今回、編集長アッキーが気になったのは、福岡発の人気ファッションブランド「ティグルブロカンテ」。株式会社天空丸・代表の野﨑正光氏に商品の人気の秘密を取材陣がうかがいました。
日本全国にファンがいる福岡のファッションブランド「ティグルブロカンテ」の「藍の古布1つ釦ジャケット」
2022/09/27
株式会社天空丸 代表の野﨑正光氏
―創業の経緯を教えてください。
野﨑 1998年創業なので、来年で25年になります。東京のアパレルメーカーでは、企画をはじめいろんなことを経験しましたが、ずっと忙しかったので、九州でゆっくりもの作りしていこうと考え、独立しました。もともと熊本出身で、両親も熊本におり、妻も熊本出身です。福岡だと実家にも近く、ものづくりの工場もあり、海外への展開を考えたときに交通の便もよいので、福岡に決めました。うちの母親は明治から続く呉服屋の娘で、幼い頃から反物の周りで遊んでおり、織りや刺繍の美しさや手作業の素晴らしさには触れてきました。日本の文化を見直し、藍染や久留米絣など伝統の生地を使ってものづくりをしたいという思いもありました。
―社名の天空丸のお名前の由来を教えてください。
野﨑 昔は船で移動していましたが、今は飛行機で行く時代です。海外にも商品を広げたいという意味で、天空をゆく船というイメージで命名しました。
―会社を作られてご苦労はございましたか。
野﨑 福岡の薬院にお店を出しましたが最初の3年間は売れなかったんです。東京時代の知り合いが買いに来てくれて、もっていました。でも3年経った頃から福岡ですごく売れだして、県外の人達も来るようになりました。熊本市内に残る古い旅館を借りてお店を作り、東京の青山にもお店を出しました。ただ、東京のお店は東日本大震災を機に閉店し、ネット販売にも力を入れるようになりました。ちょうど博多駅に出さないかという声が掛かって、今は九州の3店舗で運営しています。
―創業時から変わらないコンセプトはございますか。
野﨑 日本の伝統文化を生かしてものづくりするということと、手作りで温かみがあるものを意識しています。
―今回ご紹介するジャケットは藍染の古布を使っておられます。
野﨑 明治時代の本藍染の古布で、元は布団の生地でした。何十回もの本藍での染めを経て、糸の芯まで染まりきって定着した色が素晴らしかったのでリメイクしました。最近は海外の人も日本の古布に注目しているため、価格が高くなってきているのが難点ではあります。インディゴのデニムのパンツは防虫効果があると言われていますが、藍染も生地の繊維質を強くする効果は確かにあると思います。違う生地と組み合わせることで、デザインに新鮮さを出しました。
インディゴブルーとはまた違う、日本的な色彩。
―デザインへのこだわりはどういった点でしょうか。
野﨑 藍染は年輩の方も好んで着られますが、カジュアルにさらっと着こなしてほしいという思いがありました。古い生地というだけでインパクトもあるので、デザインはシンプルな感じで落とし込むようにしました。
軽い羽織のショート丈のサマージャケット。
―お客様の声で印象的なものはございますか。
野﨑 東京で年に2回、ポップアップをしますが、お客様からすごく感謝されて、お土産まで持ってきてくださる方がいます。やはりちゃんとしたものを誠実に作って、届けていかないといけないと、心がなんか引き締まるような思いと喜びがありました。お客様からのお声は励みになります。今年は名古屋、北海道でもやらせてもらいましたが、やっぱり同じような反響でした。皆様に喜んでいただけて、一緒に写真を撮ったり、和やかな感じでやっています。
―洋服の温かさはどういったところから生まれるのでしょうか。
野﨑 生地がきたときにスタッフは皆「よく来たね」と声を掛けて、触って気持ちを通じ合わせて、そこから作るんです。その後、いろんな職人さんの手を通して洋服が完成するまでに長いものだと1年間くらいかかります。現場に行って、工場のスタッフの方と話をしたり、現場の気持ちもわかって、愛情をこめて洋服を作っていることが温かさにつながると思っています。また、「3年着たら捨てる」服ではなく、古着として次の世代の方に着ていただけるものだと自負しています。「破れたから直してほしい」と言われたら、ちゃんと直します。何年か着て、その後、しばらく着てなくて、また5年くらい経ったら着るという方も多いです。
ボレロやカーディガンのように重ねて楽しめます。
―ファストファッションとは違う魅力がありますね。海外のお客様もいらっしゃいますか。
野﨑 台湾と香港、シンガポールからのお客様はよくいらっしゃいます。台湾と香港には卸先のお店があるので、来年はポップアップに台湾とか香港をはじめアジア圏に行きたいと考えています。
―今後の展望をお聞かせください。
野﨑 日本のものづくりは衰退してきているため、工場をなくさないためにも、商品を増やして、海外にも展開していきたいと考えています。売上を上げるためではなく、ものづくりを継続するためにという思いが大きいです。また、感謝してくださるお客様とのリレーションシップ、響き合いがこれからも続くように、誠実なものづくりを続けていかなくてはなりません。
―貴重なお話をありがとうございました。
「藍の古布1つ釦ジャケット」
価格:¥59,400(税込)
店名:TIGRE BROCANTE MAIL ORDER
電話:070-2407-3344(9:00~18:00 土日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.tenkumaru.net/SHOP/TR38-LJK31.html
オンラインショップ:https://www.tenkumaru.net/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
野﨑正光(株式会社天空丸 代表)
1960年1月14日生まれ。文化服装学院卒業後、15年間東京のアパレルメーカーに勤務。
1998年に株式会社天空丸を設立。現在、直営3店舗を運営。オリジナルブランド、TIGRE BROCANTEは全国で展開中。
<取材/垣内栄 MC/隅倉さくら 画像協力/天空丸>