今回、アッキーが気になったのは、明治時代に作られ始めたという、長野県の伝統的な乾燥ゼリー菓子、「みすず飴」。「厳選された国産の果実を使用、無香料・無着色、機械に頼らない手づくり」という製法にこだわり続け、今もなおファンに愛され続けています。
同じこだわりでつくられているのが、「四季のジャム」。昭和初期からのロングセラー商品です。
現在、株式会社飯島商店の七代目となる、代表取締役社長の飯島新一郎氏に、取材陣が、長い年月を経ても変わらぬおいしさと、愛され続ける秘密をうかがいました。
国産果実のおいしさにこだわり続けて100年。 「みすず飴」と「四季のジャム」の変わらぬ輝き
2022/03/14
株式会社飯島商店 代表取締役社長の飯島新一郎氏
—会社の始まりは、なんと江戸時代だそうですね!
飯島 正確にはわからないのですが、文化13年(1816年)には、飯島商店の母体になった「油屋」が、ここ上田で穀物商を営んでいたという記録が残っています。それが水飴屋に転身したのが、およそ100年前のことです。私の曽祖父にあたる飯島新三郎が、洪水被害で困っている農家を助けるために、冠水米を原料にして水飴を製造することを思いついたそうです。
明治42年1月の初荷の写真。
消防士に扮した社員の仮装行列のバックに
映っている建物が、旧店舗。
明治期の水飴ラベル。
—そのころから、果物にこだわっていたのですか?
飯島 明治末期から信州はフルーツ王国でした。曽祖父は、「地産地消にこだわった商品をつくりたい」という想いで、北陸地方で伝統的に作られている「翁(おきな)飴」を原型にし、そこに果物を加えた新しいタイプの翁飴を、明治の末に発売しました。これが現在の「みすず飴」の原点です。さらに、戦前の昭和初期にはジャムをつくり始め、これが大ヒット商品となりました。果物のお菓子の専門店として、長く親しんでいただいております。
6種類の完熟国産果汁を、
寒天・グラニュー糖・水飴で固めた「みすず飴」。
—「みすず飴」も「四季のジャム」も、果物をそのままいただいているようなおいしさに驚きました。無香料で無着色なのに、香りが豊かで、色も鮮やかですよね。どんな秘密があるのでしょうか。
飯島 国産の果物を使用するというのは当たり前で、どんな種類の果実をどんな状態で収穫し、どうやって製品にするか、という点にこだわっています。
最近の果物は、「生で食べてもおいしいもの」という観点で品種改良を行っているので、酸味を抑えて甘さを増すことに力が入れられています。しかし、飴やジャムに加工する際には、甘さよりも果物本来の酸味や香りのほうが大切なのです。甘さは、砂糖で調整できますからね。膨大な国産果実品種のなかから、さまざまな試作を繰り返した結果、「昔ながらの品種の果物がいちばん」という結論に至りました。たとえば、りんごだったら紅玉、柑橘は三宝柑です。
さらに、普通の加工品は、流通に乗せるためにタイムラグが発生します。そのため、果物がいちばんおいしい状態になる前に収穫するしかないのです。弊社では農家で仕入れてすぐに仕込むことができるので、いちばんおいしい「旬」の時期の果物を使うことができます。
—三宝柑というのは、あまり聞いたことがない果物でした。
飯島 そうでしょうね。もともとは夏ミカンのジャムをつくっていたのですが、45年ほど前に、冬の気温の影響でどうしても苦みが強く出てしまう年がありました。そこで先代の社長が、もっといいものをと探し続けていたところ、出会ったのが和歌山の伝統的な果物、三宝柑です。甘みが上品で、酸味と香りが豊かで、風味が力強い。「流行らないから」と栽培をやめようとしていた農家を説得して、大量に発注したそうです。それを売り出したところ、大ヒットしました。今ではうちの主力商品です。
四季折々の国産果実を完熟で収穫し、
瓶詰にした「四季のジャム」。
なかでも「三宝柑」にはファンが多い。
—最近のジャムは、「甘さ控えめ」の低糖度のものが多いですよね。「四季のジャム」は、なぜ低糖度にしないのでしょう?
飯島 「四季のジャム」は、高糖度(糖度60%以上)にこだわっています。糖度を高くするひとつめの理由は、保存性を高めるためです。保存性のために加熱時間を長くするという方法もありますが、それでは香りも色も悪くなる。糖度を高めることで、時間がたっても、果物のおいしさや香りを損なわずに楽しんでいただくことができます。そして、なんといっても高糖度ジャムには、「深みのある味わい」があります。砂糖と果物に含まれるたんぱく質が出会うことで、化学反応が起こり、芳醇な香りと、ジャム特有のコクのある味わいが生まれるのです。ジャムに使用する砂糖は、「白双糖」という高純度で透明感のある砂糖を使用しています。
弊社では低糖度の「フレッシュジャム」も販売していますが、より生果実に近い仕上がりで、高糖度のジャムとはまた違う魅力があります。こちらは早めに食べきっていただくものです。ぜひ、両方を食べ比べてみてください。
—製法にはどんなこだわりがありますか?
飯島 昔ながらの手作りにこだわっています。なるべく機械化できるところはしたいのですが、原料の練り、煮詰めなどの工程には、職人の勘がどうしても必要なのです。とくにみすず飴は、その日の気温や湿気で状態が微妙に変わります。包丁で切ったり、オブラートを巻くという工程は、人の目で見ながらやる必要があるのです。うちには日本で一、二を争う職人たちがいると自負しています。
切り分けた生飴に、一つずつ手作業で
0.02mmの薄さのオブラートを巻きつけていくのは、
熟練職人ならではの技。
—「ずっと変わらないでほしい」というファンがたくさんいらっしゃるのでは?
飯島 正直、従業員より商品に詳しいようなお客様もいらっしゃいます(笑)。非常に細かいマイナーチェンジは結構やっているのですが、「変えたでしょ」というご指摘を受けてしまう。ときには、お客様に満足してもらえないならだめだということで、また元に戻したこともあります。ここまで真剣にうちの商品を見ていてくださるというのは、ある意味怖い、でも非常にありがたい存在です。社員たちには、「お客様はお金を払ってやってくださっている取締役。クレームは宝の原石だよ」といつも言っています。
—それだけのこだわりを守り続けていくというのは、ご苦労も多いでしょうね。
飯島 とにかく原料の確保が難しいです。農家はどこも高齢化していて、後継者が足りないので困っている。いい原料がないと商品はつくれないので、農家さんをなんとか応援したいと思っています。また製造面でも、昔ながらの技術を承継していくのは大変です。
さらに、当店には観光や帰省のお客様が多いので、コロナ禍で大きな打撃を受けています。でも、悪いことばかり見ていてもしょうがないので、楽しいことを考えていきたいですね。
私は、会社の大きな使命として2つのことがあると思っています。
1,みすず飴を守ること
2,文化財の建物を守ること(上田本店、上田分店は文化庁有形文化財に指定されている)
古いものを守り続けるためには、小さな新しいチャレンジをどんどんやっていくことが必要だと思っています。やることは山積みですが、厳しく温かく見守ってくださるお客様のご要望に応えるために、これからも頑張っていきたいです。
大正13年に建てられた上田本店は、
平成19年に文化庁有形文化財に指定された。
上田を代表する観光スポットになっている。
—本日は貴重なお話をありがとうございました!
「みすず飴セロファン包装型 角袋入」(あんず、うめ、さんぽうかん、ぶどう、もも、りんごの6種類入り、260g・約18粒)
▶価格 ¥550(税込)
▶店名 飯島商店
▶電話 0120-511-346(日・祝日を除く8:30~17:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://www.misuzuame.net/SHOP/MC01.html
▶オンラインショップ https://www.misuzuame.net/
「四季のジャム 三宝柑」(L:580g・M:350g・S:160g)
▶価格 ¥680 (税込) ~ ¥1,060 (税込)
▶店名 飯島商店
▶電話 0120-511-346(日・祝日を除く8:30~17:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://www.misuzuame.net/SHOP/ISJ3.html
▶オンラインショップ https://www.misuzuame.net/
<Guest’s profile>
飯島新一郎氏(株式会社飯島商店 代表取締役社長)
1974年長野県上田市生まれ。東北大学大学院応用生物化学科修士課程卒業。ハウス食品株式会社研究所勤務を経て、2001年に株式会社飯島商店に取締役として入社。商品開発・製造・販売・財務など、全ての業務管理及び事業計画立案に携わる。2006年副社長の後に、2019年に八代目として同社代表取締役社長に就任。商店街振興組合理事および商店街フリーペーパー編集長、商工会議所議員、観光協会監事など、地域活動にも注力している。
〈文・撮影/臼井美伸(ペンギン企画室) MC/栗原里奈 画像協力/飯島商店〉