今回、編集長アッキーが気になったのは1936年創業の和菓子のお店「ふるや古賀音庵」。伝統を継承しつつ、新しい和菓子の開発にも取り組んでいます。株式会社富留屋古賀音庵・代表取締役の古川元久氏に取材陣がうかがいました。
もちもち感がやみつきに!パッケージもおしゃれな「餅のどら焼き」(プレーン・黒胡麻)
2022/05/13
株式会社富留屋古賀音庵 代表取締役の古川元久氏
―今回ご紹介する「餅のどら焼き」は半月型ともちもち感が特徴ですね。
古川 食べやすいというのが商品開発のコンセプトの1つで、丸ではなく半月型にしました。「餅のどら焼き」は、あんこと皮のバランスも重視しています。あんこが多いと口の中をあんこが支配してしまいます。また、皮が厚すぎてあんこが少ないとまるで皮を食べているようです。ですから、ちょうどいいバランスのあんこ量を追求しました。もちもちの食感は、もち粉を使用することと、卵と小麦粉、牛乳、水、大豆、山芋という基本的な原材料を選りすぐって出しています。また食べたくなるような、忘れられない味を目指しました。
餅のどら焼き(プレーン)。丸ではなく半月型で食べやすい。
―こちらの商品を開発することになったきっかけを教えてください。
古川 ちょうど「もちもち食感」という言葉が流行り始めた頃で、このキーワードで商品を作ることにしたんです。日本人はお餅が好きですし、「モチッとしている」というのは誉め言葉で良い表現です。美味しいときに使う表現ですよね。ですからパンケーキにあんこをはさむというよりは、ホットケーキのふわっとしたイメージの皮で、もちもち食感にしようと商品開発が始まりました。ただ、お餅をそのまま皮に入れ込むのは難しいので、もち粉を入れることで、もちもち食感を出すことにしました。
生地の中には甘さ控えめの粒あんがたっぷり。
―開発でご苦労された点はありましたか。
古川 試行錯誤を何度もして、どうすれば硬くならないか考えました。もともと、どら焼きは日持ちがしません。1か月も日持ちさせようとすると、添加物を入れるしかないんです。とはいえ、お客様は日持ちをする商品を好まれます。ですから、添加物をできるだけ入れずにおいしく食べられて、2週間日持ちがするような商品を作るのが大変でした。
―生地を焼き上げるのも難しいのでしょうか。
古川 鉄板の温度加減はもちろん、ひっくり返すタイミングを間違えると色が茶色に焼けた色になるので、それを均一にするのがすごく難しいです。生地を流すと気泡が表面にできますが、その泡の量と大きさで判断して職人たちはひっくり返していきます。
餅のどら焼き(黒胡麻)。
竹炭を練り込んだもっちりしっとり食感の生地に黒胡麻餡を合わせています。
―職人さんならではの技はすごいですね。
古川 味を変えるのは簡単なことじゃないんです。原材料を選りすぐって、五感をすべて使って、脇から固めていく総合芸術です。職人は1つのことを突き詰めていくプロフェッショナル仕事で、「これでいい」という答えがありません。もっと美味しいものをと追求する表現者ですね。
―「餅のどら焼」は、プレーンと黒胡麻の2種類を用意されています。
古川 当社の原材料は国産にこだわっていますが、今、日本で販売されているごまは98%が輸入です。その中でも茨城県の生産者さんと契約し、貴重な国産のごまで作っています。生地にも練り込んでいます。小さな和菓子屋ですが、国産の黒ごまのトップシェアを持っているのではないでしょうか。ごまは栄養価も高く、美容にもいい食材です。
―体にいいものを使われているので、罪悪感なしで食べられますね。どういった方に食べてもらいたいでしょうか。
古川 0歳から100歳まで、すべての方にです。老若男女皆さんに食べていただきたいです。食育という言葉がありますが、やはり若い方たちに手に取っていただかないと、和菓子が廃れてしまいます。和菓子は日本の誇れる伝統文化だと思いますので、若い方たちにはより多く食べていただきたいですね。また、年を重ねると、油っぽいのものより、さっぱりしたものを好むようになるので、油をほとんど使わない和菓子は、お年寄りの方にぴったりです。働き盛りの方は、エネルギー補給にも使ってください。疲れが取れます。おめざという言葉もありますが、甘いものを食べると、体はすぐに糖をエネルギーに変えて、脳に送ります。試験前に食べると頭が働くのでおすすめです。
―パッケージも和モダンな色合いですごくおしゃれですね。
古川 江戸時代の着物の柄をモチーフに、温故知新を大事にしてデザインしました。極力、日本の伝統的な色、字体を使うようにしています。
―今後のビジョン展望について教えてください。
古川 会社を大きくするのはやめて、逆に小さくしています。大量消費の時代ではないですし、人口も減っていきます。人手不足も恒久的に続くと思いますので、小さいけれど山椒は小粒でもピリリと辛いといった、個性的なお店を目指しています。
―新しい商品開発もされていますか。
古川 新しい商品は、日々考えています。和菓子は、基本的に小豆とお砂糖とお米の三つで無限に作り出すことができます。どら焼きはこれに小麦粉と卵が加わって、5 つの原材料で、無限大にできるわけです。たとえば、イチゴ大福は、昔はなかった商品ですが、今はすっかり定着しています。我々もそうして長く愛される和菓子を、新たに作っていきたいと常々思っています。
―おすすめの食べ方を教えてください。
古川 お餅は熱を入れると膨らみます。600Wの電子レンジで20秒くらいちょっと温めていただくとお餅がふわっと熱をもって膨張し、ふわふわ感と鮮度が戻ってきます。どら焼きは、卵と小麦粉が原材料ですので、日本茶だけでなく、コーヒーや紅茶も合います。
―最後にメッセージをお願いします。
古川 和菓子は何百年もなくならなかった文化なので、この先も存続していってほしいというのが切なる願いです。
―これからも全国にこの文化を広げていただければと思います。ありがとうございました。
「餅のどら焼き【プレーン・黒胡麻各4個入】 」
▶価格 ¥1,857(税込)
▶店名 ふるや古賀音庵
▶電話 03-3378-3003(09:00~18:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://furuyakoganean.stores.jp/items/621b3608dd8d393aeb3054a5
▶オンラインショップ https://furuyakoganean.stores.jp/
<Guest’s profile>
古川元久氏(株式会社富留屋古賀音庵 代表取締役)
1957年東京都生まれ。1977年に入社、1990年に同社代表取締役社長に就任。
<文/垣内栄 MC/菅野真央 画像協力/富留屋古賀音庵>