忙しいとき、「あと1品」ほしいとき……冷蔵庫にかまぼこやちくわがあると、助かりますよね。しかも、考えてみたら高たんぱく・ヘルシーだから、もっともっと食卓に取り入れたい食材です。
今回、アッキーが気になったのは、かまぼこの名産地・小田原の有限会社佐藤修商店の「こだわり蒲鉾」。
子どものいる家庭にも安心して食べてもらえる製品づくりを目指す、2代目社長の佐藤修一氏に、無添加のこだわりや、練り製品についての想いを、取材陣がお聞きしました。
無添加だから、魚本来のおいしさが味わえる。 卵アレルギーの人も安心の「新食感」かまぼこ
2022/05/24
有限会社佐藤修商店 代表取締役社長の佐藤修一氏
―会社の沿革について教えてください。
佐藤 私の父が、昭和35年にちくわ工場として創業しました。もともとはふつうの会社員だったのですが、終戦後、小田原のかまぼこ屋に勤めて色々教わったのがきっかけで、ちくわ屋を始めたそうです。
当時は東京オリンピック開催に伴い、新幹線や東名高速道路が開通することになっていました。最初は土産物としてのちくわを製造していましたが、さらに、高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、新幹線車内販売などへと事業を展開していきました。
現在では、土産物以外にも、全国のスーパーから、地域の小学校・中学校まで、幅広く商品を収めています。
―1990年に、2代目に就任されたそうですね。
佐藤 会社を継ぐ前に、長崎のかまぼこ屋さんで修行させていただきました。
長崎という土地は、昔から練り物が身近な存在で、早朝から近所のお客様が、朝食のおかずとして「てんぷら(揚げかまぼこ)」をお買い求めに来られていました。
そのため、工場は早朝3:00頃から稼働しており、私も修業期間中は毎日その時間から出勤していました。できる限り多くの事を学びたいと思い、一生懸命働きました。いい経験でしたね。
よけいなものが入っていないから、
魚本来の風味がつよく、弾力のあるプリンとした食感。
―商品の最大の特徴は、やはり「無添加」ということでしょうか。
佐藤 創業当時から、「お客様に安心・安全なものを食べていただきたい」という想いをもっとも大切にしてきました。そのため、できるだけ添加物を使用しない商品づくりを目指しています。当社のほとんどの製品には、保存料、合成着色料、卵白、でんぷんは使用していません。特に卵白は、かまぼこには当たり前のように使われていたので、練り物は、卵アレルギーの人は食べられない商品だと考えられていました。
しかし、世の中には思った以上に卵アレルギーの人が多いことに気づきました。「だったら、卵白を使わない商品をつくろう」と。使わなければ、アレルギーをお持ちの方にも食べてもらえます。
また、でんぷんについても、使わなくても作れるんじゃないかと。使わなければ、魚肉本来の味や食感を引き出せると考えたのです。
―卵白やでんぷんを使わないでつくるのは、難しいのですか。
佐藤 そうですね。今までのつくり方とは全く違う工夫が必要です。
かまぼこは、ぷりっぷりとした弾力が大切ですが、それは、原料の魚肉を練る、成形する、蒸す、焼く、揚げる、というそれぞれの工程の温度管理、時間管理、火力の調整などトータルでつくり出すものなのです。「こうすればこうなる」という単純なことではありません。
だから、卵白とでんぷんを使わずに良い製品をつくるためには、それぞれの工程に今までとは違う工夫が必要になります。
たとえばちくわは、棒にたねを巻きつけた状態で焼いて、あとで棒を抜く、というつくり方をしますが、卵白やでんぷんが入っていないたねをステンレスの棒に巻くのは大変難しく、試行錯誤を重ねました。
結果的には余計なものを入れないことで、魚の風味がより豊かになって、他社とは違う独自の特徴ある蒲鉾ができました。
笹かまやちくわも、香ばしい香りと弾力、なめらかなのど越しが自慢。
―「卵を使わないかまぼこ」は、売り出された当時(20年ほど前)は画期的だったでしょうね。
佐藤 現在は、同じようなコンセプトの商品を出されているメーカーもありますが、当時は他にありませんでした。
かまぼこって、古くからある伝統食品でしょう。文献によると平安時代からあったらしく、基本的なつくり方は昔からそんなに変わっていないんです。
でもうちは後発のメーカーです。創業62年っていうと古い会社だと感じられるかもしれませんが、かまぼこ屋で100年、200年というお店はざらにあるんです。とくに小田原のかまぼこ屋さんは老舗ばかりで、うちはいってみればいちばん若造です。
そのなかでお客様の支持を得るには、他と同じことをやっていてはいけない。そこで、「安心、安全、ヘルシー、しかもおいしいかまぼこ」をつくっていこうと決めました。それを具体化したのが今の商品です。
―お客様からはどんな反応がありましたか。
佐藤 多かったのが、お母さんたちからの電話の問い合わせです。「本当に本当に、卵白は使っていないんですか?」という確認のためです。
アレルギーの子どもがいるお母さんたちは、食品選びについて敏感です。当時は、練りものって必ず卵白が入っているものでした。ごく一部の自然食品店では、卵白フリーのものを扱っていたと聞いたことがありますが、値段が高かった。
ところが、うちのかまぼこは普通の価格帯で、近くのスーパーで売っている。心配になって電話してくる方が、たくさんいたのです。
実際に、うちの工場は「卵白フリー」です。もし同じ工場の中で、卵を使っている商品と使っていない商品の両方をつくろうとすると、機械を全部洗浄しなくてはいけない。ほんのちょっと卵が混じっているだけで、アレルギーの人にとっては、命にかかわる場合もありますからね。
そういうことを消費者の皆さんにわかってもらうために、パッケージを工夫しました。
見やすい大きな文字で、無添加であることを伝えているパッケージ。
―確かに、パッケージが印象的ですね。
佐藤 ふつうは、表には「御蒲鉾」とか、メーカーの名前が大きく入っているのが一般的です。肝心の成分については、裏返して見ないとわからない。でもお客様にとって大事な情報はこっちですよね。だからうちは、表に大きく、「卵白不使用」「保存料は無添加です」「でんぷんは使用しておりません」と入れることにしました。
さらに、東京のスーパー激戦区で、パッケージについてのアンケート調査を行いました。複数のメーカーさんのかまぼこと並べて、どれを買いたいですかと。それでダントツ1位になるまで、何度もパッケージデザインを変えて、繰り返しました。それが今のデザインの基礎になっています。
もちろん、中身へのこだわりがいちばんですが、それをわかってもらわないことには意味がないですから。
お弁当にも便利なかまぼこ。
卵を使っていないから安心して使えるという人も。
―1番人気の「こだわり蒲鉾」は、非常に好評だそうですね。
佐藤 大変好評で、昨年のデータによると、15秒に1本売れていることがわかったんです。
多くの方が買ってくださっているということは、支持されているということだから、方向性は間違っていなかったと思っています。
―かまぼこはお弁当に入れることはよくありますが、食卓では食べ方がワンパターンになりがちです。おすすめの食べ方はありますか?
佐藤 もちろん、そのまま食べるのもおすすめですが、意外とおいしいのが、パンとの組み合わせです。
さつま揚げをパンにはさんで、ハンバーガーのようにして食べるのもおいしいし、ちくわをホットドッグにするのもいけますよ。だまされたと思ってやってみてください。
―やってみます! ヘルシーな一品になりそうですね。
佐藤 まさに、練り業界に必要なのはそこのアピールだと思っているんです。
欧米でも最近は「高たんぱくヘルシー志向」で、肉だけでなく魚をよく食べられるようになってきましたよね。練り製品は、単なる日本の伝統食品ではなくて、時代に合ったヘルシーな食品だよということを、これからもっとアピールしていかないといけません。今までは、その努力が足りなかったと思います。
「ヘルシー」ということと、弊社がこれまで大切にしてきた「安心・安全」という理念はつながっています。そのふたつのコンセプトにのっとった商品開発をしていくことが、大切だと思っています。
―これからの展望をお聞かせください。
佐藤 おかげさまで、弊社の業績は好調に伸びておりますが、国内練り物業界全体としては、原料の高騰や、様々な時代の流れ、情勢の変化により、非常に厳しい時代ではあります。
たとえばおせちひとつとっても、数十年前までは「和」のおせちが当たり前でした。それが今は洋風もあれば中華風もあり、様々なおせちを皆が楽しむようになっていますよね。そのため、かまぼこ、伊達巻という、おせちに必ず入っていたものの消費が減ってしまいました。
しかし本来、かまぼこは日本人のふだんの食生活に密着した食べ物なのです。
煮物に入れることで「だし」にもなります。おでんも、練りものを入れることでつゆがすごくおいしくなります。
食卓では脇役になってしまっている練り製品を、ぜひもっと活用していただけるように、少しでもメインの食材に近づけられるように、発信していきたいです。
うちの商品というより、練り物に対する一般の方の見方が変わるように、「ステーキよりかまぼこが食べたい」と言われるくらいにするのが目標です(笑)。
すぐにそこまでは無理かもしれませんが、あきらめずに頑張っていこうと思います。
―私も、かまぼこメニューをもっと広げたいと思います。本日はありがとうございました!
(左から)「こだわり蒲鉾(白・紅)」(各120g)、「こだわり笹舟(4枚入り)」(112g)、「こだわりちくわ(3本入り)」(135g)
▶価格 いずれも¥289(税込、送料別)
▶会社名 佐藤修商店
▶電話 0465-74-7575(9:00~17:00 月~土)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ
こだわり蒲鉾(白)
https://kamabokoya.shop-pro.jp/?pid=121691554
こだわり蒲鉾(紅)
https://kamabokoya.shop-pro.jp/?pid=121691550
こだわり笹舟
https://kamabokoya.shop-pro.jp/?pid=121691566
こだわりちくわ
https://kamabokoya.shop-pro.jp/?pid=121691561
▶オンラインショップ https://kamabokoya.shop-pro.jp/
<Guest’s profile>
佐藤修一氏(有限会社佐藤修商店 代表取締役社長)
1955年神奈川県生まれ。国内の大学を経てアメリカの大学に留学後、長崎県の蒲鉾製造販売会社に入社、住み込みで製造現場での経験を積む。1980年で父親が経営する有限会社佐藤修商店に入社。製造や販路開拓に力を注ぎ、1990年に代表取締役に就任。
製造に関する特許取得、健康を意識した新商品開発など常に時代や社会を見据えた事業展開を図り、経営手腕を発揮している。
<文・撮影/臼井美伸(ペンギン企画室) MC/和田英利 画像協力/佐藤修商店>