今回、編集長アッキーが気になったのは、福井県小浜市で大正期から続く漆塗り箸メーカーの「兵左衛門」。株式会社兵左衛門・代表取締役の浦谷剛人氏に、商品の人気の理由を取材陣がうかがいました。
もらってうれしい老舗の塗り箸 折れたバットで作られた「かっとばし‼」、 かわいい桐箱と箸、箸置きの組み合わせ 「HAPPY WEDDING」
2023/09/14
「お箸は食べ物です」をポリシーに安全・安心なお箸を作り続けています。
―創業の経緯を教えてください。
浦谷 大正10年(1921)創業で僕が3代目です。うちは代々、福井・若狭で漁師をやっていましたが、祖父は船酔いがひどかったので、漆塗りの職人になったのが始まりです。手作りにこだわって、漆にこだわって、時流に乗ってここまでやってこれました。祖父は真面目にお箸のモノづくりを行い、父は丁稚奉公をして東京、大阪、名古屋の問屋さんとの人脈を広げ、問屋さんに対しての商売をすることで会社の規模が大きくなりました。僕の代になると、今度は問屋さんとお付き合いをゼロにして、百貨店さんと直接商売をするようになりました。時代が変わって、問屋さんを通した仕事では共倒れになると考えたんです。そのことで問屋さんに恨まれたり、社員が辞めたりしましたが、生き残っていくためには正しい決断でした。
箸先は天然漆仕上げ。
―2002年に「かっとばし‼」事業がスタートし、大ヒットとなります。
浦谷 プロ野球で折れたバットを使って作ったお箸が「かっとばし‼」です。お箸の発売日に、百貨店に開店前から人が並ぶという光景を初めて見て、すごいインパクトがありました。「かっとばし‼」を作ろうと思ったのは、新聞記事が発端です。プロ野球選手のバットはアオダモという良質な木で作られていましたが、育つまでに70~80年かかるため、今は外国のメイプルやアッシュが使われることが多く、アオダモの保護育成が課題であると書いてありました。一方で折れたバットは捨てていると聞き、折れたバットからお箸を作り、売上金の一部をアオダモの植樹・育成に役立てられないかと考えました。NPB(日本野球機構)にかけあって、折れたバットを回収し、12球団の承認をもらって、お箸を作ることができました。発売してみると、イベントの初日には売り切れてしまうということが何回か続き、「かっとばし‼」の販売は当社の知名度アップにもなりました。
12球団のロゴが選べます。
―「かっとばし‼」の製作で困難なことはございましたか。
浦谷 技術的に難しいことはなかったのですが、球団のロゴが結構変わるので、それに細かく対応するのが大変だったりします。1本の折れたバットからは、5~6膳のお箸が作れ、それを職人の手仕事で行うので、大量生産できるものではありません。
持ち手はユニークなバットの形をしています。
―やはりそれぞれの球団のファンの方が購入されるのでしょうか。
浦谷 そうですね。球場や百貨店などでも販売しています。球団名が書いてない箸も販売していて、こちらは、野球に興味がなくても、考え方に賛同する人が買ってくださいます。また、店名や社名、オリジナルロゴを入れることもできますので、たとえば高校野球が好きな人ばかりが集まる飲み屋さんからの受注などもあります。
―新しいことにもチャレンジしながら、大切に受け継がれている理念はございますか。
浦谷 箸先は食事中に噛まれて、その塗料が体内に入るという前提でモノ作りを考えたとき、口に入る部分には自然塗料である漆だけ使うということにはこだわっています。漆の樹液を精製して、塗料にするまでの設備もうちにはあります。また、福井県小浜市の会社では珍しく、浅草や渋谷に店舗を構えてお客様に直接販売しています。漆の精製から小売りまで、1社で一貫して、モノ作りから流通までできるのは、当社の強みだと思います。
―お箸知育教室、「はしながおじさん」など、お箸の文化を広める活動も行われています。
浦谷 お箸は万能な道具ですが、正しく使った方がより万能に近くなります。しっかり使えない子どもに対してもちゃんと持てるように指導し、脳と手の発達を促し、お箸を使う文化がなくならないよう伝えていきたいと考えています。はしながおじさんは、対象商品をご購入いただくと、全国の児童養護施設の子供たちにお箸を一膳プレゼントできるプロジェクトです。児童養護施設には全国で3万人の子どもがいますが、これは僕が生まれ育った福井県小浜市の全人口なんです。お箸を通して健やかに生活ができることを願って始めましたが、子どもたちが感謝の手紙を送ってくれますし、やってよかったと思っています。
「HAPPY WEDDING」は桐箱のフタのデザインも豊富です。
―結婚祝いの「HAPPY WEDDING」も人気商品ですね。
浦谷 夫婦箸が入っている結婚祝い用の商品はもともとありましたが、無地の桐箱で中の台紙も無地でした。しかし、桐箱にかわいい文字とイラストをプリントし、中の台紙にもメッセージを入れて「HAPPY WEDDING」として売り出したところ、売上が伸びました。桐箱と箸と箸置きをそれぞれ好きなものを組み合わせてお選びいただくことができます。2016年から販売し、オンラインショップだけで、約6500セットが売れました。箸置きも、陶器や木、シェルなど素材やデザインが豊富です。
白木地に和紙を巻き付けた柔らかな風合いのお箸に木のお箸置き。
―お客様からの反響はいかがでしょうか。
浦谷 ほぼギフトでのご購入ですが、若い方が身近に感じるデザインで喜ばれています。
染めの木地に桜のモチーフが美しい一膳。箸置きは尾にデザインをあしらった愛らしい小鳥。
―お箸の形でこだわられているところはございますか。
浦谷 木工の技術を持ってる箸メーカーは我々だけで、塗りだけのアイディアじゃなくて、持ちやすい形状、重さを常に実現できます。木材によっては細すぎると湿気の影響で曲がったりするため、木材、季節、何を塗るか、何回塗るかを考慮して、太さや長さを決めています。
―耐久性はいかがでしょうか。
浦谷 漆自体が強い塗料ではないので、大切に使ってくださいというのが大前提ではありますが、私どもの漆塗りの商品は、多少傷がついたり、色が落ちてきても、その上から塗り直しができます。ずっと使っているお箸に愛着を持たれている方も多く、新しいお箸を買いなおすのではなく、塗り直しの希望も結構あるのです。無料キャンペーンの商品以外は、費用は1000円~で、1カ月くらい預かって塗り直しをします。お箸がお孫さんや子どもたちからのプレゼントで、思い入れがあるといった方もいらっしゃいます。月間で100膳くらい郵送されてきます。これは化学塗料では難しい漆塗りならではのサービスです。
―最後に今後のビジョンや展望をお聞かせください。
浦谷 福井県小浜市からの塗り箸の出荷量は、全国で90%以上を占めます。そのうち当社の出荷量はシェアでいうと1%前後で、これを2%にしたいと考えています。そのためには、今、使ってもらってない人に使ってもらえるよう努力をする必要があり、魅力のある商品を作り続けなければいけません。また、はしながおじさんのプロジェクトのように、塗り箸メーカーでも社会貢献ができることをまた違う形で示すことができればと思います。
―貴重なお話をありがとうございました。
「かっとばし!!ロゴ」
価格:¥1,980(税込) 23.5cm、21.5cm、¥1,650(税込) 18.0cm
店名:兵左衛門
電話:0120₋194₋846(9:00~17:00 土日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hyozaemon.shop/?pid=116308330
オンラインショップ:https://hyozaemon.shop/
「HAPPY WEDDING 「hanataballoon」(食洗機対応ちぎり雲)」
価格:¥7,370(税込)
店名:兵左衛門
電話:0120₋194₋846(9:00~17:00 土日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hyozaemon.shop/?pid=169356285
オンラインショップ:https://hyozaemon.shop/
「HAPPY WEDDING(はじまりの予感/箸置きピジョン年輪・わか葉)」
価格:¥8,470(税込)
店名:兵左衛門
電話:0120₋194₋846(9:00~17:00 土日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hyozaemon.shop/?pid=160646444
オンラインショップ:https://hyozaemon.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
浦谷剛人(株式会社兵左衛門代表取締役社長)
1971年生まれ。1996年、株式会社兵左衛門入社。2009年、代表取締役社長就任。
<文・MC/垣内栄 撮影/坂口明子 画像協力/兵左衛門>