「寒天を使った半生菓子」と聞いて、なにをイメージしますか? 「おばあちゃんの家にある」「どんなものかさっぱりわからない」など、時折聞こえるネガティブな声を嘆き、伝統的な寒天菓子に新風を吹き込む菓子メーカーがあります。三大菓子処のひとつ、島根は出雲で100年以上続く老舗。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった津山屋製菓株式会社代表取締役の川田康二氏に、取材陣が伺いました。
寒天を使った伝統的な和菓子のイメージを一新する「琥珀・マーブルストーン」
2022/03/16
津山屋製菓株式会社代表取締役の川田康二氏
―寒天を使った半生菓子を長年作り続けていらっしゃるのですよね? 例えばどんな商品がありますか?
川田 大正元年に曾祖父が創業した当初は、和菓子店でした。戦時中は砂糖が不足し、麹や味噌などを製造していた時期もありますが、祖父が戦死し父の代になって、和菓子製造に戻りました。それから流通菓子メーカーへとシフトチェンジ。半生和菓子を作って菓子問屋やスーパーなどに卸す会社です。羊羹やまんじゅうなどを作っていた時期もありますが、寒天菓子に勝機を見出し、比重が大きくなっていきました。スーパーのお菓子コーナーにある寒天菓子やゼリーといった袋菓子を思い浮かべていただけるとわかりやすいかと思います。
―独特の弾力と表面を覆う砂糖、懐かしい味わいのおやつたちですね!
川田 購買層は年配の方が多いので、おばあちゃんの家で見る、そんなイメージを持たれることが多いのが残念です。10代、20代の若者は、その商品すら知らない子もいたりして……。ですが、寒天菓子は動物性食品を使わず脂肪分も塩分もほとんどない、ヘルシーで身体への負担が少ないデザートなのです。工夫すれば、若い方々にも受け入れてもらえるんじゃないかと、伝統菓子の改革に乗り出しました。
―そうして生まれたのが「琥珀・マーブルストーン」なんですね。キラキラ宝石のように美しくて、まずは見た目にときめきました。
川田 ありがとうございます。伝統的な和菓子に琥珀糖というのがあります。寒天と砂糖を炊き上げ、固めて乾燥したもので、「食べられる宝石」とも言われています。だったらもっと宝石らしく美しくと、マーブルカラーにし、刃物を使わず手割りすることでより鉱物に近い、独特の断面を創り出しています。
一つひとつすべて形が違うのは手割りならでは。断面の表情が、宝石の原石を思わせる。
―そして、口にすれば、外側はシャリっと、中はプルプル、その食感が楽しくて。
川田 それが琥珀糖の特長です。砂糖を結晶化して独特のシャリっと感を出しつつ、中は寒天の具合を調整して柔らかすぎず固すぎない食感にしています。一粒でほっと満足できる甘みがあると思います。
透き通る美しさ。一口かじれば、シャリっとした表面に反して中はプルプル食感。
―そして、色ごとに香りと味わいが違うことに驚きました。
川田 もともと琥珀糖は食感と甘みを楽しむお菓子ですが、私にはなんとも単調なイメージがありました。そこで、食紅で色を付けるだけではなく、果汁やリキュールを加えてフレーバーを出すことにしました。赤はいちご、黄色はみかん、緑はりんごというように、それぞれの味と香りを楽しめることで、退屈なお菓子でなくなっていると自負しています。
女子会などで炭酸水と一緒にグラスに入れても◎。
―一粒一粒を大事にいただきたくなります。贈り物にもよさそうですね。
川田 「そこに感動があるか」と常に考えながら商品開発をしています。人に差し上げたくなるか、特別なときに食べたくなるか、日常にもハレの日にも使っていただけたら嬉しいな、と。ですから、ちょっとした遊び心も大切にしています。レアというほどではありませんが、5箱に1箱の割合で、ハート形の琥珀糖が入っているんですよ。
ハートはいちご味。洋風フレーバーなので紅茶やコーヒーも合うが、やっぱり緑茶も。
―遊び心といえば、送られて来たときのパッケージがとてもかわいかったです。川田社長のアイデアですか?
川田 若くて感度の高い社員がいてくれて、パッケージにも、商品開発にも、彼らのこだわりとアイデアと愛情がたっぷり込められています。これからは、万人受けするようなものではなく、エッジの効いた、個性の際立った商品を送り出していきたいと考えています。商品そのものはもちろん、パッケージやネーミング、SNSなどでの発信もとても大事。社員の感性や情熱を頼りに、会社が一丸となって寒天菓子を推していきます!
凝ったデザインの段ボールでちらりと顔をのぞかせるのは「てんちゃん」というキャラクター。2015年2月生まれの男の子とか。
―もう、寒天菓子はおばあちゃん家にあるものなんて言わせませんね! すばらしいお話をありがとうございました。
「琥珀・マーブルストーン」
▶価格 ¥600(税込)※2022年3月以降
▶店名 いづも寒天工房 出雲大社参道本店
▶住所 〒699-0711 島根県出雲市大社町杵築南1364-11
▶電話 0120-720-225※フリーダイヤル(9:00~16:00)(土、日、祝日、お盆、年末年始を除く)
▶営業時間 11:00~16:00
▶定休日 不定休/インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL
https://kanten-tenchan.shop-pro.jp/?pid=157060455
▶オンラインショップ
https://kanten-tenchan.shop-pro.jp/
<Guest’s profile>
川田康二氏(津山屋製菓株式会社 代表取締役)
1967年出雲市生まれ。国学院大学経済学部を卒業後、東急フーズに入社。1992年カナダ・モントリオールへ渡り、レストラン、サクラガーデン入店。ドウソンカレッジ(英語コース)、YMCA(フランス語コース)で語学を学び、1993年ロンドンへ。メイフェアスクール(短期英語コース)を経て、ヨーロッパ~インド~アジアを周遊し、帰国。1994年津山屋製菓株式会社に入社し、専務取締役に。2004年より代表取締役に。
〈文・撮影/植松由紀子 MC/鯨井綾乃〉