考えもしなかったけれど、本当に冷めても旨い。
ごましゃぶは先日、「赤坂 渡なべ」で名物鯛茶漬けを食べて悟ったように。ゴマダレをけちってはいけない。ガッツリかけるのがコツ。
素敵なからすみパウダーも手に入れたので、アスパラの目玉焼きにたっぷりと。
SHOP INFORMATION
▶ 店名 島本
▶ URL https://www.simamoto.co.jp/
〇月×日
西永福駅には、井の頭線唯一のキャバクラと言われる「熱帯夜」がある。
かつては著名な作家の愛人が所属していたこともある由緒正しい人気店で、予約無しでは入れないことも多々(なんでそんなことを知っているんだろう)。
前置きが長すぎたけれど、その隣に2月にオープンしたカウンターのみのビストロが「ムーグルモン」。
シェフは「カルネヤ」で3年、その後、六本木「祥瑞」を経て開業。肉は二大希少価値精肉店と言ってもいい、サカエヤとエレゾ。
マニアックなグルマンなら歓声をあげそうな、恐るべき背景だ。
今日はエレゾの短角牛をメインにオーダー。白インゲンとカラスミを肴に(八幡平のマッシュルームのサラダも美味)、グラスの白で待機。
ワインはすべてビオで、いい感じのを惜しげもなく開けてくれる。
焼きあがったイチボは一瞬ですーっと胃の中に消え、200グラムしか頼まなかった自分の不明を恥じる。ポテトフライとの食感のハーモニーも素晴らしい。
そんなわけで、前回気になっていたカチョエペペを締めにオーダー。
これがまた、なんとも酒が進む味で、締めどころか赤からまた白に戻ってグイグイと。
料理人もよく訪れるようだけれど、それはそうだろう。
数週間後にはサカエヤさんの肉も届くようなので、楽しみでたまらない。
SHOP INFORMATION
▶ 店名 meuglement
▶ URL https://www.instagram.com/le_meuglement/