天然の革が持つさまざまな表情を個性や味と捉え、使うほどに味わいを重ねてくれる鞄や小物を作り続けるブランド、ヘルツ。1973年に東京で誕生し、現在は、大阪、名古屋、博多、仙台にも直営店を展開。来年には創業50年の節目の年を迎えます。長きに渡り、同社の革製品が愛され続ける理由とは? 代表取締役社長の野口裕明氏に話を伺いました。
愛情たっぷり。“本物”をとことん追求した おにぎり型ポーチ
2022/10/14
株式会社ヘルツ 代表取締役社長の野口裕明氏
―御社の沿革について教えてください。
野口 弊社は、現会長の近藤晃理が1973年に創業した会社です。会長は、美術大学を卒業してデザイン系の企業に勤めていたのですが、ある日、同僚から不要になった革を譲り受け、それで鞄を作ってみたところ非常に楽しく、「これで食べていけたら最高だろうな!」と思ったのだとか。当初は趣味のように始めた鞄づくりでしたが、その後、徐々に人が集まり、会社となって、今では社員数100名を超える会社になりました。2014年に、会長は私に代表を託し、経営からは退きましたが、今も週に1度はアトリエに顔を出して、楽しそうに鞄づくりを続けていますよ(笑)。
ハート(ドイツ語でヘルツ)を込めて製造中。
―野口社長はどういうきっかけでヘルツに入社されたのですか?
野口 ヘルツについて知ったのは、知り合いから財布をプレゼントしてもらったのがきっかけで、その革が持つ雰囲気や、まっさらな質感に惹かれたんです。当時、私は全く別の業界にいたのですが、HPに求人を見つけて、初心者ながらに応募して、なんとか拾っていただきました。
―野口社長が感じる「ヘルツらしさ」とはどんなところだと思いますか?
野口 ある程度の規模の製造業になると、分業して効率化するのが自然だと思うのですが、弊社では鞄1個を、職人が1人で仕上げるスタイルを創業時から続けています。たくさん製品を作るためには、もっと他に方法があるのではと思うのですが、1人で作るって、ものすごく楽しいんです。弊社には、私のように初心者の状態で入社する者が多いのですが、作りながら構造を理解し、技術を身につけながら成長できますし、ここで長く働きたいと思えるきっかけにもなっていると思います。社長が創業時に感じた「この仕事で食べていけたら最高!」というワクワク感が、今も残っている会社ですね。
野口社長(左)と、近藤会長。
―今回ご紹介する「おにぎりポーチ」は、まさに御社のワクワク感が伝わってくるようなアイテムですね。
野口 弊社には、「アウトドア」や「旅」といったテーマを設定しながら、新しいものを生み出す文化があるんです。この「おにぎりポーチ」は、「キッズアイテム」というテーマを掲げた時に出てきたアイデアの1つで、名古屋店の女性スタッフが考えてくれたものです。
コロンとしたフォルムに、ほっこり。
―どんなところにこだわって作られたのでしょうか。
野口 考案者の﨑田は、「とにかくリアルなおにぎりに近づけた」と語っていました。おにぎりの形って、三角だったり、俵だったり、大きさも家庭によって様々だと思うのですが、きっと﨑田の家では、この形、このサイズなんでしょうね(笑)。そう思って改めてみると面白いです。あとこだわりとしては、非常に細かいところなのですが、海苔がパイピングを巻き込むようになっているところですね。実は、ここで話をするにあたり、私も1つ作ってみたんですが、この部分は思ったより面倒臭い。でも、このひと手間が、おむすび感をより高めてくれているんだと思います。
細かいところまで、“ホンモノ”へのこだわりが。
―お客様の反応はいかがですか?
野口 最初はちょっと遊びすぎたかな?とも思ったのですが、本店の上にあるサンプルルームに並べていたところ、入ってきた方が皆、「おにぎりだ!」と手に取ってくださるんです。さすがは日本のソウルフードですよね。親しまれています。鞄に、アクセサリーのように付けてくださっている方も多いんですよ。しかも1個でなくて2、3個とか。5色展開で、「オムライス」や「高菜おにぎり」などそれぞれに名前も付いているので、集めたくなるのかもしれません。
―キッズアイテムと言えば、御社のランドセルも注目を集めていますね。
野口 お客さまからのリクエストから生まれたアイテムで、大人の鞄と同じように、1枚の革で作っています。厚みのある革を使っており、一般的なランドセルよりも重さがあるので選ぶ時にはよくよく考えてほしいのですが(笑)、お子さんに背負っていただいて、使いたいと言ってもらえたら嬉しいですね。
写真はキャメル。他、チョコ、ブラック、グリーン、レッドの5色展開。
―製作する際に気をつけていることはありますか?
野口 大人と体つきが違うので、体に当たって痛い部分がないように気をつけています。あと、修理を受けたときに気付かされるのですが、子どもって、想定していない使い方をするものなんだなぁと。ベルトを持って振り回したり、鞄の上に座ったり、友だちとぶつけ合ったり…。なので、思わぬ型崩れをしたり、意外なところが壊れたりします。ただそれも私たちにとっては大切な発見で、その度に改良を重ねています。小学校を卒業しても使い続けてくれていたり、子供が使わなくなったら自分が使いたいとおっしゃる親御さんもいらっしゃって、嬉しいです。
―来年は、創業から50年の節目です。どんなことを考えていらっしゃいますか?
野口 ここ2、3年はコロナの影響もあり、特殊な環境での営業が続きましたが、まずはそれを一旦リセットして、新しいものを生み出していく1年にしたいですね。コロナ前に、海外からの観光客の方が弊社の商品を購入してくださったことで、以降、海外から問い合わせをいただくことが増えました。そこに応えていけるような準備も進めています。試験的ではありますが、台湾の会社と話がまとまり、7月からインターネットで現地の方への販売を始めました。会長からは、ありがたいことに「野口の好きにやれ」と言っていただいているので、私自身、楽しく鞄を作り続けるところはこれまで通り大切にしながら、新しいことにもどんどん挑戦し、ヘルツを100年続く会社に成長させられたらと考えています。
―職人として、そして社長としての様々な思いやこだわり。聞かせていただきありがとうございました!
「おにぎりポーチ(KF-3)」
価格:¥9,350(税込)
店名:ヘルツ本店
電話:03-3406-1471(12:00〜19:00)
定休日:水・木曜 ※インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.herz-bag.jp/webshop/products/detail1566.html
オンラインショップ:https://www.herz-bag.jp/webshop/
「縦型ランドセル・玉縫い」
価格:¥60,500(S)、¥62,700(税込、送料込)
店名:ヘルツ本店
電話:03-3406-1471(12:00〜19:00)
定休日:水・木曜 ※インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.herz-bag.jp/webshop/products/detail537.html
オンラインショップ:https://www.herz-bag.jp/webshop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
野口裕明(株式会社ヘルツ 代表取締役)
1978年奈良県生まれ。別業界で5年ほど社会人経験を積み、ヘルツに入社。2014年に同社代表取締役に就任。現会長の近藤氏は、同社HP内で、野口氏への代表交代について、「僕は好奇心旺盛だから、自分と違うものを持っている人、例えば計画性があって、衝動的ではない人が、このヘルツを引き継いだらどうなるのだろうって。一番の決め手はそこだったんだよ!」と語っている。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/升谷遥香 画像協力/ヘルツ>