脂ののったキングサーモンを焼いてほぐし、瓶詰めにした新潟加島屋「さけ茶漬」。半世紀以上にわたって食卓を豊かに彩り、また、どなたからも喜ばれる贈り物として、現在も販売実績年間約100万本と不動の人気を誇っています。今回、編集長のアッキーこと坂口明子はこのロングセラー商品に注目。おいしさの秘密、人気の理由を探ろうと、製造元の株式会社加島屋代表取締役、加島長八さんに取材スタッフが伺いました。
贈り物の定番として愛されて60年以上。加島屋「さけ茶漬」のおいしさと人気の理由
2022/05/16
株式会社加島屋 代表取締役の加島長八氏
加島屋の5代目にあたる
―加島屋さんは創業して160年以上とか。
加島 以前の信濃川には沢山のサケが帰ってきており、昔からサケの食文化がある地域で、加島屋はサケ、マスの塩蔵品、塩干物を扱う店として安政2年(1855年)に開業し、町の塩干物店として地域の皆さまに親しまれてきました。当時の加島屋は食品のほか、チリトリ、ほうきなどの生活雑貨も扱う、今でいうコンビニエンスストアのような役割がありました。「さけ茶漬」を作ったのは4代目である私の父で昭和40年代後半(1970年代)のことです。
脂ののった「さけ茶漬」は口当たりやわらか。
―きっかけは?
加島 当時、仕事が忙しく父は食事する暇もなかったのですが、それを見ていた父の母親が、焼いたさけの中骨から身を取り外し、食べやすくしてくれたことがさけ茶漬の開発のきっかけです。その後、焼いた切り身をほぐしたものを量り売りして店に出していたのですが、ある日、1人のお客様がのりの佃煮の空き瓶を持ってこられ、「これに入れてほしい。瓶に入れたら東京の孫に持っていける」とおっしゃったそうです。そこで瓶詰めにすることを思いついたといいます。この商品は家族を思う母親の愛情で始まり、地元のお客様の声からできあがった製品といえるでしょうね。
―サケはどこから?
加島 父はおいしいサケを求め、いろいろ探していましたがある日、築地中央卸売市場で当時は珍しかった脂ののったキングサーモンに出会い、これを「さけ茶漬」の原料にしたいと思いました。昭和40年(1965年)にアメリカのアラスカ州ユーコン河産キングサーモンの輸入を開始しました。その後、天然資源の減少を危惧し、平成2年(1990年)にはカナダ・バンクーバーに現地法人を設立し、キングサーモンの養殖を開始しました。養殖することで安定的に原材料を確保できるほか、今、世界的なテーマである、「持続可能な開発目標(SDGs)」の中の、「海の資源と豊かさを守る」ことに貢献することができると考えています。
遠火で両面をじっくり焼く。
ほぐした身から小骨を取り除き手作業で瓶詰めする。
―製造工程は?
加島 キングサーモンというサケは名前こそ強そうですが、実はとても繊細な品種で世界中でも養殖しているところはわずかです。当社も安定的に養殖できるまで20年ほどかかりました。なるべくストレスを与えない環境で天然由来の餌を与えて育てています。コストはかかりますがこの方が脂がのったおいしいサケに育ちます。これを日本に運び、工場で職人さんたちが昔ながらのやり方で塩漬けし、1か月冷蔵庫で熟成させます。切り身にして焼き上げたあと、熱いうちに手作業で身をほぐし、小骨を取り除き瓶詰めにします。私たちの役目は素材であるサケ本来の味を引き出すこと、機械を使わず手間をかけて作業することで、脂の旨味が凝縮された「さけ茶漬」ができます。
加島屋「さけ茶漬」は60年間不変のベストセラー。
―「さけ茶漬」は百貨店などに出店して人気が出ました。
加島 「さけ茶漬」を食べた方が「おいしいからお知り合いにも…」という形で評判になり、それを聞いて昭和51年(1976年)に玉川高島屋のバイヤーの方が訪ねて来られて出店したのがきっかけで各百貨店に出店しました。手土産にも使われ、「新幹線の荷物棚には加島屋の紙袋が並んでいる」と言われたことがあります(笑)。また、オンラインでの販売も早くから取り組みました。発売以来60年以上になりますが、今ご自宅での食事が増え、「おいしいものを食べたい」「ちょっと贅沢したい」という方に支持されているのはありがたいことです。「さけ茶漬」のほかに北海道・標津産のイクラを漬けた「いくらの醤油漬」、北海道・猿払産のホタテを使った「貝柱のうま煮」もおすすめしたいですね。
パンに「さけ茶漬」、好みの具材をのせてトーストした「さけ茶漬の焼きサンド」。
―「さけ茶漬」のおすすめの食べ方は?
加島 押し寿司、カナッペ、サンドイッチなど、若い方にも和洋の料理に幅広い使い方をしていただきたいと、当社のホームページでレシピを紹介しています。実は「さけ茶漬」という商品名ですがどうしてこの名前になったのか記録がなく、社内のだれも知らないのですよ(笑)。もちろんお茶漬けにしてもおいしいですが、私は炊き立てのご飯の上にのせていただくというシンプルな食べ方が一番好きですね。
サケの脂は瓶の下の方に溜まりがちですが、食べる前に瓶を逆さまにして置いておくと脂が身にまんべんなく回り、おいしく食べられますよ。
―おいしく食べる裏技、試してみます。本日はありがとうございました。
「さけ茶漬」
▶価格 大ビン(200g)¥2,700、中ビン(140g)¥1,944、小ビン(100g)¥1,512、袋(100g)¥1,350 すべて税込
▶店名 加島屋
▶電話 0120-00-5050
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://www.kashimaya.com/items/dtl100.aspx?p_cd=33100
▶オンラインショップ https://www.kashimaya.com/
「いくら醤油漬」
▶価格 大ビン(230g)¥4,104、中ビン(170g)¥3,132、小ビン(110g)¥2,160、袋(80g)¥1,404 すべて税込
▶店名 加島屋
▶電話 0120-00-5050
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://www.kashimaya.com/items/dtl100.aspx?p_cd=30900
▶オンラインショップ https://www.kashimaya.com/
「貝柱のうま煮」
▶価格 大ビン(240g)¥3,024、中ビン(160g)¥1,944、小ビン(100g)¥1,296、袋(80g)¥1,404 すべて税込
▶店名 加島屋
▶電話 0120-00-5050
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://www.kashimaya.com/items/dtl100.aspx?p_cd=32500
▶オンラインショップ https://www.kashimaya.com/
<Guest’s profile>
加島長八氏(株式会社加島屋 代表取締役)
1964年新潟市生まれ。東海大学卒業後、横浜の建設資材商社勤務を経て、1992年加島屋に入社、百貨店の営業と原材料の仕入れを担当。カナダ・バンクーバー島でキングサーモンの養殖会社を立ち上げ、高品質で安定的な原材料の調達を行う。2006年同社代表取締役に5代目社長として就任。
<文・撮影/今津朋子 MC/和田英利 画像協力/新潟加島屋>