日本三大うどんの一つと言われている、秋田の稲庭うどん。コロナ禍でお家ごはんが増え、「ランチにぴったり」「鍋にもいい」「ツルツルの喉越しが大好き」など、ますます人気が出ているようです。そこで、今回は、編集長アッキーが気になった、稲庭うどんの老舗・株式会社寛文五年堂の代表取締役社長 佐藤君蔵氏に、取材陣がお話を伺いました。
コシとツルツルの喉越しが自慢の稲庭うどん。 昔ながらの製法で作る「いなにわ手綯(てない)うどん」
2022/05/23
株式会社寛文五年堂の代表取締役社長の佐藤君蔵氏
―社名の「寛文五年堂」には、どのような意味がこめられていますか?
佐藤 寛文五年は1665年、今から約350年前のことです。その頃、稲庭うどんは豊かな自然と清らかな水に恵まれた秋田県湯沢市稲庭の地に、誕生したと言われております。誕生した年を、社名にいたしました。
元々は、麹や味噌づくりを家業にしておりました。稲庭うどんは家族で食べるものとして作っておりましたが、1976年に寛文五年堂を創業。うどんの製造販売が本業になり、広くたくさんの方々に召し上がっていただけるようになりました。さらに、地元以外のデパートなどでも、弊社の商品を取り扱ってもらえるようになり、稲庭うどんが全国区になりました。
寛文五年堂の看板商品「いなにわ手綯(てない)うどん」。
平らで断面に気泡がないのが、寛文五年堂の麺の特徴。
ゆで時間が短く、均一にゆで上がります。
―稲庭うどんは歴史が長いんですね。看板商品の「いなにわ手綯(てない)うどん」には伝統は受け継がれていますか?
佐藤 「いなにわ手綯(てない)うどん」は、稲庭うどんの本質である、しっかりしたコシとツルツルとした喉ごしが特徴です。そのための製造工程は、伝統的なものです。全部で13工程あり、出来上がるまでに3日かかります。
ただし、昔のように全てを人の手で作るわけではありません。効率を考え、小麦粉をこねるのは機械で行う、温度や湿度の管理は空調に任せるなど、機械化している部分もあります。そして、人でしかできない部分に人材を注力しています。例えば、商品名にもなっている、「手綯(てない)」は職人の技術がないとできない工程です。縄をなうように、生地に撚(よ)りを加えながらあやがけして細くしていきます。稲庭うどんの伝統を守る重要な部分です。
手で、縄をなうように生地を撚(よ)りながら、あやがけしていきます。
職人の技術が光る工程です。
麺をアップにすると、きれいに撚(よ)りが入っていることが確認できます。
―1番、こだわっている部分はどこでしょうか?
佐藤 製造工程、材料など全てにこだわっています。強いて言うと、製造工程の中で、先程あげた「手綯(てない)」と最後の「乾燥」です。私は、乾燥が1番難しいと感じています。稲庭うどんは乾麺が基本なので、乾燥の良し悪しで味に違いが出るからです。日本は季節によって湿度が変わるので、湿度管理が難しい。昔は、冬はストーブで乾燥させるため、一晩中人が寝ずに番をしていたことがありました。今は、赤外線ヒーターを使って1年中、一定の湿度に保って生地を乾燥させていますが、それでも日々の天候や湿度によって乾燥に違いが出ます。表面が急激に乾燥をすると、生地がひび割れをしたり、曲がったりしてしまいます。細かい湿度の調整をしたり、途中で水分を与えるなど、日々の微調整は人でないとできません。このように、機械ではできない部分を人が担うことで、1年中おいしい稲庭うどんが出来上がります。
乾燥台に生地を掛けて、細く長く伸ばします。
そして、湿度と空気の流れに気を配り、乾燥させます。
稲庭うどんの味を決める重要な工程です。
―人の手によって、おいしい「いなにわ手綯(てない)うどん」が作られるんですね。どんな食べ方がおすすめですか?
佐藤 「いなにわ手綯(てない)うどん」のツルツルとした喉越しを味わうには、まずは、冷たいざるうどんで食べてほしいですね。麺は熱湯に入れたら3分ほどでゆで上がります。冷水でヌメリを取り、出来上がりです。つゆは、いつも食べているお好みのもので大丈夫です。ねぎ、みょうが、しょうがなどの薬味を添えます。私のおすすめは、梅干しを叩いたもの。市販の練り梅でもOKです。つゆに溶かしたり、うどんにのせて食べたりしてもおいしいです。それから、男性や若い人に人気なのが、つゆにラー油を加えること。ピリッと辛くなって、うどんがすすみます。途中で足して、味の変化を楽しんでもいいですね。
薬味にねぎ、みょうが、しょうが、梅を添えて。
つゆにラー油を加えると、いつもとは違う新鮮な味になります。
―稲庭うどんをどんな方に手に取ってもらいたいですか?
佐藤 今までのお客様も大切にしつつ、さらにたくさんの方々が手に取りやすい工夫をしていきたいなと思っています。コロナ禍でインターネットでの注文も増えて来ました。これを、稲庭うどんを多くの方に広げていくチャンスととらえています。
若い人が興味を持って購入してくれるように、稲庭うどんとそうめんのセットや地元の野菜と組み合わせたセットなどを考え、自社サイトで販売しようと思っています。湯沢市は地熱発電が盛んな地域で、地熱を利用して地元野菜を乾燥させた商品などを作っています。その乾燥野菜と稲庭うどんをセットにするなど、女性に人気が出そうなヘルシーな商品を検討中です。社会的にもエネルギーに関心が高まっているので、湯沢市の特徴もアピールできるかなと思います。
新しい商品も順次発売されます。
写真は、電子レンジで加熱するだけで食べられる冷凍うどん。
ギフトシーズンはデパートでも取り扱いいただいておりますが、
弊社では通年でお送りできます。
―現状をチャンスと捉え、新しいこともどんどん挑戦されているんですね。
佐藤 そうですね。SNSなども積極的に活用したいと思っています。2年くらい前から女性スタッフ2名が「寛文娘」として、TikTokで動画をアップし始めました。毎回、5,000〜1万回ぐらい再生されていますので、今まで、弊社に馴染みのなかった若い世代が見てくれているのかなと思っています。
他にも自社のホームページも活用していきたいですね。稲庭うどんのゆで方・洗い方、アレンジレシピも多数紹介していますので、ぜひ参考にして、おいしく召し上がっていただきたいと思います。
寛文五年堂のホームページに掲載されているアレンジレシピ。
簡単でボリュームのある「ぶっかけ納豆温玉うどん」。
豚肉、野菜、きのこたっぷりの「カレーうどん」。
―貴重なお話をありがとうございました。新商品も楽しみにしています。
「いなにわ手綯(てない)うどん」(200g)
▶価格 ¥648(税込)
▶会社名 寛文五年堂
▶電話 0183-43-2114(平日 9:00〜17:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://www.kanbun.jp/SHOP/WRF.html
▶オンラインショップ http://www.kanbun.jp
<Guest’s profile>
佐藤君蔵氏(株式会社寛文五年堂 代表取締役社長)
1942年3月生まれ。1975年に寛文五年堂創業。
沢山のお客様に美味しいと喜んでいただけるよう日々精進している。
<文・撮影/大橋史子(ペンギン企画室) MC/菅野真央 画像協力/寛文五年堂>