今回編集長アッキーが注目したのは、睡眠スペシャリストの知見を活かした寝具を手掛ける京都の会社。企画から製造まで自社で行うこだわりの詰まった商品をネットショップ「ふとんのふっとんだ」で販売しています。そんな太子織物株式会社代表取締役の田中智巳氏に、寝具にかける想いや商品誕生秘話を伺いました。
使うほどに風合いが増す「6重ガーゼケット」ツラい腰の痛みを軽減する「KUU MATTRES」
2023/06/07
太子織物株式会社 代表取締役の田中智巳氏
―御社の沿革をお聞かせください。
田中 創業から約55年、父の代から始まった会社です。元々は寝具関連の部材屋で、プリント工場さんに染めていただいた自社デザインの生地や、それを縫製したものを布団メーカーさんに販売していました。部材だけでなく完成品も扱うようになったのは90年代後半から。今では完成品のウェイトが断然高く、約7割を占めています。
―商品を企画する上で大切にしていることは?
田中 手触りや使い心地、心の満足度も大切にしたものづくりを心掛けています。弊社は従業員数が11人と小規模なのですが、だからこそイチから企画して自分たちの好きなものが作れます。社員全員が言いたい放題に意見を出し合って形にした試作品を、実際に使ってみて評価を重ねていく。そうやって本当にいいと思えるものを作り上げていくことを基本にしながら、“安さ”と“品質の良さ”を兼ね備えた商品をご提案していきたいと考えています。
「ふとんのふっとんだ」というユニークなショップ名からも、
楽しく風通しの良い社内の雰囲気が伝わってくる。
―社内には睡眠のスペシャリストがいらっしゃるとか。
田中 そうなんです。板垣という社員で、東京のアルミメーカーから転職してきました。入社後に彼が「睡眠環境・寝具指導士®」の資格を取得したことで、どういった寝室環境や寝具・寝装品が快適な睡眠をもたらすかという眠りに関する正しい知識はもちろん、新しく開発された技術の情報もすぐにキャッチすることができています。ほかにも2人、睡眠に関する資格を持つ社員がおりますので、彼ら3人が中心となって新商品の開発を行っています。
「睡眠環境・寝具指導士®」の板垣氏は、日本睡眠環境学会の協力を得て
日本寝具寝装品協会及び日本ふとん協会から資格認定を受ける睡眠のスペシャリスト。
―「6重ガーゼケット」は、どんなところがすぐれているのでしょうか?
田中 湿度のコントロールにすぐれているのが最大のポイントです。寝具を選ぶ際、保温性に関しては皆さん結構重視されると思うのですが、実は湿度も非常に大切なんです。「寝床内環境(掛け布団と敷き布団に囲まれた空間)」の最も睡眠に適した温度は「33℃±1℃以内」、湿度は「50%±5%」と言われています。でも、いま世の中で販売されている寝具の多くはポリエステル素材で吸湿性が非常に悪い。その点、この6重ガーゼケットは吸湿・放湿性の高い綿100%ですので、寝床内環境を最も適切な温度・湿度に保つことができます。
夏場はもちろん、寒い季節にも快適!
布団の下に入れると、ほどよく体にフィットするので
温かな空気の層に包まれながら心地良く眠ることができる。
―ふわりと軽く、肌触りも抜群ですね。
田中 もともとこのガーゼケットは、アトピー性皮膚炎を抱える子を持つ社員の発案から生まれた商品なんです。お医者さんに天然素材が良いと言われていたので、衣服だけでなく寝具も探してみたそうです。でも当時は高価なものしか見つからず、バスタオル等でやりすごしていたとか。そういった経験からアトピーに悩む方や親御さんの助けになれば、という想いから開発が始まりました。
ですので、肌触りや柔らかさ、刺激を与えにくい素材を使用することに一番こだわっています。ひと口にガーゼと言っても、糸の本数や密度、染色の工程などの組み合わせは何万通りにも及びます。その中から理想の肌触りや柔らかさのガーゼを選りすぐりました。生地がでこぼこしているのはウォッシュ加工を施しているから。より一層ふんわりとした風合いに仕上がると同時に、生地に凹凸が生まれることで肌への接触面が減少。汗ばむ季節にもべったりと体にまとわりつく感覚が少ないため、快適にお休みいただけます。
羽毛布団の上に掛けても軽さを損なわず、良好な寝床内環境をキープ。
綿素材なので、静電気も起こりにくい。
―開発を進める中で大変だったことは?
田中 クオリティと価格の両立に非常に苦労しました。本当はすべて国内で作りたかったのですが、それだとどうしても販売価格を高く設定せざるを得ない。それで以前から取引のあった中国で工場探しを始めたのですが、信頼できるところが見つからなくて。工場にサンプルを出してもらっても、まったく違うものが出てきたり、試作のたびにスペックが変わったり、安定したクオリティがなかなか得られなかったんです。
そんな中、現地の人に言われたのは日本のメーカーはオーバースペックな要求が多いということ。均一な生地を求めるとなると、ネップ(糸を紡ぐときにできてしまう不揃いな節)などがある部分は切り落としてしまうんです。そうするとロスがたくさん出るので、当然値段も高くなりますよね。もちろん品質は大事なのですが、過剰な要求をしない――肌触りや機能を損なわない程度のネップは許容するなどして、皆さんに手頃な価格で商品をお届けできるようにしています。
洗濯時はネットに入れて単独洗いを。
素材の吸水性や風合いを損なうため、柔軟剤の使用はNG。
―近日発売の新商品「KUU MATTRES」はどんな寝具なのでしょうか?
田中 腰まわりをホールドすることで、腰への負担が軽減されるよう設計したマットレスです。でも実は、初めは今と異なる仕様で企画していたんです。マットレス内部の除湿ができたり、送風して温度調整ができたりする、いわばエアコンのような“ファン付きマットレス”を情報工学の博士とともに2年ほど研究していました。腰部分を10cmほど分離させ、そこにファンを設置するという構想で。残念ながら、マットレス内に組み込むには体積や回転音が大きすぎて結局断念してしまったのですが。
「く〜」と気持ちよく眠る擬音に由来したネーミングの「KUU」シリーズ。
“快適な人生のための眠りを科学する”をコンセプトにした商品を提案している。
―今の仕様になったきっかけは?
田中 行き詰まった担当者が途方に暮れてゴロンとマットレスに寝転んだとき、ファンが抜けて空いてしまった腰部分に同じ素材のパーツをはめてみたんです。すると自宅のマットレスと比べて、腰への負担がかなり軽減されることに気がつきました。そこで体のコンディショニングの専門家に分析を依頼したところ、立っている状態に近い自然な姿勢が取れる構造になっているということがわかりました。
仰向けでも横向きでも体圧分散を保ちつつ、
快適な寝姿勢をキープできる「KUU MATTRES」。
―形状のほかに、どんな特徴がありますか?
田中 マットレスの硬さもポイントです。人はずっと同じ体勢でいると関節や筋肉など、いろんなところに負荷がかかるので、それを分散させるためひと晩に何度も寝返りを打ちます。ですので “寝返りをうちやすい、ほどよい硬さ”には、初期段階からこだわっていました。
また、腰痛を改善するためには仙骨があたる部分はやわらかく、そのほかの部分はしっかりホールドできる硬さが最適だと言われています。この理論に基づいたマットレスに、専門家の先生も興味を持ってくださって、腰痛に悩む患者さんたちに試してもらう機会を得ることができました。結果として、朝起きたときの腰の痛みが改善された方が多くおられましたので、さらに研究を重ね、現在はその効果を論文として発表する準備を進めているところです。
シリーズ第一弾としてリリースしたのは、頭部を一定の温度に保つ枕「KUU PILLOW」。
冷却ジェルの効果で脳温を下げ、快適な睡眠へと誘ってくれる。
―最後に今後の展望をお聞かせください。
田中 寝具って人に見せるわけではないので、つい機能よりもコストを重視しがちですが、私たちは「寝具は“健康器具”であるべき」だと考えているんです。とくに敷き布団やマットレスの品質や機能は、体のリカバリーに大きく影響します。けれども残念なことに、その機能は永久的に持続するものではありません。長くて1年、はやければ数週間ほどでへたりを感じることも。ですから、寝具を消耗品として捉え、定期的に交換していただけるよう、これからもお求めやすい値段にこだわった商品開発を続けていきたいと思っています。
―本日はありがとうございました!
「シングル6重ガーゼケット」
価格:¥2,979(税込)
店名:ふとんのふっとんだ
電話:075-222-1301(9:00~18:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/futtonda/gazeket/
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/futtonda/
「KUU PILLOW」
価格:¥39,600(税込)
店名:KUU
電話:075-222-1301(9:00~18:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kuu2.jp/products/kuu-pillow
オンラインショップ:https://kuu2.jp/
「KUU MATTRES TOPPER」
価格:¥88,000(税込)
※近日発売予定。こちらは掲載時の価格であり、予告なく変更することがあります。
店名:KUU
電話:075-222-1301(9:00~18:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kuu2.jp/products/kuu-mattress-topper-base
オンラインショップ:https://kuu2.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
田中智巳(太子織物株式会社 代表取締役)
1962年京都市生まれ。立命館大学卒業後、東レ株式会社に入社。7年間勤務後1992年に太子織物に入社。2001年に同社代表取締役に就任。週末はマラソンとピラティスと休息で過ごす。
<文/野村枝里奈 MC/和田英利 画像協力/太子織物>