手すき美濃和紙で知られる岐阜県美濃市。その地で、再生紙にこだわり、トイレットペーパーや昔ながらのチリ紙製造を続ける製紙会社がありました。「使いやすい紙を一生懸命作り続けたい」との実直な姿勢。製造編集長アッキ―こと坂口明子が気になった牧製紙株式会社 代表取締役社長の太田俊樹氏に、取材陣が伺いました。
日常はもちろん災害用備蓄にもなる「業務用個包装トイレットペーパー」と介護やペットのトイレに重宝な「流せるチリ紙」
2022/10/04
牧製紙株式会社 代表取締役社長の太田俊樹氏
―創業からのあゆみをお聞かせいただけますでしょうか?
太田 代々、岐阜県美濃市伝統の手すき和紙を手掛けてきました。しかし5代目である父の代で、美濃和紙業界が斜陽ぎみとなりました。時を同じくして、岐阜県内にチリ紙をすく機械を作る会社ができたことから、チリ紙製造業へと舵を切りました。1980年代に入ってトイレットペーパーの製造も始め、今に至ります。
―チリ紙製造へのハードルは?
太田 設備投資や製造技術の会得などももちろん大変だったようですが、1番困ったのは販売ルートの開拓でした。父は、でき上ったチリ紙をもって名古屋や大阪などへ出向き、文字通り1軒1軒売り歩いたそうです。売り先ができたらそこから紹介を受けて次へと、それは苦労したと言っていました。その経験があったので、私は大学を卒業後、大阪の紙問屋で2年間修業をしてから家業に入りました。
―最初から業務用トイレ紙を?
太田 最初は小売店に卸す紙問屋が主な納品先でしたが、流通企業の合併などで小売業が巨大化し、生産量の面でも価格競争の面でも対応が難しくなりました。そこで業務用紙問屋に向けて、市販品(55mロール)の2倍近い100mロールを個包装した業務用トイレットペーパーを作り、納入するようになりました。近年になって、D2Cの仕組みを整え、それを一般向けにも販売しています。
長ロールで個包装、100%古紙原料の業務用トイレットペーパー。
―チリ紙は現在もニーズがあるのですか?
太田 介護施設やペットショップなどで使われているようです。片手でさっと取れて汚物がついたままトイレに流すことができるので、ロール状のものやティシューより便利に使われるシーンがまだあるようです。一定のニーズがある中でチリ紙の製造をやめてしまう工場が増えているので、うちのように設備のあるところが重宝されています。インターネット通販を整備して、全国にお届けできるようにもなりましたしね。
片手でつまんでパッと拭いてさっと流せるチリ紙。
―チリ紙やトイレットペーパーの作り方を簡単に教えてください。
太田 オフィスや家庭から出される古紙のみを原料にしています。水と薬品を混ぜて煮溶かしたら、インクなどを洗浄します。漂白剤や蛍光剤などは一切使いません。その原料を機械ですきながら巻き上げ、長さ10,000メートルほどのジャンボロールにします。チリ紙は、それを裁断して平判にしたあと、160×220mmにカット。トイレットペーパーは、紙芯に巻直しカットして完成です。
―製造工程で難しい点やこだわりポイントは?
太田 紙をすく段階で、どの程度の厚みにするかが1つポイントになります。薄すぎると破れやすいし、厚すぎると使いづらい。うちの製品は適度な厚みがあるので使いやすく、チリ紙に関しては、すいた紙を巻き上げるときにクレープ(しわ)を付けるので柔らかさもあります。
表面に入れるクレープの具合が柔らかさのポイント。
―原料は100%古紙ですね。
太田 森の資源であるパルプ(木材)を原料にしたきれいな紙は、子どもたちの本や教科書、ノートに使う方がいいじゃないですか。そうやって一度使われた古紙は、丁寧に処理すればトイレットペーパーによみがえらせることができます。岐阜県美濃市は、清流と森林の豊かな土地。森を守る一助を担えているとしたらありがたいですよね。ただ、最近はIT化やペーパーレス化で古紙自体が減っています。再利用が可能な古紙の回収にはできるだけご協力いただきたいなと願っています。
無漂白、蛍光料不使用ならではのインク粒が残っている。
―読者にメッセージを。
太田 うちの製品は、100%古紙が原料で、使い勝手や安心面にも配慮して、全工程を美濃市の工場で、近隣の職員が作っています。厚み、使いやすさ、柔らかさなどはぜひ1度使ってみていただき、さらに個包装や長ロールの利便性にも注目していただけたら。これからも、使いやすい紙を一生懸命作っていきます。
―チリ紙の便利さ、古紙再利用の重要性、トイレットペーパーという生活必需品が当たり前にあるありがたさなど、大切な気づきを得る素晴らしいお話をありがとうございました!
「森を守ろう! [業務用1個包装] トイレットペーパー シングル100m」(60個入り)
価格:¥4,616(税込)
店名:岐阜のトイレットペーパー工場
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/maki-seishi/mori100ms60/
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/maki-seishi/
「[トイレに流せる平判ちり紙] 流せるチリ紙1000枚」(12パック入)
価格:¥4,740(税込)
店名:岐阜のトイレットペーパー工場
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/maki-seishi/dustpaper12/
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/maki-seishi/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
太田俊樹(牧製紙株式会社 代表取締役社長)
1953年岐阜県生まれ、大学卒業後大阪市内の紙問屋で2年の修業期間を経て、1978年、親が1961年に創業したチリ紙製造、牧製紙工場に入社、1983年にトイレットペーパーの製造を開始し、1995年、牧製紙株式会社代表取締役社長に就任、現在に至る。
<文・撮影/植松由紀子 画像協力/牧製紙>