家庭で手軽に、料亭並みのおいしい魚が食べられるなら、食卓にもっと魚料理が上るのではないでしょうか。和食店やホテルなどに向けた卸売りを専門にする水産会社が、目利きと腕を一般家庭にも発揮する取り組みを始めました。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった有限会社近幸水産の代表取締役 石田博氏に、取材陣が伺いました。
目利きが選ぶ料亭の味。丁寧な仕事が施された京魚「京の特選盛り」
2022/04/20
有限会社近幸水産 代表取締役 石田博氏
―近幸水産の前身は、明治から続く鮮魚店だったそうですね。
石田 京都の清水にある近幸という会社で、4代にわたって続いてきました。私と兄の代になって、兄は小売店として近幸を続け、私は卸売りを専業にする近幸水産を、のれん分けという形で興しました。場所柄、祇園の料亭に納めることもあり、目利きはずいぶん鍛えられたように思います。
―お取り寄せ商品として、一般家庭向けに販売されるようになったのは?
石田 仕入れる魚は、小売り向けと飲食店向けとではやはり少し違います。うちの場合は料亭やホテルなどに卸すこともあって、ことさら質のいいものを選んできます。そのクオリティをご家庭にもお分けすることで、おいしい魚に触れる機会が少しでも増えれば、という思いです。
―笹カレイ2枚、甘鯛2切れ、ハモの山椒煮1パック、マナガツオ幽庵漬け2切れ。東の方ではあまり目にしない魚もありますね。
石田 京都らしさを感じていただける品揃えにしました。干物の代表として笹カレイ、京都ではグジと呼ぶ甘鯛、ノドグロや金目鯛を好む方もいますが、やはり京都ではこちらです。それから、夏の京都の象徴ともいえるハモは甘辛煮にし、幽庵焼き用に高級魚として知られるマナガツオをセットにしました。
―それぞれ丁寧な下処理が施されて真空冷凍されています。家庭では解凍して焼くだけ、温めるだけなのがいいですね。
石田 魚を扱う中で、一番おいしい食べ方や料理技術も、自然と身につきました。魚は扱いが難しい、料理法にバリエーションがないなど、家庭料理のハードルを下げられたら、という思いです。飽きないラインナップになったでしょうか。
左から笹カレイ、甘鯛、マナガツオの幽庵漬け。
―4種類、それぞれのポイントを教えてください。
石田 笹カレイは、季節によって脂の乗り方が違いますので、塩加減も変えています。身はふっくらと柔らかく、こんがり焼いて焦げ目のついた皮もおいしいと思います。塩焼き用のグジは、中まで同じ塩加減になるように、ふり塩でなく、塩を溶かした水に漬ける「立て塩」をしてあります。そのままグリルで焼くのもいいですが、ウロコが気になるかもしれませんので、フライパンに油を引いて中火でゆっくり皮目から、パリパリになるまで焼くと、ウロコもおいしく食べられます。
左/やわらかな身と香ばしい皮を味わう笹カレイ。
中・右/やさしい塩加減の甘鯛は、
ウロコを先に焼いて固めるのがポイント。
石田 ハモは締めたものではなく活魚にこだわってふんわりとした歯触りを大切にしています。骨切りし一度白焼きにしてから甘辛煮に。実山椒の香りがよく合います。白いご飯と相性が良いのですが、アツアツご飯に乗せたら一度蓋をして蒸らすと、一体感が出て良いですよ。最後にマナガツオは冬~春先の、脂ののった時季にとれたものだけを使用。醤油とみりんと酒にスダチを効かせた幽庵漬けにしてあります。焼いているうちにふっくらするのが、脂が乗っておいしい証拠です。
左/ふんわりした食感のハモの山椒煮はお茶漬けにしても美味。
中・右/冷めてもおいしいマナガツオはお弁当にも◎。
―魚のプロに、家庭で少しでも上手にできる焼き魚の方法で伝授いただきたいです!
石田 焼き始めは魚の温度が低いので表側は少し長めに焼きます。返してからは、表面の半分から1/3の時間で焼きあがりますから、できればその場を離れず、こんがりしたところで火からおろすといいと思います。焼きすぎるとパサついたり身が硬くなったりしてもったいないですからね。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「京の特選盛り【4種】」
▶価格 ¥7,000(税込)
▶店名 近幸水産オンラインストア
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://kinkosuisan.com/item-detail/845718
▶オンラインショップ https://kinkosuisan.com/
<Guest’s profile>
石田博氏(有限会社近幸水産 代表取締役)
1949年京都府生まれ。明治から親子4代続く鮮魚店近幸より暖簾分けをし、平成元年に(有)近幸水産として独立。京都、東京の料理店を中心に鮮魚の卸売をしている。
<文・撮影/植松由紀子 MC/菅野真央 画像協力/近幸水産>