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思い出の家具や’60〜70年代の名品をアップサイクル。高度な修理によるリノベーション家具

2023/01/23

おうち時間や在宅勤務が増え、インテリアへの関心が高まっています。サステナブルな視点や愛着あるものを長く大切にしたいという思いから、家具の修理にも注目が集まるなか、編集長アッキーが気になったのが、1960~70年代の質の高い家具に現代の感覚を添えたリノベーション家具。高い修理技術を持つ株式会社マルニファニシング代表取締役社長の山中洋氏にお話をうかがいました。

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株式会社マルニファニシング・株式会社マルニ木工  代表取締役社長の山中洋氏

―日本初の業務用家具メーカーとしてスタートを?

山中 マルニファニシングは1975年に、日本初の業務用家具メーカーとして創業の株式会社マルニ木工の子会社として始まりました。マル二木工の技術をもとに、高品質の業務用木製家具を製造してきましたが、2015年に私が社長に就任して以降、ここ数年はメンテナンスや内装改修、修理のご要望が急増するようになりました。もともと修理は付帯事業だったのですが、昨今は傷みがあれば直して大事に使いたいという方も多い時代でもあり、修理事業を主体としています。

―入社後すぐに海外に行かれたとか?

山中 はい。アメリカの大学院で経営を学び、帰国後1999年にマル二木工に入社すると、当時社長であった父に「日本だけでなくヨーロッパのものづくりを勉強して来い」と言われ、入社から3か月後にイギリスの提携工場に行きました。約2年半、家具製造を学びました。

―どんな2年半でしたか?

山中 思い出したくない2年半です(苦笑) 。ウェールズ国境の田舎町で、日本人といえば私くらい。訛が強くて何を言っているかわからないし、まだ日本語でさえ家具業界の専門用語も理解していない私は途方に暮れました。ただ、そこではソファを造っていて、家具のことを勉強するなら自分で作るのが1番だと言われ、絵心もないのにスケッチを描いたり、現場で作業させてもらったり、いろいろな経験を積むことができました。

―帰国後は?

山中 マルニ木工の営業として国内でさまざまな仕事を数年したのちにマル二ファニシングの社長を兼務し、2021年にマル二木工の社長に就任しました。入社後豊富な経験をさせてもらい、それが今に生きていると思うことが多々あります。外部の方と接することが多く、それは自分に合ってると思いますね。就任後は、人との交流をより意識的に持つようになりました。

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高い技術と現代の感覚によりリメイク。
レトロではなく新鮮な魅力のある姿に。

―コロナ禍もありましたが……。

山中 家具業界としては良い点もありました。もともと日本の方は、家が小さいとか高いとかいうこともあって、一部のインテリア好きの方を除いて、インテリアへの関心が薄いほうだったと思います。ところが、在宅ワークや家の中で過ごす時間が増えると、もっと快適に暮らしたいとか、仕事環境を整えたいという方が増えてきました。ニーズや住まい方が変わってきたといいますか、上質なものを求める気運が日本でも高まって、売り上げにもつながりました。

―そのようななかで修理に力を?

山中 そもそも親会社であるマルニ木工から仕事を受けて、自社製品の修理を行うことが中心でした。修理をしてお戻しするとお客様が喜ばれ、加えて昨今はSDGsやサスティナビリティが叫ばれるという時代背景もあるので、せっかくの技術を世の中に伝える方法はないかと探していたんです。修理では30~40年前の製品も多く、古いものでは70年前のものもあります。たとえば3代にわたって使われてきたソファも、一見ボロボロになっているけれど、中の構造はしっかりしていて修理をするとまた使える。マルニ木工は2028年で100周年ですし、歴史の中で家具をたくさん造って世に送り出してきたわけで、その中でも1960~70年代、ミッドセンチュリーの時代の影響を受けたものもある。そこで、そういった製品をいろんなルートから調達し、より魅力的な価値を付けてリメイクし、自社のECサイトで販売する事業を始めることにしました。

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ユーズド家具を修理、新たな魅力を加えて循環させるサスティナブルな取り組み。

―販売はインターネットだけですか?

山中 当初はネット通販だけの予定でしたが、2022年秋に伊勢丹新宿店さんとのコラボでポップアップイベントをしたのですが、大きな反響を頂きました。新製品を生み出すことももちろん行いますが、過去の良い商品に新しい命を吹き込んで新たな価値を付け世の中に流通させていければ、そしてそんなふうに家具を生き返らせ、循環していければいいなという思いです。

―ところで、個人のお客様の修理のなかで、とくに印象に残っているのは?

山中 クッションのへたりや木の塗装を直してほしいというご要望が多いなかで、へたりは直してほしいけれど、木の部分の傷は直さないでと言われたことがあります。お子様が幼い頃に付けられたもので、思い出の傷だから残してほしい、と。その時に、ただ直してきれいにすればいいんじゃないんだと気づきました。家具も家族の一員。家族のストーリーや記憶が染み込むんだなと思って、愛着を持って使っていただけるのがうれしかったですね。

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英国のジャコビアン様式をモチーフにした「エジンバラ ヌメ革の質感を活かした天然木 チェア」。

―販売中の「エジンバラ ヌメ革の質感を活かした天然木 チェア」についてお教えください。

山中 もともとマルニ木工が1967年に発表したものです。高度経済成長期の当時は日本の生活が洋風化し、欧米への憧れが強かった時で、洋風の家具が好まれました。当時ヨーロッパにあったものよりもサイズを小さくし、日本人の感覚に合わせて過度の装飾を排したのがこの椅子。1番の特徴はねじれ脚です。当時は木の欠点を消すために濃い色の塗装をしていましたが、現在は木の質感や特徴を楽しむ意味でナチュラル色にして、経年変化を楽しめるようにしています。

―ヌメ革はどちらで調達されるのですか?

山中 ベジタブルタンニンによるなめしで塗装を施さないヌメ革で、兵庫県のタンナーによるものです。使えば使い込むほど味わいが増し、経年変化を楽しめます。試作の際パイピングの部分がうまく仕上がらなかったことから、東京の台東区で100年近く革ベルトを製造されている工場にお願いして、革の裏を梳いてもらいました。厚さ調整ができてきれいに仕上がりました。

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「エジンバラ ヌメ革の質感を活かした天然木 チェア」は、
椅子の存在感を生かし、小物を置いてディスプレイにも。

―1971年発表の製品に現代の感性を加えた「ショパン クヴァドラファブリックのアームチェア マットクリア仕上げ」は、かりん材なんですね。

山中 かりん材は今や高級材になり、家具に使われることはほぼありません。創業者が「こんな硬い木を曲げることなんてできるわけがない」という言葉を耳にし、職人魂を発揮して高い技術を駆使して造ったものです。それほど硬いのですが、だからこそ強く、細くできて美しい線が際立つのです。今は中古市場でなかなか手に入りませんが、入手できた時に現代のエッセンスを加えて仕上げます。

―ファブリックは?

山中 デンマークを代表するメーカー、クヴァドラのものです。マルニ木工の製品にもクヴァドラを用いており、このような世界的に有名なファブリックブランドの生地を使えるのも、親会社と連携しているメリットですね。

―社長が考えておられる家具の魅力とは?

山中 天然素材ですから、1つ1つ違いがありますが、それは人の顔やほくろと同じでそれぞれの表情や味わいです。それが魅力だと思いますね。インテリアに関心を持たれる方が増えて、そういったご説明をすると、かつてあった木目や変色が魅力として受け入れられるようになってきたと思います。

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「ショパン クヴァドラファブリックのアームチェア マットクリア仕上げ」は、北欧家具を思わせる美しさ。
50年前の椅子でありながら、現代の暮らしに溶け込むデザイン。
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細いラインが特徴。
創業者である山中武夫氏の職人の矜持と高い技術が表れている。

―今後の展望をお聞かせください。

山中 修理の技術をもとにアップサイクルしていく仕組みを広げていきたいと思います。家具を直してまた使えるという認識を持っておられる方は、実感としてまだ少ないですね。リサイクルやリユースのほか、付加価値を付けて次の人に渡してゆくということが市場としてまだ成熟していないので、今後の広がりを期待しています。歴史のある会社でないとできない部分でもあるので、古い同業他社さんと協業したりして、大きなムーブメントにしていければと思います。

―これからも家具に注目していきます。ありがとうございました。

マルニファニシング_商品1

「ショパン クヴァドラファブリックのアームチェア マットクリア仕上げ(MF-004)」
価格:¥297,000(税込)
店名:MARUNI FURNISHING
電話:03-3662-0572(9:00~18:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://store.maruni-furnishing.com/view/item/000000000011
オンラインショップ:https://store.maruni-furnishing.com

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「エジンバラ ヌメ革の質感を活かした天然木 チェア(MF-019)」
価格:¥69,300(税込)
店名:MARUNI FURNISHING
電話:03-3662-0572(9:00~18:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://store.maruni-furnishing.com/view/item/000000000022
オンラインショップ:https://store.maruni-furnishing.com

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
山中洋(株式会社マルニファニシング 代表取締役社長)

1971年生まれ。明治大学商学部、米国オールドドミニオン大学経営大学院を卒業後に帰国し、1999年株式会社マルニ(現 株式会社マルニ木工)に入社。入社後まもなく英国の提携工場にて家具製造の基礎を学ぶ。帰国後はマルニ木工の営業職を経て社内の様々な機能改革に従事し「MARUNI COLLECTION」、「MARUNI60」等、外部デザイナーとの企画を積極的に推進。ブランド戦略や商品企画、セールスプロモーションの構築に携わる。2015年株式会社マルニファニシング代表取締役社長、2021年株式会社マルニ木工代表取締役社長に就任。

<文/大喜多明子 MC/鯨井綾乃 画像協力/マルニファニシング>

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