今年の手袋を探していたアッキーこと坂口明子編集長が見つけたのは、つけたままでスマートフォンが操作でき、デザイン性も高い逸品。だれからも喜ばれること間違いなしなので贈り物にもぴったりです。輸入雑貨を扱う会社が自信を持っておすすめする商品の開発秘話を、株式会社ピクニックの代表取締役社長 鮎澤健氏に取材スタッフが伺いました。

株式会社ピクニック 代表取締役社長の鮎澤健氏

―御社はつけたままスマホ操作ができる手袋のパイオニアと伺いました。

鮎澤　はい。2008年にアメリカ・アップル社のiPhone(アイフォーン)が日本で発売されました。
当社は輸入雑貨の卸売りをしているので、何かiPhone関連でおもしろい商品がないかと海外のサイトを検索していたところ、手袋をつけたままiPhoneを操作できるアメリカ製の手袋を見つけました。そこで1個購入して使ってみたのですが、実際は生地もごわごわしていて使い勝手がいい製品とはいえませんでした。そこで自社で新しく開発しようと思いました。まずどうして普通の手袋では使えないのか、つけたままスマホを操作できる手袋はどんな仕組みなのかを研究するところから始めました。

つけたままスマホが操作できる手袋は生活の中の不便を解決する製品として受け入れられた。

―どのような仕組みなのでしょう。

鮎澤　スマホの液晶画面からは弱い電気が出ています。人体は電気を通すので、液晶画面の電気が指に伝わり通電できて操作ができます。普通の手袋は電気を遮断するのでつけたまま操作できませんが、電気を通す性質、導電性がある糸があり、それを使えばスマホが操作できます。
調べると導電糸を製作している糸メーカーが見つかり、先方もちょうど導電糸を使って何か作りたいと思っていたこともあり、製品開発が進みました。2009年から開発を進め、2010年には発売しました。

―当時、国内でスマホ用手袋を作っている会社はありましたか。

鮎澤　私が知る限りでは当社のほかにあと1社だったと思います。当社では2011年、さらに機能性を上げた製品を作りました。スマホ用手袋は指先だけに導電糸が使われることが多かったのですが、当社製品は導電性のある繊維を巻きつけた糸を開発し、それを編んで製品化しました。これで普通の手袋に見えながらスマホを操作でき、デザイン性もある手袋が作れるようになりました。

―なぜ、指先だけに導電性がある手袋にしたくなかったのですか。

鮎澤　もちろん指先だけが色違いとかでもいいのですが、当時、私はそれってなんかカッコよくないなと思ったからですね（笑）。

「iTouch Gloves ニットシリーズ」。
滑り止めがついた商品、ストライプ、パターン柄など多彩な展開が楽しい（すべて税込で¥2,200）。

―なるほど。反響はいかがでしたか。

鮎澤　開発して世の関心を呼びました。最初の1年はほどほどでしたが、2～3年後、iPhoneユーザーが増えるにつれて売れ行きが上がっていきました。雑貨セレクトショップ、当社のオンライン販売サイトと大手通販サイトなどで販売していますが、大手販売サイトで常にランキング上位を占めるようになりました。

「iTouch Gloves HARRIS TWEED ブラックレザー×ヘリンボーン Sサイズ（女性向け）」。
ヘリンボーン柄はハリスツイードのラインの中でも1番の人気を誇る。

―今回、商品を2アイテム紹介させていただきますが「iTouch Gloves HARRIS TWEED」はどんな製品ですか。

鮎澤　これは革とウール生地をコラボレーションさせた手袋です。革は羊革を使用してるので柔らかく手になじみ、スマホの操作もしやすいのが特徴です。革に導電性をもたせるしくみの細かい部分は企業秘密なので説明できませんが、革を染めるとき、染料に導電性をもたせるそうです。当社の製品は手袋の指にあたる部分だけではなく、指の横にあたる部分の革まで導電性をもたせてあるのが特徴で、このことによって操作性が上がっています。

「iTouch Gloves HARRIS TWEED」にはヘリンボーン柄のほかにチェック柄、グレンチェック柄などがある。

―ハリスツイードにしたのはなぜですか？

鮎澤　ハリスツイードはスコットランドのアウター・ヘブリディーズ諸島のハリス地方で、職人たちが羊の新毛を手で紡いた糸で織った伝統ある生地で、イギリスを代表する高級生地といわれています。手袋にする生地を数種類取り寄せてみたのですが、まず一反で届いたサンプルがほかのウールと違ってずっしりと重く、また目が細かく触った感触も高級感があり、ぜひこの生地を使いたいと思いました。まあ、日本でよく知られている有名ブランドであるのも理由でしたが（笑）。革のスマホ手袋を作るなら、せっかくなのでいい生地で作ろうと思いました。

―どんなファッションに合いますか。

鮎澤　手袋はツイードと革製でクラシックなイメージですが、ビジネスシーンだけでなく、たとえばダウンコートなどカジュアルスタイルなどオールマイティーに使えます。20代後半から30代を中心に年代問わず、また男女問わず人気を得ています。

「iTouch Gloves」ケーブルグローブシリーズ。
ほぼ100％リサイクル素材を使用。（すべて税込で¥3,300）

―「iTouch Glovesケーブルグローブ」は新しい製品ですね。

鮎澤　そうです。これまで多くのiTouch Glovesを作ってきましたが、以前からサスティナブル素材（持続可能型循環素材）に関心がありました。回収したウールセーター、繊維工場から出るウール生地の切れ端や残糸を選別し綿状の原料に戻す技術を「反毛」と言いますが、その「反毛」を使った素材「ECO：RE」で作ったのがこの製品で、すべて国内産のものを使い、タッチパネル対応の親指と人差し指以外はこの素材を使用しています。回収した素材を仕分けしてほぐし、撚りをかけて糸を再生するのは手間と時間がかかるので材料としては割高になりますが、今後もこの素材を使っていきたいと思います。

―「iTouch Gloves」は価格的にもこなれているという印象です。

鮎澤　生地の購入から工場とのやり取りまで仲介を入れず、直接関わって製品化しているからだと思います。また、原価の設定や流通過程の工夫などでもムダを省き企業努力をした成果だと思います。

ハリスツイードから派生したライン「グッドファブリケーション」にはポーチ、イヤーマフ、ネックウオーマーがある。
端生地を利用した数量限定商品でリーズナブル価格も魅力。

―さて、御社は2003年に設立した若い会社ですが、御社の歴史をご紹介ください。

鮎澤　私は当初、ファッションビルを全国展開する企業の中のセレクトショップを運営する会社に在籍していました。そこから独立、2003年に当社を設立しました。タイ雑貨を始めとして各国からの輸入雑貨を扱い、今は「iTouch Gloves」のほかにカリフォルニア生まれのエコバッグ「BAGGU」、スウェーデン製のアウトドアや収納に使えるバッグ「HINZA」、ハリスツイードのネックウオーマーやポーチなどの小物などのライン「グッドファブリケーション」などを扱っています。おもしろい商品があるのでぜひホームページを見ていただけたらと思います。

―社名からして楽しそうな雰囲気ですね。

鮎澤　はい。私も楽しそうな名前がいいなと思ってつけました（笑）。社員5名の小さい会社ですが、私が飼っている柴犬を毎日連れていっているので、総勢5名と1匹の会社ですね（笑）。今後も魅力的な商品を発信して皆さんに喜んでいただきたいと思っています。

―本日は楽しいお話をありがとうございました。

「HARRIS TWEED」（ブラックレザー×ヘリンボーン／Sサイズ【女性向け】）
価格：¥9,350（税込）
店名：iTouch Gloves
電話：03-3469-1930（10:00〜18:00 土日祝日除く）
定休日：土曜・日曜・祝日　インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：http://itouchgloves.jp/?pid=92995803
オンラインショップ：https://www.picnic-jp.com/
男性向けのLサイズもあります。

「CABLE Glove」（グレー／フリーサイズ）
価格：¥3,300（税込）
店名：iTouch Gloves
電話：03-3469-1930（10:00〜18:00 土日祝日除く）
定休日：土曜・日曜・祝日　インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：http://itouchgloves.shop-pro.jp/?pid=170250793
オンラインショップ：https://www.picnic-jp.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
鮎澤 健（株式会社ピクニック 代表取締役社長）

1971年長野県生まれ。雑貨セレクトショップ勤務を経て、2003年独立。海外デザイン雑貨を直接輸入し、国内の販売店へ紹介する。2010年スマートフォン対応手袋「iTouch Gloves」を販売開始。

＜文／今津朋子　MC／橋本小波　画像協力／ピクニック＞