今回編集長アッキーが気になったのは、2023年に創業100周年を迎える野村製作所。OEM生産のプロフェッショナルとして、“Made in Japan”にこだわったモノづくりを続ける革小物メーカーです。オンラインショップや直営店では、これまで培ってきた技術と新たなアイデアから生み出すオリジナル製品を販売。これらのアイテムが生まれた背景や細部へのこだわりについて、4代目である野村俊一氏に伺いました。
老舗の技術×自由な発想から生まれる個性豊かな革小物「電車パスケース」「レザースマホポーチ」
2022/12/06
有限会社野村製作所 代表取締役の野村俊一氏
―創業以来100年にわたって、革小物づくりを続けてこられたのですね。
野村 1923年、祖父が東京・元浅草(旧・浅草永住町)に「野村商店」を創業したのがはじまりです。1951年には父が有限会社野村製作所と改組。革小物専門のOEMメーカーとして、大手アパレルブランドから車の部品メーカー、レジャー関係まで、さまざまなお客様とモノづくりをして参りました。
―モノづくりをしていく上で1番大切にされていることは?
野村 うちは特別な技術があるわけではないのですが、どんな製品に対しても「まずは挑戦してみよう」というチャレンジ精神をもって取り組んでいます。目指しているのは、お客様が持つイメージの“もう1歩先”のモノづくり。要望を形にするだけでなく、ときにはアドバイスや提案もして、互いに対等な立場でより良い製品をつくっていこう、というのが方針です。
革小物メーカーとしては国内最大規模のサンプル製作室。
1つ1つの製品につくり手の想いが込められている。
―OEM生産で培ってきた技術や企画力をいかしたオリジナル製品も手掛けていらっしゃいますよね。カラフルなデザインも多く、見ているだけで楽しいです。
野村 ありがとうございます。企画しているのは“売れるもの”よりも、“面白いと思えるもの”。「こんなのがあったらいいな」というアイデアを、職人の技術と創造力で形にしていきます。うちの職人たちが幸せだなと思うのは、完成品が見られるんですよ。大きな工場だと工程ごとに分業することも多いのですが、うちのような小さな会社だと最初から最後まで携われますから。その分、1つの製品に職人1人1人の想いも込められますしね。
かつての山手線車両をモチーフにしたレザーパスケース。
色違いで、京葉線・中央線・総武線・京浜東北線もラインナップ。
―なかでも「電車パスケース」は、遊び心たっぷりのデザインですね。
野村 これはエキュート東京に店舗を構えるにあたって“鉄道もの”をつくろうと、半年ほどかけて開発した製品です。店舗限定なんですが、全5種類あって黄緑色は山手線がモチーフになっています。今の新しい車両ではなく、旧型の205系電車を実際の1/40スケールでデザインしました。鉄道好きの方に手に取ってもらえるようなディテールと、リアルすぎず可愛すぎない絶妙なバランスを意識しています。
さりげなく山手線カラーのラインが入った裏面デザイン。
表面との間にはカードが入れられる収納ポケットも。
―よく見ると、パーツごとに素材も変えているんですね。
野村 そうなんです。テクスチャーも実際の車両の感じが出るように工夫しました。たとえば、窓の部分は光が反射したガラスを表現するために、細かい畝のある素材を斜めにカットして使っています。窓の上の黒い部分には、ツヤのあるツルッとした素材を選びました。微妙な色の違いでイメージが変わっちゃうので、カラーリングも極力忠実に再現しています。
大人気の「レザースマホポーチ」。
大きめのスマホや手帳型ケースも収納できるサイズが◎!
―「レザースマホポーチ」はどんな経緯で生まれた商品なんですか?
野村 キャッシュレス化によって、財布の売れ行きが落ちてきたこともあって企画した製品です。カード数枚と小銭やお札をコンパクトに持ち歩けるフラグメントケースは既に商品化していたので、それとスマホを一体化させたら便利なのでは?という発想から、この形になりました。最もこだわったのは、スマホを入れる部分のサイズ感です。どんな大きさのスマホでも入って、ケースをつけたままでも出し入れしやすい、丁度良い開き具合にしています。
裏面にはポケットが充実!
ファスナーポケットは片マチ付きなので、小銭の取り出しもスムーズ。
―淡い色味とキラキラした素材感も素敵ですね。
野村 このスマホポーチだけを提げて散歩や買い物、旅行にも出掛けていただけるように、女性に似合う品のある華やかなデザインを意識しました。使用したのは、ハニカム模様の型押しと箔押し加工を施した「オーロラ」というレザー。光の加減でキラキラと色味が変化する素材です。スマホ落下防止のベルト部分も、エレガントに見えるよう設計しています。
黄色に見えたりピンクに見えたり、まさにオーロラのように変化する美しいレザー。
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
野村 いま、日本皮革産業連合会などの組合が中心となり、皮革技術の向上と未来を担う職人の育成などを目的とした技能認定を行っているんです。3級から1級、1番上にはマイスターという称号があって、今うちでメインでやっている職人たちはみな1級、2級の資格を持っています。革小物メーカーって変な業界で、他社との距離が遠いんです。ですので、こういった技能認定のような機会を利用して、同業の仲間たちと互いに刺激し合う、良い意味での競争を大事にしています。ライバルではあるんですが、ともに切磋琢磨しながら日本の革製品・皮革業界を盛り立てていきたいです。
―本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
「電車パスケース」※店舗限定商品
価格:¥4,180(税込)
店名:野村製作所 直営店(エキュート東京内)
電話:03-3211-8808
営業時間:月~土 9:00~22:00、日・祝日 9:00~21:30
ネットでエキナカ:https://www.net-ekinaka.com/shop/r/r151010_p2/
「【スマホポーチ03】レザースマホポーチ」
価格:¥13,200(税込)
店名:野村製作所
電話:03-3837-2314(9:00~18:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://nomura.handcrafted.jp/items/67987670
オンラインショップ:https://nomura.handcrafted.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
野村俊一(有限会社野村製作所 代表取締役)
1951年東京都台東区に生まれる。1970年家業の皮革袋物製造業、有限会社野村製作所に入社。2002年4代目代表取締役に就任。2018年に東京駅内エキュート東京に初の直営店を出店。これまでのOEMに加え、オリジナル商品の販売も開始。日本バッグ協会 会長、日本皮革産業連合会 副会長を務め、皮革業界の活動をはじめ、職人育成のための技術認定の審査員を行う。釣りを趣味とし、釣りの会に入会。季節の魚釣りを楽しむ。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/和田英利 画像提供/野村製作所>