キャッシュレスが進み、財布の需要が減っている時代にありながら、昔懐かしいがま口財布が、写真共有SNSで26,000を超える「いいね」を獲得しているとか。主力商品である財布を大切にしながら、時代に即した新商品やサスティナブルな新素材の可能性も追及しています。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社ナダヤ 代表取締役社長の灘瑛一郎氏に、取材陣が伺いました。
使い勝手もSNS映えも抜群のがま口財布「lamaree(ラマーレ)がま口レディース長財布」
2022/07/28
株式会社ナダヤ 代表取締役社長の灘瑛一郎氏
―財布をメインに様々な革製品を製造・販売する株式会社ナダヤの歩みをお聞かせください。
灘 1960年に祖父が創業し、1971年に株式会社灘屋を設立、1986年に株式会社ナダヤとなりました。祖父の頃は財布の卸売業でしたが、その後、生産工場を国内外に作り、OEMから自社製品製造販売まで、上流から下流へと垂直統合をしてきたことになります。卸業だけでなく製造へと手を広げ、財布への愛着やこだわりが出てきたことで自社ブランドの創設と、高みを目指す中で必然の歩みだったと思います。
―4代目となられる灘社長。前職はセンサーや測定器などのメーカーにお勤めだったとか?
灘 ジャンル違いと思われるかもしれませんが、家業に入る前提での就職でした。メーカーとして、掲げた数字を達成するために日常業務にどう落とし込むか、企画の立て方、社長がすべきことなどなど大切なことを多く学びました。その経験があるからこそ、変化の速い時代への対応、素早くチャレンジできていると思います。
―チャレンジとは?
灘 これまでに、生産体制を見直したり、販売チャネルを開拓したりしてきました。さらに、今はサスティナブルな取り組みが求められる時代。牛革に代わる素材を使った製品づくりにも挑戦しようと、パイナップルの繊維からできた生地でバッグを作っています。
さらに、キャッシュレスは進み、人口は減少の一途。財布の需要が全体的に縮小する中、ニーズを的確にとらえ、時代に即した財布やほかの革製品の開発を進めています。
―そんな中ですが、がま口の長財布が売れ続けているそうですね。
灘 「lameree(ラマーレ)がま口レディース長財布」は、発売以来うちの主力商品となっています。おかげさまで、SNSやECモールの口コミで、かなりの高評価をいただいています。コンスタントに年間1万個ほど売れているでしょうか。
上品なたたずまいの長財布。
―好評のポイントはどこにあるとお考えですか?
灘 大きく2つポイントがあるのですが、1つ目はがま口でしょうね。実は、お客様のリクエストでつけました。昭和レトロを思わせるがま口ですが、開け閉めするときの感触は案外癖になる心地よさがあり、日本の文化を感じさせますよね。
もう1つは、札と小銭を入れる場所が2つずつあり、2件分の金銭管理ができる点です。家計と小遣いとか、社用とプライベートなど、分けて管理することの多い女性に喜ばれています。
がま口を開けると小銭とカード、札を入れられる。
外側を開けば、札入れが2か所とチャック式の小銭入れ。
―よく見ると、ほかにも細かい配慮や工夫がたくさんありますね。
灘 カード入れはたっぷり20枚分ありますし、そうなると財布は膨らみがちですが、スナップボタンが2段階式なので、難なく留められます。内側の小銭入れはチャック式で、スライダーについた編み紐は、開け閉めしやすいだけでなく、デザイン的なアクセントにもなっています。お財布だけ持って出かける方も多いので、サイドにストラップ穴があります。
随所に使い手のことを考えた工夫がたっぷり盛り込まれている。
―財布専門メーカーとしてのノウハウが凝縮されているのですね。
灘 もちろんそれは大きいですね。財布を作り続けて60年、自社製品も他社ブランドも作ってきた経験、技術、知識、そして愛情が詰まっています。しかし、もう1つ大きいのはお客様の言葉です。SNSのコメントやECモールの口コミでは、嬉しいものも厳しい言葉もありますが、そのすべてを真摯に受け止めて、製品のブラッシュアップにつなげています。「lamaree」は誕生から10年以上が経っていますが、お客様のリクエストに応じて今でも少しずつ改良を重ねているんですよ。
デザインのアクセントとなっている編み紐は、
1つ1つ手作業でつけている。
―根強いファンも多いのではないですか?
灘 実は、修理のお問合せがとても多くて、ありがたいと思っています。修理して長く使いたいと思えるほど気に入っていただいた証ですから。贈り物にしたり、贈られた方が気に入ってまた贈り物にしたりなどの話も少なからずあって、財布屋冥利に尽きると思っています。
落ち着いた色目から元気が出る色まで、
ラインナップは基本6色。季節によって限定色が出ることも。
―財布と御社の展望は?
灘 キャッシュレスとはいえ、財布を全く持たない人はほとんどいないのではないでしょうか。1人1個が持っていると考えれば、まだまだ必要とされるはず。今後は、万人受けするものより、個性の際立ったものやニッチなブランド戦略を進めて、コアなファンに喜んでいただける開発も進めていきたいと思っています。
自社製品の製造で気づいた点はOEMで提案し、OEMで培ったノウハウを自社製品にも落とし込む、相互作用を大切にしながら、お客様のことを本当に考えた良いものを作るメーカーであり続けたいですね。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「lamaree(ラマーレ)がま口レディース長財布」
(牛本革/基本色はグレープパープル・キャロットオレンジ・ピーチピンク・ココナッツブラウン・ライムグリーン・チョコレートブラウン・ラベンダー【限定カラー】)
価格:¥14,960(税込)
店名:ナダヤオフィシャルショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.nadaya.shop/shopdetail/000000000004/ladyswallet/page1/recommend/
オンラインショップ:https://www.nadaya.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
灘瑛一郎氏(株式会社ナダヤ 代表取締役社長)
1988年大阪府生まれ。大阪大学卒業後、株式会社キーエンスへ入社。その後2014年より株式会社ナダヤに入社し、2021年に同社代表取締役社長に就任。革小物メーカーの4代目として、主力製品である財布に代わる製品開発や、サスティナブルな新素材にも取り組むなど、次世代のマーケット開発にも注力している。
<取材・文/植松由紀子 MC/吉田茉代 画像協力/ナダヤ>