創業1937年、今や世界にもその名を轟かせている皮革製造メーカー・栃木レザー株式会社が、この2月、オリジナルブランドアイテム「nogake(のがけ)」を立ち上げました。どのような製品なのか、大のレザー好きとして興味津々の編集長アッキーに代わって、取材陣が栃木レザー株式会社代表取締役・遅澤敦史氏にお話をうかがいました。
世界に誇る皮革メーカー・栃木レザー株式会社が 満を持して世に送り出す オリジナルブランド「nogake(のがけ)」
2022/05/17
自らを「革中毒」と称し、革が好きで好きでこの業界に入ったという
栃木レザー株式会社代表取締役社長・遅澤敦史氏
―レザー好きの間では知らない人はいない、栃木レザー。オリジナルブランドアイテムの発売を「待ちに待っていた」という声をよく耳にします。「nogake」の誕生ストーリーをお聞かせください。
遅澤 弊社の創業は1937年。野うさぎの毛皮製造から始まり、やがて靴の革底や学生かばんなどに使われる牛の革の製造を続けてきました。戦後は一貫して、タンニンなめしによる革づくりに(ヌメ革)にこだわり続けています。タンニンなめしの革は、革本来の風合いや味わいが持ち味。「栃木レザー」としてお客様からかわいがっていただき、いつからか「オリジナルレザーアイテムの発売を」とのお声をいただくようになりました。2020年、まずは「栃木レザー」を使ったアイテムを扱うアンテナショップを栃木駅前にオープン。それを機に社内でも「オリジナルブランドを」という声が高まり、今年2月に「nogake」が誕生しました。
―「nogake」という名前の由来は?
遅澤 弊社では、これまでも「よりナチュラルに」をテーマに革づくりを続けてきました。そのテーマを商品で表現するとなった時、「自然」だったり「より自由に、のびのびと」というイメージが浮かんできたのです。具体的に言うと、子どもが野を駆けるイメージです。辞書で「のがけ」を引くと「野掛け」という表記になるのですが、私たちの意味合いとしては「野駈け」。それで、nogakeと名付けることにしました。
ケーキ屋さんのかわいい紙袋(ショッパー)を革で再現した
「Kurite shopper」。
「Kurite」は「くり手」(革をくり抜いた持ち手)から。
お財布とスマホ、化粧ポーチがちょうどおさまるサイズ。
お弁当を入れて公園でランチなんて、素敵かも!
ビニールのレジ袋=グローサリーバッグを再現した
「2way Grocery Bag」。
なんて高級なレジ袋!調整可能なレザーストラップ付きで、
手持ちも肩がけも斜めがけもOK。
表面に細やかなシワの寄った高級感のあるシボレザー
「ノガケエンボス」製で傷が目立ちにくいので、
気軽に持ち歩けるのがうれしい。
―nogakeの商品コンセプトを教えていただけますか?
遅澤 弊社の革は、硬くて丈夫、傷が目立ちにくい。長く使えてエイジング(経年変化)が楽しめるという特徴があります。それだけに、これまではどちらかというとハードで男性的、色で言えば黒のイメージが強かったと思います。そこで、nogakeの商品は女性のみなさんにも使っていただけるような商品を、と考えました。1番のポイントは軽さ、そして軽やかさです。
―トートバッグを試させていただいたのですが、革が薄くてとても軽くて驚きました。なのに、頼りない感じがしないのが、いいですね。
遅澤 ありがとうございます。実はそこが、いちばんこだわったところです。軽さを実現するには革を薄くすればいいのですが、そうなるとバッグの形をキープするのがむずかしい。トートは大きさがあるので、革が薄いと倒れやすく、型崩れもしやすいのです。ですから、「薄くて軽いが倒れない、型崩れしない」革を作ることに職人たちはもっとも力を注ぎました。
「2way Tote bag Medium」。
A4サイズの書類が
すっぽり入るサイズ。
軽いので、ショッピングバッグ風に
持ってもラクチン。
荷物がたっぷり入りますが、
肩にかけるベルトがちょうどいい
長さなので、持ち重りがしません。
革がスムースで、しっかりとして
いながらバッグが体に馴染みます。
―デザインもシンプルで、誰でも、どんなファッションにも合いそうです。
遅澤 そう言っていただけると、うれしいです。レザーを、特別なものとしてではなく普段の生活の中で愛用していただきたいというのが、私の願いですから。弊社の革の特徴の1つとして「ツヤ」があるのですが、より日常になじむのはマットな雰囲気だと思うんですね。ツヤとマット、この相反する2つの要素を兼ね備えた革を作れないかと考え、工夫して生まれたのが「ノガケ・スムース」という革で、トートバッグとクリテショッパーに使われています。もう1つ、より傷が目立ちにくい「ノガケ・エンボス」という革も作りました。こちらはグローサリーバッグに使われています。
紙袋(ショッパー)の雰囲気を楽しめるよう、持ち手のレザーはメッシュに。
全体的にシンプルなデザインの、いいアクセントになっています。
―nogakeのような、シンプルでしっかりした製品を生み出せるのは、やはり確かな技術があってこそのことでしょう。あらためて、御社の革づくりの特徴やこだわりについてうかがってもよろしいですか?
遅澤 さきほど、弊社では「タンニンなめし」を行なっているとお話ししました。弊社では「ベジタブルタンニンなめし」といって、天然のミモザやオーク、チェスナットなどの樹皮から抽出した樹液(タンニン)に皮をトータルで1ヶ月間ほど漬け込み、なめし上げていきます。
「ベジタブルタンニンなめし」は20工程の6番目。
160ものピット槽を使って、
薄いタンニンから濃いタンニンへと
4段階で皮を漬け込んでいくそう。
ここで”皮”が”革”に変わります。
工程10の「乾燥」。なめしによって
水分を含んだ革を約10日かけて自然乾燥。
―なめすのに1ヶ月もかかるのですか!工程自体、20もあると聞きました。動物の”皮”が商品の”革”になるまでは、手間と時間がかかるのですね。
遅澤 そうです。タンニンなめしは伝統的な方法ですが、手間ひまがかかるため、現在はより効率的な「クロームなめし」が主流になっています。ただ、タンニンでなめすことによって革本来の風合いが生かされ、エイジングを楽しむことができる。レザーを長く愛用していただきたいと考える弊社としては、だからこそタンニンなめしにこだわり続けているのです。
―天然のタンニンを使うのは、環境に配慮してのことでしょうか?
遅澤 なめしの工程では、1日に約900トンもの水を使います。なめした後の水の処理を考えると、有害な物質を使うわけにはいきません。だから天然のタンニンにこだわります。そして大規模な排水設備を整え、製造工程で使った水を濾過しバクテリアや微生物、酵素を使って浄化。その3分の1を工場で再利用し、残りの3分の2を川に戻しています。なお、このシステムでは水を浄化した後は堆肥物や汚泥が沈殿するんですね。それを土壌改良剤として再利用し、やがて土に還る仕組みになっています。
栃木レザー敷地内に流れる、一級河川「巴波川(うずまがわ)」
―すごい!SDGsを実践されているのですね。
遅澤 はい、何といっても「よりナチュラルに」が弊社のテーマですから、”循環”を意識しています。汚泥にしても土壌改良剤にして終わりではなく、それによってできた良質な土で農産物をつくるというのが、目下の課題です。
―牛の皮が革となり、それによってできた汚泥が土壌改良剤となって良い土をつくり、そこで育った農作物を牛が食べる……見事な循環です。素晴らしいお話を、どうもありがとうございました。
「2way Tote bag Large」BLACK/CAMEL
価格:¥44,000(税込)
店名:栃木レザーアンテナショップ
電話:0282−21−7501(11:00〜18:00)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌営業日)
※インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品ページ:https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp/shopdetail/000000000319/ct50/page1/order/
オンラインショップ:https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp
「2way Tote bag Medium」BLACK/CAMEL
▶価格 ¥39,600(税込)
▶店名 栃木レザーアンテナショップ
▶電話 0282−21−7501(11:00〜18:00)
▶定休日 月曜日(祝日の場合は翌営業日)
※インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp/shopdetail/000000000320/ct50/page1/order/
▶オンラインショップ https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp
「Kurite shopper」BLACK/CAMEL
価格:¥20,900(税込)
店名:栃木レザーアンテナショップ
電話:0282−21−7501(11:00〜18:00)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌営業日)
※インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品ページ:https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp/shopdetail/000000000321/ct50/page1/order/
オンラインショップ:https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp
「2way Grocery Bag」BLACK/GREIGE
価格:¥33,000(税込)
店名:栃木レザーアンテナショップ
電話:0282−21−7501(11:00〜18:00)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌営業日)
※インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品ページ:https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp/shopdetail/000000000322/ct50/page1/order/
オンラインショップ:https://onlineshop.tochigi-leather.co.jp
<Guest’s profile>
遅澤敦史氏(栃木レザー株式会社 代表取締役社長)
1978年9月、群馬県生まれ。桜美林大学経済学部卒業後、リーガルコーポレーション勤務。2011年4月、栃木レザー株式会社入社。’20年8月、専務取締役就任。’21年5月、代表取締役社長就任。
<文・撮影/鈴木裕子 MC/鯨井綾乃 画像協力/栃木レザー>