今回、編集長アッキーが気になったのは、設立132年を迎える総合園芸会社の横浜植木株式会社。同社の代表取締役社長・伊藤智司氏に、種のないピーマン「タネなっぴー」やロングセラー商品「アリメツ」などの商品の魅力について取材陣がうかがいました。
世界初の種なしピーマン「タネなっぴー」を開発 90年以上のロングセラーアリ駆除の「アリメツ」も人気
2023/12/18
横浜植木株式会社 代表取締役社長の伊藤智司氏
―伊藤社長は子供の頃どんなことに興味を持って育ってこられましたでしょうか。
伊藤 小さい頃はおとなしい目立たない子でしたが、疑問を持つと「なんで?どうして?」と親や周りの大人にしつこく聞いていたので、うるさがられていました。機械の構造に興味があり、色々の物を分解しました。そして、父親のカメラを2台壊してしまい怒られた事もありました。
機械や電気が好きだったので、工業高校に行きたかったのですが、実家が農家だったことから農業高校から東京農業大学に進学しました。そこで生物の遺伝子に興味を持ち、遺伝育種学の研究室に入り、ひたすら研究をしていました。
当社に入社したのは、野菜の品種改良の研究ができることと、実家の近くに横浜植木の研究所があったからです。
「アリメツ」は単品と専用容器付きがある。
―入社されてからはどういった業務に携わってこられましたか。
伊藤 入社後、品種開発を行っている研究農場へ配属となり、メロンの担当となりました。当時は高級で一般人では、なかなか買えないマスクメロン(アールスメロン)の品種開発に取り組みました。マスクメロンは、栽培が難しく小規模でしか栽培できず、超高級フルーツでした。それを栽培が容易で大規模生産できる品種を開発した事で、現在では誰でも買える価格になりました。
次に当時は珍しかった赤肉メロンの開発を行いました。当時の赤肉メロンは、臭みが強く糖度が低く日持ちしない事から普及していませんでした。それを、高糖度で日持ちするように改良した事で、機能性の高さも相まって瞬く間に普及しました。「クインシーメロン」は30年以上たった今でもスーパーで売られています。メロン以外には、ピーマン・パプリカ・ダイコンなどの開発も行ってきました。
―2019年に社長に就任されて社内で改革されたことはございますか。
伊藤 我々の業界も時代と共に変化しています。その時代・そして次の時代を見た事業を考えています。もちろん、守る事業も沢山有ります。まずは、採算が取りにくい、リスクが高い事業の見直しを行いました。そして、部門の統合などにより合理化を進めました。次に行う事は、将来を見た新しい事業です。そのためにも、視野を広げ柔軟的に改革する事と、技術力を上げて行く事が絶対必要になります。
―130年の歴史がありますが、創業時から引き継がれているモットーはございますか。
伊藤 もともとは日本人商社として初めて植物の輸出入を行い、日本の園芸や農業を牽引してきた会社です。しかし戦後は貿易事業の縮小が余儀なくされ、厳しい時代が続きましたが、今では自社オリジナル品種の開発により事業が軌道に乗るようになりました。「時代の先取りと創造性の発揮」を企業理念としています。
また、地球温暖化により世界中の農作物の不作が大きな問題となっています。そのような中、日本の農業は後継者不足により、食料自給率の低さが大きな問題となっています。人間が生きて行く上で絶対必要な食糧を守るためにも、日本農業にお手伝いできる事業も積極的に考えて行きたいと考えています。
―今回ご紹介させていただく「タネなっぴー」の開発の経緯を教えてください。
伊藤 「タネなっぴー」はタネが入っていないピーマンです。ほとんどの方はピーマンを切った時に驚きます。ピーマンは苦味があり子供から嫌われる野菜の1つです。しかし、多くのビタミンを含む機能性野菜の1つです。このピーマンをピーマン嫌いな多くの方々に食べて貰いたいと思い開発しました。
1996年ピーマンを栽培中に花粉が無く果実がほとんど着いていない株を見つけました。果実は歪で小さく商品とは程遠い物でしたが、割ってみると種が1粒も無く驚きました。それが、種無しピーマンを開発するきっかけになりました。そして、味や食感を考え、苦味を減らし肉厚に改良してきました。
育てやすく、着果が良くたくさん収穫できます。
―「タネなっぴー」はどんな料理が、適していますか。
伊藤 肉厚でジューシーなので生でも食べていただけます。種がないのでヘタ部分を切り落とすだけで、肉などの具材を中に注入することができ、レンジでチンして、輪切りにして食べるなど、手軽に料理できます。
育て方のコツは裏面に書いてあります。
―「アリメツ」はどういった商品でしょうか。
伊藤 90年以上の歴史がある商品で、もともとほかの会社が販売していたのを当社が買い取ったのが始まりです。アリを全滅させるので「アリメツ」という名前がついています。アリは集団生活を行っているので、殺虫剤で駆除しても巣を全滅させることが難しい。アリの生活状態と習性を長年研究した結果生まれた殺蟻剤が「アリメツ」なのです。一匹のアリがアリメツを発見すると、仲間を呼んでアリメツを吸食し、餌として巣の中に運ばれ貯蔵します。そして女王アリをはじめとする巣全体のアリが食べる事により、巣の仲間を全滅させることができるのです。
容器に10数滴入れておくだけ。
糖蜜とホウ酸で耐性がつきにくい、警戒されにくいのも特徴。
―長年愛される理由はどこにあると思われますか。
伊藤 広告を打たなくても、効果を実感されたお客様の生の声が投稿されることで、根強いファンを作ってきました。人畜無害なのでお子さんがいるご家庭でも安心して使っていただけるのも商品の魅力です。
―今後の展望をお聞かせください。
伊藤 「夢を植える。未来を育む。Well future together」が当社のビジョンです。ハイテクノロジーを用いた独創的な品種開発に力を入れ、高品質な商品の提供を通じて、国内はもとより世界中の人々に笑顔を届ける企業を目指して行きたいと考えています。
利益の追求だけではなく、社会貢献にも力を入れており、学校での食育や清掃活動なども行っています。日本だけでなく、海外にも貢献できるような事業を今後展開していきたいと考えております。
造園事業にも力をいれております。地球温暖化の防止のために二酸化炭素を減らすことが課題となっていますが、二酸化炭素を吸収し、酸素に変換してくれるのが植物です。植物は地球上で重要な役割を担っていますが、森林伐採などにより、地球の緑は年々減少しています。造園を積極的に行うことで、地球環境にも貢献していきたいと考えています。
―貴重なお話をありがとうございました。
「ベイファーム タネなっぴー タネなしピーマン 5粒」
価格:¥550(税込)
店名:横浜植木
電話:045-262-7413(平日 月曜日~金曜日 9:00~12:00/13:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://yokohamaueki-shop.jp/products/detail/135
オンラインショップ:https://yokohamaueki-shop.jp/
「アリメツ」
価格:¥770(税込)専用容器付き ¥990(税込)
店名:横浜植木
電話:045-262-7413(平日 月曜日~金曜日 9:00~12:00/13:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://yokohamaueki-shop.jp/topics/arimetsu
オンラインショップ:https://yokohamaueki-shop.jp/
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変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
伊藤智司(横浜植木株式会社 代表取締役社長)
1958年静岡県生まれ。1981年に横浜植木株式会社へ入社後、種子ブリーダーとなり看板商品であるクインシーメロンを開発。2019年5月に代表取締役社長に就任。世界初の種無しピーマン「タネなっぴー」の開発により2021年11月に農林水産研究開発功績者の表彰を受賞する。
<文/垣内栄 MC/菊地美咲 撮影/坂口明子 画像提供/横浜植木>