今回、編集長アッキーが気になったのは、オールレースのエコバッグが人気の横浜・元町の「近沢レース店」。株式会社近澤レース店 代表取締役社長・近澤弘明氏に、商品の魅力を取材陣がうかがいました。
かわいいのに丈夫で大容量サブバッグやエコバッグとして活躍「ポケット付レーストート エタニティ」
2023/05/18
株式会社近澤レース店 代表取締役社長の近澤弘明氏
―創業の経緯を教えてください。
近澤 創業当時は近澤平吉という私の祖父が絹の輸出をしていました。その時期は蚕の伝染病によってヨーロッパでは絹がとれなくなっていました。一方、日本の桐生では絹の製造が盛んになっていて、港のある横浜から輸出していたのです。祖父は早くに亡くなりましたが、妻である近澤つるが今の横浜・元町でテーブルクロスやベッドリネン、ハンカチなどを扱うリネンストアーをスタートしました。
当時は山手に外国人居留地がありましたので、外国からの船が港について大桟橋の方から歩いてくると、必ず元町を通って山手に向かいます。そのため、元町は居留区の外国人の方々の需要に特化した商店街でした。当店も日本では珍しいリネンストアーを開業させたのはこのような背景があったからです。
店頭に麻生地を置き、お客様からのオーダーに応じてお品物を作っておりましたが、次第にレースや刺繍を施して欲しいとのご要望を受け、レースを扱うようになります。
―経営理念を教えてください。
近澤 「華やかな変化をもたらす」。レースはそれ自体でも価値ある存在ですが、お洋服やハンカチ、バッグなどにあしらうことで、そのアイテムに更なる価値を与えるスパイス的な要素があります。我々も「夢とゆとり」のコンセプトのもと、レースを切り口にお客様の多幸感を追求していきたいと思っております。
―今回ご紹介させていただくエコバッグ「ポケット付レーストート エタニティ」の開発の経緯について教えてください。
近澤 もともとエコバッグは当店の主力商品の1つで、エコバッグが普及する前から、いろんなエコバッグを開発してました。撥水加工がされたナイロン素材に刺繍を施したエコバッグが非常に売れていたのですが、レース屋らしく、総レースのエコバッグを作りたいという気持ちになりました。
レースならではの透け感とバッグとしての強度を兼ね揃えた素材を研究し、行きついたのがこちらです。
このレースは、かつて漁網を髪飾りに転用することから発展した「タスカニレース」というレースがあり、その技法を機械で再現致しました。
美しいレースで「chikazawa」の文字が入っています。
―完成までにはどれくらいの期間がかかりましたでしょうか。
近澤 2、3年はかかったように記憶してます。サンプルのやりとりなどがあり、2010年から発売しています。そこから大きな仕様変更はしていませんが、デザインは何回も変えています。こちらの商品はポケットがついて収納できるようになっていますが、最初はポケットがありませんでした。
スマホをポケットに入れられるのも便利。
―一番人気のカラーは何色ですか?
近澤 当初は黒が半数を占め、残りの半数が3~4色のカラーという割合でした。今は、ピンクやブルー系もよく売れるようになり、必ずしも黒が人気というわけではありません。
―お客様からのお声はいかがでしょうか。
近澤 思ったよりも大容量で頑丈である点、洗濯機で洗えて日々のメンテナンスも非常に楽である点、デイリーユースで使える点などがお喜びいただいているところです。
丈夫で重いモノを入れても形が崩れません。
―こちらの商品で一番こだわった点を教えてください。
近澤 毎日お使いいただくものなので、まずは丈夫であることです。そしてオールレースであることの2つです。持ち手の部分と袋の部分の結合部分を見ていただくと、しっかりと縫製されているのがおわかりいただけると思います。
デザインを損ねずに丈夫にするため、どれぐらい縫えばいいかは研究しました。当店のYouTubeでは、ダンベルを10キロ入れても問題がなく、強度が高いことを証明しています。以前はエコバッグと言う名前を付けていましたが、「エコバックじゃもったいない」という声をお客様からも非常によくいただいていたので、サブバッグとして持っていただける「レーストート」という名前に最近変えました。
メインのバッグとレーストートをお持ちいただいても、ファッション的に素敵であることも重視しています。
コンパクトにたためるので持ち運びに便利。
―今後、ほかのカラー展開やデザイン変更は考えていらっしゃいますか?
近澤 ワンロットで2万枚作っており、1年間で1.5回転ぐらいしています。本当はもっと頻繁に新しいデザインのものを出したいのですが、ロット的に難しいという問題がありました。
ただ2万枚の中でデザインを2~3種類作ることができるのではないかという研究をしています。当店で一番枚数的に売れているのはタオルハンカチで年間35万枚です。これは1分半に1枚売れている計算になります。
ハンカチは毎月新しいお品物が入り、それを楽しみにお店にいらしていただくお客様も多いのです。エコバッグの場合はどうしても通年モノという認識になってしまっているので、今後はどんどんリモデルを出していければと考え、試行錯誤しているところです。
―男性向けの商品もあるのでしょうか。
近澤 シャツやポロシャツ、リラックスウエアーを販売していたこともございますし、ユニセックスの麻のハンカチは定番で人気がございます。今年は、男性も持てるような日傘も出ます。中世のヨーロッパではレースは男性にとってもステータスアイテムでしたので、現代の男性にもワンポイントで取り入れて頂けると嬉しいです。
―インスタグラムにも力をいれていらっしゃいます。
近澤 SNSはお客様と直接対話ができるツールですので、ライブ配信を取り入れ、新商品のバーチャル展示会やお勧め商品のご案内などを行っています。直接コメントをくださる方も多く、「こういう品物が欲しいです」とか「ここが良かったです」といったご意見を頂けるので、新商品の開発時に役立てています。
一方、やはりお店に足を運んでいただくお客様に「来てよかった」と思っていただけるお店づくりを心がけています。小売業は最高のエンターテイメントの1つだと思っています。ウインドウショッピングだけでも楽しめますし、入場料はかかりません。お店にとってもお客様と対話ができて、いろんな出会いが広がります。ぜひお店にも足を運んでいただけるとうれしいです。
―オンラインショップはいかがでしょうか。
近澤 お蔭様で非常に好調で、多いときには一日に数万人のお客様にご覧いただいている日もございます。大勢のお客様と接点が持てる非常に貴重なお店だと感じています。
全体としてギフト需要が6〜7割で、女性のお客様が9割です。
お店がない地域もございますので、オンラインショップでも実店舗と同じようにお買い物を楽しんで頂けるよう、更に力を入れていきたいと思っております。
―今後のビジョンを教えてください。
近澤 「華やかな変化をもたらす」に終わりはなく、常に我々が追い求めることだと思います。時流を捉えながら、普遍的なレースの美しさをお客様にお届けしていきたいと思います。オンラインショップ含め、直営店ではお買い物はもちろん、レースの楽しみ方、使い方、歴史などレースに関するあらゆることを網羅した場所にしていきたいと思っております。まず第一歩として、昨年よりオンラインショップにてコンテンツ記事の配信を開始致しました。皆様に定期的にご来店頂き、「レース浴」してして頂くため、従業員一同邁進して参ります。
―貴重なお話をありがとうございました。
「ポケット付レーストート エタニティ」
カラー:ベージュ、ブラック、ピンク、グリーン、ブラウン
価格:¥1,650(税込)
店名:近沢レース店
お問い合わせ:shop@chikazawa-lace.co.jp
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://chikazawa-lace.co.jp/5201426422/
オンラインショップ:https://chikazawa-lace.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
近澤弘明(株式会社近澤レース店 代表取締役社長)
1949年神奈川県生まれ。1971年慶應義塾大学経済学部卒業後株式会社近澤レース店入社。1978年代表取締役就任。2001年より横濱まちづくり倶楽部理事長としての活動として横浜の活性化に努める。
<文/垣内栄 MC/鯨井綾乃 撮影/坂口明子 画像協力/近澤レース店>