熊本県北部に位置する山鹿市は、自然豊かな環境に恵まれ、「美人の湯」と呼ばれるやわらかな質感の温泉が楽しめる場所です。そんな山鹿市に本社を置く「地の塩社」は、1975年(昭和50年)に創業。よもぎ、へちま、温泉水など、地元の素材を取り入れながら、環境と人に優しい石鹸・コスメなどを製造し続けています。今回は、同社の数ある製品の中から、赤ちゃんにも使える泡ボディソープ「ママのきもち」を紹介。海外でも注目されるに至ったヒット作、その誕生のきっかけなどについて、代表取締役の田口淳氏に伺いました。
赤ちゃんと大人の健やか肌に。優しく包み込んでくれる「ママのきもち」
2022/10/03
株式会社地の塩社 代表取締役の田口淳氏
―御社の沿革について教えてください。
田口 1975年(昭和50年)に私の両親が創業しました。父は重化学工業メーカーの研究室で研究者として働いていたのですが、当時の公害問題などを目の当たりにしながら、思うことがあったのかもしれません。そして同じ頃、母は作家の有吉佐和子さんのベストセラー「複合汚染」に感銘を受けていたようです。母はもともと、もの作りが好きな人でしたら、ふたりで会社を立ち上げ、環境に優しいものを作ろうと考えたのです。
―最初は石鹸からのスタートだと伺いました。
田口 廃食用油のリサイクル石鹸の製造からスタートしました。しかし事業として成り立つまでには10年以上かかり、生活は非常に厳しかったですね。事業が軌道に乗り始めたのは、地元の生協の方々が、弊社の「粉せっけん」を扱ってくれるようになってからです。「よもぎせっけん」は、熊本県で採れたよもぎエキスを保湿成分として使用し、添加物を一切使用しない製品で、今でも弊社のベストセラーです。私は学生でしたが、春休みや夏休みなどには工場へ手伝いに入るようになり、その頃から、将来は社の経営に携わりたいと思うようになりました。
「よもぎせっけん」は、40年以上のロングセラー商品。
―会社を受け継いだのはいつ頃だったのでしょうか。
田口 私が28歳の時に父が体を壊し、亡くなってしまったので、29歳の時です。事業が軌道に乗ったとはいっても、当時は従業員も10人ほど。まだまだ家族経営的な会社でした。私は文系の大学に進んだもので、まずは研究者や経理担当などの人材集めに奔走し、よりよい製品作りを叶えるための体制を整えることから始めました。同時に、東京・神田の本屋街で専門書を買い漁っては知識を叩き込み、自らも試験管を振ってみたり…。当時から取引をしていただいている会社の方からは、「あの頃の社長は、いつも石鹸まみれだった」と、今でも笑い話にされるほどです(笑)。会社を引き継いで3年ほどは、とにかくむしゃらに働きました。
―「地の塩社」という社名は社長が命名されたのですか?
田口 母です。母はクリスチャンだったのですが、新約聖書の中に「地の塩」という垂訓があります。「塩は人々の生活に欠かせないもので、目に見えないところで人々の役に立っている」という意味なのですが、弊社もそうした塩のような会社でありたい、という思いが込められています。
―そんな御社の近年のヒット商品が、「ママのきもち ベビーの泡の全身ソープCS」です。
田口 「よもぎせっけん」の後、同じく熊本のよもぎエキスを採用した「よもぎ化粧水」などを手がけ、工場を少しずつ拡大させながら、ISO認証も取得することができました。現在では、地元の産物を使った基礎化粧品などに加え、各地の産物を使ったOEM製品の製造も手がけています。また会社が大きくなると、たくさんの方に関わっていただけるようになり、様々なアイデアが生まれるようになりました。この「ママのきもち ベビーの泡の全身ソープCS」も、子育て中の社員の声から誕生したものです。彼らによると近年は、私たちの世代では考えられなかったようなアレルギーが発生するなど、子どもの肌を健やかに保つことがとても難しい時代になったと。そこで、赤ちゃんにも安心して使っていただけるピュアな石鹸を作ってみようと考えたのです。
山鹿東部工業団地内にある「地の塩社」本社入り口。
―どんなところをポイントに進められたのですか?
田口 核家族化が進んだ今、赤ちゃんの入浴を1人で担当しなければならない人が増えているということで、まずは片手でプッシュするだけで泡も作れるせっけんを作ろうということになりました。しかし、無添加でありながら、しっかりと泡立ち、汚れも落とし、泡切れも良く、洗い上がりも心地よい、という理想の流れを実現させることは想像以上に難しく、レシピ作りには非常に苦労ました。一方でこれは、40年間無添加せっけんを作り続けてきた弊社の、経験や技術の集大成になると。とにかく何度も試作を繰り返し、完成したのは構想から1年ほど経ってからです。パッケージの成分表示を見ていただけたらわかるのですが、本当にシンプルで、これぞ「黄金レシピ」の自信作となりました。ふわふわとした泡が、非常に心地よいです。また泡せっけんとしたことで、赤ちゃんとの「触れ合いコミュニケーション」にも役立っていると聞き、非常に嬉しく思っています。
2014年には、医薬部外品製造業および医薬部外品製造販売業を取得。
―海外の方にも好評だとか。
田口 やはりメイドインジャパンの信頼度は高く、さらに無添加ということで、特に意識の高い方々に求められているようです。また赤ちゃんにも使える製品ということは、お年を召した方まで、どんな世代の方にも使っていただけるということ。肌が敏感な方、低刺激な石鹸を求められている方にもおすすめしたい商品です。弊社では「ママのきもち」をシリーズ化し、他にも人と環境に優しい様々な製品を作っておりますので、ぜひ1度、ホームページを覗いていただけたらと思います。
「ママのきもち」シリーズ。
ソープのほか、ローションやバームなども。
―今後はどのような展望を持っていらっしゃいますか?
田口 これまでも、地元の農家の方々と協力しながら、環境に優しい製品作りに努めてきましたが、今後は弊社の柱である石鹸の原料、オイルや様々な原料、残渣物の再利用など、原料から生産ができないかと考えています。世界的に、これまで石鹸作りには、効率よく搾油でき、価格も安いパームオイルが原料として重宝されてきました。しかしパームオイルは産地が熱帯地方に集中し、農園を設けるための森林伐採や、生産者の過酷な労働条件などが問題になっています。そこで弊社は、「RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)」へのメンバー登録を行い、さらにパーム油の代替えとなりうる国産オイルを作れないか、試行錯誤しているところです。国産ということで、価格は上げざるを得ないかもしれませんが、環境と人を守ることを目的に設立した当社こそ、チャレンジすべき課題だと思っています。
―優しい眼差しで、環境問題に真摯に取り組む。その思いが数々の製品に込められていることが伝わりました。お話、ありがとうございました!
「ベビー泡の全身ソープCS(泡タイプ)」(330ml)
価格:¥935(税込)
店名:株式会社 地の塩社
電話:0120-402-839(9:00~18:00 土日祝日・特別休暇除く)
定休日:土日祝日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.chinoshioya.com/fs/chino2019ec/c/series_momfeelings
オンラインショップ: https://www.chinoshioya.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
田口淳(株式会社地の塩社 代表取締役)
1964年8月31日生まれ、熊本県出身。1986年に株式会社 地の塩社へ入社し、1994年に代表取締役に就任。約30年にわたり、設備投資や販路拡大に努めてきた。また「人の健康と自然を守る 常に新しく正しい企業であること」という会社理念に沿い、様々な業種にもチャレンジ中。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/柴田阿実 画像協力/地の塩社>