偽造防止印刷技術が自慢の印刷会社が、自社商品として受験生応援グッズを販売!今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった富沢印刷株式会社 代表取締役社長の富澤隆久氏に、取材陣が伺いました。
家族で受験を乗り越えよう!「ゴーカクケイノート」
2023/08/30
富沢印刷株式会社 代表取締役社長の富澤隆久氏
―創業物語をお聞かせください。
富澤 父と叔父が、21歳と19歳という若さで印刷業を始めました。健康状態のあまり良くない祖父母と、当人たちを含めた4兄弟が食べていくためだったと聞いています。事業らしく体制を整えるのに2~3年かかり、親戚に借金もして、1960年が創業年となりました。
父も叔父も、十分に学業に取り組める家庭環境ではなく、印刷の知識もありませんでした。見様見真似で仕事を覚え、周囲からやり方を盗み、「なんでもやる」「いつも新しいお客さまと新しい仕事を探す」というハングリーな姿勢が基本。「印刷のプロになるな、職人になるな、印刷業にとらわれることなく仕事を広げろ」の精神で、兄弟が力を合わせて事業を拡げました。
伝票や封筒などの事務用品印刷から、総合美術印刷へと成長。現在は、偽造防止印刷技術に強みを見出し、商品券や証明書などのセキュリティ印刷に注力する一方で、デザインや販促グッズの開発、映像制作などにまで広がっています。
セキュリティ印刷を始め
幅広いクリエイティブを担う印刷会社の自社商品とは!?
―印刷外まで業務を広げることができたのは?
富澤 「印刷だけのプロになるな、仕事を広げろ」という創業時からの精神がベースにあると思います。私が社長に就任してからは、特に人材採用、人材育成に力を入れてきました。専門外への挑戦を入社の条件にしたり、男性が多い業界ですが女性を積極的に採用したり。社員の活躍や成長が事業展開を支えてくれたと思います。
―社長のご入社は?
富澤 特に継ぐ予定はなく、機械メーカーに就職してやりがいも感じていました。後継者問題に当たった父と叔父から、面と向かって「手伝ってほしい」と言われ、自分の兄弟や従兄弟たちの状況から、自分が適任だと、家族のために継ぐ幸せを感じました。
2001年の入社後、約10年間は営業職。大手企業・教育機関との取引拡大や、人事採用、社内教育、財務、業務のシステム化も牽引できたかな、と自負しています。
―転機や思い出深いできごとは?
富澤 いろいろなできごとがあったようにも、特段大きなエピソードはなかったようにも思います。コロナ禍は、確かに受注が激減し、1つの困難だったかもしれません。ですが、営業展開を工夫したり、既存商品を生かす方法を考えたりと、社員と一緒にトライアルを繰り返すことが、ある意味楽しかったように思い返しています。
―具体的には?
富澤 仕事がないから何かしようと、社内からアイデアを募ってマスクケースを発売したり、対面営業ができなくなったので、非接触営業に転換すべくWebマーケティングを強化したり。学びや転機のきっかけになりました。
印刷需要の低下や、映像社会のニーズを見越して、スタジオを作ったり映像の担当スタッフを強化したりと、時代の変化に対して柔軟に素早く対応するように心がけています。
―現在の挑戦は?
富澤 受注請負型産業からの脱却です。私の言う「受注請負型産業」とは、お客様の代わりが利かない産業のこと。例えば、A社の会社案内を受注して刷ったはいいが、A社が倒産したからといってB社に転売はできない。これがもう少し汎用性のある商品であれば、別のお客様に販売できるかもしれませんよね。
また、印刷業は、自前の商品がない限り、会社をPRすることができません。この『お取り寄せ手帖』の記事にしても、商品がなければ、印刷会社として紹介してはもらえませんよね。
「こんな商品のある会社に印刷を頼んでみよう」という呼び水にもなり、販売して喜ばれもする商品を開発したいと考えています。
―「ゴーカクケイノート」がその第1号ですね。
富澤 中小企業が、自社の強みを自覚してアピールする展示会がきっかけとなりました。うちの強みは、なんといっても偽造防止印刷技術「ぎぞらーず(R)」。商品券やプレミアム付きクーポン券などのBtoBでない、一般向けの商品を企画することになったのです。
アイデアは出るものの、時代はペーパーレス、本当に使ってもらえるのか?という不安がつきまとい、かなり苦戦をしました。そんな中、斜めに切り込んだところを手作業でリング綴じをする、埼玉の鈴木製本さんの技術と出会ったのです。
開発に携わっていた常務の子どもたちが受験期だったことから、五角形⇒ゴーカクケイ⇒合格祈願という語呂合わせの五角形リングノートが誕生しました。
光沢のある印刷、手作業による丁寧な製本で、
応援する気持ちが伝わる。
―どのような思いが込められていますか?
富澤 私も子どもたちの受験を経験していますが、受験期は家庭内がギスギスすることが多く、頑張っている子どもに「頑張ろう」と追い打ちをかけてしまったり、兄弟を犠牲にしたり、とかく歯車が狂いがちですよね。そんな中、受験生を応援する家族の気持ちを表すのに使ってほしいと思います。
言ってみれば「家族愛」がテーマ。頑張るわが子を応援する気持ち、もどかしさ、代わってやれない歯がゆさ……そういう気持ちを、大げさでない気楽な贈り物に替えていただけたらいいかな、と。
中はそれぞれだるまの顔と、絵馬の木目。
志望校へ「GO!」の願いも込められている。
―具体的な使い方は?
富澤 基本的には自由です。応援する人からのメッセージを書いたり、受験生が暗記ノート代わりに使えるようにプレゼントしたり。縁起物であるだるまをキャラクターにしていますから、願掛けやお守り代わりにもなります。気負いがちな受験期、かわいいキャラクターに勇気づけられて、学業を頑張れたり、気持ちを和らげることに貢献できたりしたら嬉しいですね。
光沢のある印刷、手作業による丁寧な製本で、
応援する気持ちが伝わる。
―今後の展望は?
富澤 現状、ゴーカクケイノートのデザインは、赤、緑、白と3色のだるまと絵馬、それぞれ大小あります。今後は、ノートとコンビネーションが組めるような、例えばペンなどとのセット商品を考えています。
企画チームは、だるまをキャラクター化してグッズ展開することも目論んでいるようです。「受験」というフィールドは、堅実さなどの点で、富沢印刷の社風や「ぎぞらーず(R)」の考え方に合っていると思います。そのフィールドで、キラリと光る商品を生み出したいですね。
富沢印刷としても、脱請負型産業、バラエティ豊かな自社商品の開発を、気負わず進めていくつもりです。
―困難を転機ととらえ、ジャンルを超えた挑戦を社長自らが成し遂げる、その求心力が社員を育て新商品が生まれる……そんな期待が高まる素晴らしいお話をありがとうございました!
「ゴーカクケイノート 絵馬→ダルマ→おかげさまセット」
価格:¥880(税込)
店名:トミ~ズざわざわショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://tommyzawazawa.stores.jp/items/6376fec4d7e1d841eb510223
オンラインショップ:https://tommyzawazawa.stores.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
富澤隆久(富沢印刷株式会社 代表取締役社長)
1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、川崎重工業株式会社に入社。神戸インスティチュート(研究所)への国内留学、ヨーロッパ企業との合弁事業や営業展開への従事を経て、約10年後の2001年に富沢印刷へ入社。2011年に同社代表取締役社長に就任。2022年から本格的にゴーカクケイノートの販売に着手。自社商品の開発・販売をきっかけとして、これまで受注請負型だった印刷業の変革に奮闘中。
<文・撮影/植松由紀子 MC/吉田茉代 画像協力/富沢印刷>