新しいアイテムをワードローブに迎える際、「長く大事にできるもの」を基準に考える方も多いのでは? 今回は、機能的で美しく、また使うほどに味わいが増し愛着が持てるようなレザーアイテムを、約60年に渡り作り続けている株式会社和宏の代表取締役の山﨑高裕氏に、同社製品の魅力について伺いました。
使うたびに、自分のものへ。日本屈指のタンナーと生むレザーアイテム
2023/01/04
株式会社和宏 代表取締役の山﨑高裕氏
―御社の沿革について教えてください。
山﨑 弊社は、1965年に父が山崎商店を設立し、1971年に法人化して株式会社和宏となりました。その頃から主な事業は、警察装備品の製造です。警察用品は材料に関するさまざまな規格があり、それらをクリアしなければ入札に参加できないのですが、父は、今や日本でも指折りのタンナー(製革業者)となった栃木レザーの前身である栃木皮革と取引を行い、装備品の製造を受注してきました。
―社長は元々、後を継ぐつもりだったのですか?
山﨑 いえ、全く…(笑)。ですが、警察装備品を製造できる会社は全国でも数少なく、父は周りからよく「会社を存続させて欲しい」と言われていたそうです。私は全く別の業界にいたのですが、「自分の後をやってみないか」と打診され、1997年に入社し、今に至ります。
父親が病気になるまで7年ほど一緒に仕事をしたでしょうか。今思うと、1つの目標に向かって一緒に走ることができたことにとても感謝しています。その後、2005年に社長に就任したのですが、やはり商売は思い描いたようにはいかないものだと思い知らされました。警察装備品の予算は少しずつ削減されてきていますが、材料は確保しておかねばなりません。
弊社では、革の卸販売も行なっていますが、天然のもののため、仕入れた革を売り尽くすこともなかなか難しい。そうした在庫を有効活用する方法はないか、ということで立ち上げたのが、自社ブランドの「minca」でした。
―「minca」のブランド名はどこからやってきたのですか?
山﨑 「何にしようか」と社員と一緒に考えまして、「何でも革で作って、トライアルしてみようか」、「みようか」「みんか」「minca」と(笑)
―そんな「minca」の中から、まずはナイフケースについて。こちらはどんな経緯で生まれたのですか?
山﨑 コロナ禍でキャンプ人気が高まりましたよね。そのキャンプを、よりカッコよく楽しんでいただこうと(笑)。弊社では、ホルスター(拳銃ケース)の製造を行なってきたので、その技術を活用しているところがポイントです。
あとは栃木レザーの中でも、弊社にしか卸されていない、「ハーネスレザー」という最高級レザーを使用しており、非常に高い堅牢性を誇ります。
美しいツヤをまとったナイフケース。数ヶ月を要して鞣されたレザーを使用。
厚いコバを、職人が手で丁寧に縫い合わせている。
―チョコ、オリーブ、タン、ブラックの色展開も素敵です。
山﨑 グリーンは使うごとにカーキっぽくなっていくなど、経年変化が楽しめます。栃木レザーの革の中でも、より味が出るようなものを入れているので、こうした風合いが好きな方にはたまらないと思いますよ。
1890年に誕生したナイフメーカー「オピネル」の折りたたみ型ツールナイフNo.09専用のケース。
―そしてもう1点。ベルトについてもお話を聞かせてください。
山﨑 ベルトは弊社が1番得意としているところで、さまざまなタイプのものを作っていますが、中でもこの「ハーネスレザーベルト」は、1枚もので厚みのあるレザーを使っており、長く愛用していただけるアイテムです。
最初のうちは、ちょっと硬いかもしれませんが、使っていくうちにしなやかになっていきます。くたくたになりすぎず、いい塩梅に変化していくところが魅力です。またレザーアイテムのクオリティを左右するコバ(裁断面)の美しさにも注目していただきたいですね。
5mmの厚さのレザーに、真鍮のバックルを合わせたベルトは、男女兼用。
上と同じベルトを、山﨑社長が約1年使用したもの。しなやかで落ち着いた風合いに。
コバの美しさに、レザー職人のこだわりが表れるのだとか。
―どんな風にお手入れをすれば良いのですか?
山﨑 レザークリームを時々塗っていただくと良いでしょう。あまりやりすぎると油が入りすぎるので、ほどほどに。弊社のHPでもケアグッズを販売しているのでぜひチェックしてみてください。
―今後の展開について聞かせてください。
山﨑 現在、足立区千住にあるショップはファクトリーショップということで、2/3のスペースで製造、1/3のスペースで販売を行なっています。
今後は販売のみのショップをいくつか展開できたら。そして「minca」を、「『minca』と言えば、こんなブランド」、と言われるような存在に育てていくことですね。
―最後に、社長にとってレザーとは?
山﨑 さまざまな「橋渡し」を担ってくれるものでしょうか。例えば弊社は、栃木レザーのパートナーとしてもの作りを行なっていますが、両社の魅力を、お客さまへ、レザーを通じて伝えることができます。また社内では、私はレザーの特徴を確かめつつ、商品を企画し、職人と共有するのですが、そうしたやりとりを通して、彼らと繋がることができます。
彼らの創作意欲を高めるきっかけにもなっているかもしれません。レザー製品は、手間も労力もかかるものです。ですがそこにしっかりと向き合い、よりよい製品を作ることで、対価も得られるようになる。今後も大切に人材を育てながら、少しずつ事業を拡大していけたらと思っています。
1点1点、手作り。そう思って商品を手に取ると、より感慨深い。
―「コロナ禍で行動範囲は限られましたが、新商品の開発など、それまでかけられなかったところに時間と労力がかけることができました」と、笑顔で語ってくださった山﨑社長。お話、ありがとうございました!
「ハーネスレザーベルト」(巾35mm・全8色)
価格:¥16,500(税込、送料込)
店名:minca(株式会社 和宏)
電話:03-5284-7790(11:00〜19:00 火・土日祝日除く)
定休日:第2、第4月曜、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://minca.base.shop/items/28833618
オンラインショップ: https://minca.base.shop
「オピネルNo.9ナイフケース」(全4色)
価格:¥14,200(税込、送料込)
店名:minca(株式会社 和宏)
電話:03-5284-7790(11:00〜19:00 火・土日祝日除く)
定休日:第2、第4月曜、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://minca.base.shop/items/58805511
オンラインショップ: https://minca.base.shop
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
山﨑高裕(株式会社和宏 代表取締役)
1965年東京都生まれ。1997年に株式会社 和宏に入社し、2005年より栃木レザー社の皮革販売を開始する。その後、栃木レザー社とのオリジナルレザーを開発し、2006年にmincaと天神ワークスを立ち上げ。現在は、栃木レザーのマイスターとして、材料からモノづくりまでをプロデュースしている。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/鯨井綾乃 画像協力/和宏>