伝統的な刃物産地で本格的なアウトドアナイフで知られるメーカーが手掛ける、遊び心たっぷりのシリーズが人気とか。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社ジー・サカイ 代表取締役社長の坂井勇平氏に、取材陣が伺いました。
大人が使える、高性能ながら愛らしいツール「ニャイフ キッチン 牛刀」「ホットサンドメーカー スナネコVer」
2023/04/24
株式会社ジー・サカイ 代表取締役社長の坂井勇平氏
―これまでの歩みをお聞かせください。
坂井 1958年に父が坂井刃物製作所として設立しました。ナイフを主力としていましたが、1本100円前後と非常に安い価格設定だったのです。岐阜県関市という伝統ある刃物産地のメーカーとして、安価な大量生産品を主力とする方向性に疑問を持った私は、世界一の高品質ナイフを作ろうと決心しました。24歳くらいだったと思います。
アメリカオレゴン州のポートランドに、ガーバーというナイフメーカーがあります。その輸入代理店に自社製品を持ち込んだところ、「これはおもちゃでんな」と一蹴され、悔しくて眠れませんでした。ガーバー社のナイフを全部取り寄せ、分解して研究。必ず同じクオリティのナイフをつくるんだと、試行錯誤を重ねました。
2年後、納得のいく商品を携えて再訪したところ、OKをもらえたのです。1977年、ガーバー社と技術提携したナイフ「シルバーナイト」シリーズが誕生しました。そこから社名を、1978年にガ-バ-・サカイとし、1982年、新たにジー・サカイブランドの販売を行う株式会社ジー・サカイを設立しました。
「シルバーナイト」シリーズは、発売から10年で100万本を売り上る大ヒット商品となりました。現在はナイフだけでなく、家庭用包丁のデザイン、生産のほか、アメリカの有名ブランドナイフのOEMも請け負っています。
海水などに浸けてもサビない鋼材をもちいた「サビナイフ」シリーズは世界中のアウトドアマンから高評価をいただいているんですよ。
―刃物産地である岐阜県関市で、メーカーとして大切にしていることは?
坂井 関市は、西のゾーリンゲン、東の関と呼ばれる刃物産地。日本刀の製作に欠かせない良質な焼刃土と水、炭があったため、鎌倉時代から多くの刀匠が移り住み、刀鍛冶が盛んになりました。
この約800年の伝統を受け継いで、「折れず曲がらずよく切れる」を理念に、現在は刀だけでなく、ナイフ、包丁、ハサミや爪切り、医療器具など、100を超えるメーカーがさまざまな刃物を製造しています。
ジー・サカイとしては、他と差別化された、オンリーワンの製品作りを心がけています。例えば、H-1鋼などのサビに大変強い鋼材を使用し、世界に1つしかない刃物を目指しています。
1987年には「ナイフ博物館」を開館。カナダから仕入れた丸太で建設したログハウス風の建物で、世界各地のナイフ、珍しいナイフ、貴重なナイフ等を展示しています。博物館のオープン記念は、シルバーナイト100万本販売やガリバーナイフのギネス登録と時期が重なったので、ガーバー社長夫妻を米国から招き、盛大なイベントになりました。隣接するショールームではナイフ作り教室も開催しています。
―「NYAIFE KITCHEN(ニャイフ キッチン)」シリーズ誕生の背景は?
坂井 アウトドアナイフメーカーの強みを生かした包丁づくりに挑戦し、錆びに強い「サビナイフキッチン」を開発しましたが、売れ行きが今一つでした。弊社の顧客は、90年代のナイフブームの影響か年齢層が高めだったので、若い世代にターゲットを絞ることに。ネコをモチーフにした錆びに強い包丁「サビニャイフキッチン2」を発表したのが2017年です。SNSや動画共有サイトで情報発信をしたところ話題となり、若い層にも弊社の製品が売れるようになりました。
実は「サビニャイフキッチン2」は、料理をする男性向けに耐久性に重点を置いたため、女性には少し重かったのです。そこで2020年、切れ味を重視しつつ軽量化に成功した「ニャイフキッチン」が完成しました。
―どのような特徴がありますか?
坂井 ブレードにブラックやブルーのチタンコーティングが施してあるので、見た目カッコいいでしょ? もちろん切れ味は抜群。少しの力で食材を切ることができますよ。ハンドルにはネコの足跡の窪みがあり、濡れた手でも滑りにくく安全です。
シリーズには牛刀のほか三徳、ペティ、刺身などをラインナップしていますが、ハンドルのラインを色分けしているので、包丁スタンドに収納した状態でも、どの種類の包丁か一目瞭然。ニャイフキッチンシリーズで包丁をそろえてくれるお客様も多いんですよ。
販売チャネルはメーカー直販のみですが、お陰様で高品質でデザインもかわいいとSNSで話題となり、これまでに5,000本ほど売れています。
スタイリッシュな中に愛らしい遊び心のあるデザイン。切れ味や実用性も抜群。
別売りの専用包丁革ケース 足跡付き(¥6,600・税込)に収納することで、キャンプなど持ち運びも便利な点は、
アウトドアナイフメーカーならでは。
―ホットサンドメーカーも……。
坂井 人気のホットサンドに、猫の焼き目がついたらかわいいのではないかという発想です。ホットケーキにもいいですよ。もちろんキャンプなどアウトドアでも使えます。
猫とその足跡の焼き目がキュートで、朝食にしたら元気が出そう。
フッ素樹脂加工、ストッパー金具の固定、着脱可能で洗いやすいなど、使い勝手も良い。
具だくさんにしてふっくらさせると焼き目がよりくっきり。
ホットケーキにも。ホットサンドメーカーごと両面焼くので、生地をひっくり返す手間なし。
―今後の展望をお聞かせください。
坂井 これからも、オンリーワンのキッチンナイフ、アウトドアナイフの開発、生産販売を目指して素材選びから加工技術、部品1つ1つの精度アップに注力します。
職人の匠の技を大切にしながら、安定したハイクオリティの商品を作り続けられるよう、デジタル化も進めています。例えば、レーザー切断機や最新の研磨機を導入しました。CNC加工による精密で正確な切断研磨により、高品質な刃物製造を追求。ハイテク技術と匠の技の融合、コラボレーションでさらに優れた製品を発表していきます。
「ニャイフキッチン」は、息子が開発しました。これからは若い世代に自由な発想で新しい商品を生み出していってもらいたいと思っています。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「ホットサンドメーカー スナネコver」
価格:¥5,500(税込)
店名:ジー・サカイ オンラインショッピング
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.gsakai.co.jp/jpnshop/html/products/detail.php?product_id=813
オンラインショップ:https://www.gsakai.co.jp/jpnshop/html/
「NYAIFE KITCHEN(ニャイフ キッチン)ブルーブレード 牛刀 サーバルキャットver」
価格:¥20,900(税込)
店名:ジー・サカイ オンラインショッピング
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.gsakai.co.jp/jpnshop/html/products/detail.php?product_id=945
オンラインショップ:https://www.gsakai.co.jp/jpnshop/html/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
坂井勇平(株式会社ジー・サカイ 代表取締役社長)
1948年岐阜県生まれ。1982年代表取締役社長就任。ガーバー・サカイ株式会社代表取締役会長兼任。2000年岐阜県関刃物産業連合会理事、2005年日本輸出刃物工業組合理事長、2016年関商工会議所会頭、他様々な役職を歴任。刃物産業の発展に貢献したとして2010年藍綬褒章受章、2022年旭日小綬章。平成初期のアウトドアナイフブームの火付け役であり近年では高性能の包丁の開発にも力を入れている。
<文・撮影/植松由紀子 MC・撮影/鯨井綾乃>