神社仏閣巡りを楽しむ方の相棒と言えば、御朱印帳。近年は、さまざまなデザインのものが登場し、自分らしい1冊を手にすることができるようになりました。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、なんと、掘りを施した木材を、表紙や裏表紙に採用した御朱印帳。「ハンドメイドショップmoku×moku」で販売されているこちら、誕生のきっかけは?「moku×moku」を運営する印刷会社「株式会社栄光」の代表取締役社長、岡田一氏にお話を伺いました。
木に繊細な抜き柄を施した 飾りたくなる御朱印帳
2024/01/05
株式会社栄光 代表取締役社長の岡田一氏。
―御社の沿革についてお伺いできますでしょうか?
岡田 弊社は、もともと小さな印刷会社でしたが、35年ほど前より漫画同人誌の印刷を始めたことにより成長してまいりました。当時は50部や100部といった単位の、しかも個人の本の印刷を受ける会社はほぼありませんでしたが、弊社ではそういう仕事もありがたいと、受け始めたのです。
そうしたところ、コミックマーケットの成長・発展とともに、関連イベントがどんどん開催されるようになり、弊社にはさまざまな仕事が発生するようになりました。現在は、同人誌だけで年間約12億円の売り上げがあります。また同人誌だけでなく、KADOKAWA様や竹書房様などの販促用の本なども印刷させていただいています。
―同人誌を作っている方にとっては貴重な存在だったのでしょうね。
岡田 実は私自身、大学を卒業して1年ほど、プロの漫画家として活動していたことがあるのです、なので作り手の気持ちもわかりますし、そこに印刷の経験を活かせたことが今に繋がっていると思います。
ちなみに去年は「吾輩は漫画家の端くれである」という自身の本を、コミックマーケットでも販売させていただきました(笑)。
岡田社長の40年ぶりとなる著書「吾輩は漫画家の端くれである」も、「ハンドメイドショップmoku×moku」にて販売中。
中には岡田社長による4コマ漫画も!
―ユニークな経歴をお持ちなのですね!ちなみに社長は会社の何代目でいらっしゃるのですか?
岡田 2代目ですが、先代と血縁関係はありません。私は社会人になり、まずは100億円規模の印刷会社に入ったのですが、そのお取引先が栄光印刷でした。間違いなく利益が出ている会社だったのですが、跡継ぎがおらず、M&Aをすることになったのです。その際、後継者としてキーになる人間が必要だということで、私がスカウトされ、転職することになりました。50歳の時です。
―いきなり経営者の立場になられたわけですね。
岡田 転職して2年くらいしてM&Aが成立し、社長になりました。ただずっと業績は順調でしたので、私の業務は執行役員的といいますか、自由にやらせていただいて、運よく全部いい方に転がり、今日に至っています。
広島県福山市に本社を置く「株式会社栄光」。
―今回ご紹介いただく「御朱印帳」は、どのような経緯で誕生したのですか?
岡田 7年ほど前に遡りますが、同人誌印刷の受注だけだとやはり不安定だということで、アクリルキーホルダーやアクリルスタンドといったグッズ類の開発をしていこうということになりました。そこでレーザーカッターとUVインクジェットのプリンターを導入します。ただ忙しくてあまり取り組めない状況が続いていました。ところが、コロナ期に入ったことが弊社には不幸中の幸いで、時間ができ、さまざまなグッズ制作に取り組めるようになりました。
―どんな商品を作られたのですか?
岡田 最初に作ったのは、木を使って加工した「はにわ」がモチーフのアイテムでした。なぜ木なのかというと、アクリルスタンドやアクリルキーホルダーは、既に何十社という会社が作っており、後発で始めるなら木製がいいだろうということになりました。まずはサンプルを作り、展示に持って行き、披露する。そこで売って欲しいという依頼をいただくことができまして、色々な木製商品を手掛けるようになり、御朱印帳へとつながって行きます。
木製製品の礎となったはにわシリーズの作品。現在も販売中。
―御社の御朱印手帳の特徴は?
岡田 やはりこの抜き柄です。ただ印刷をするだけでなく、印刷と抜きを組み合わせました。また木だけだと地味かな?と思い、下地に色の入った素材を合わせたところもポイントです。御朱印帳は、紙の表紙のものは世にたくさん出回っていると思いますが、弊社のものは木製で、より特別感を抱いていただけると思います。
木材に抜き柄を施した表紙。下地には柄の入った紙が添えてある。
岡田 中面は24折48面となっており、厚みがあって裏写りしにくい奉書紙を使用しています。約3,000円とちょっと価格はしますが、ありがたいことにご好評をいただいています。
48カ所の御朱印をぜひ集めたい。
左が「御朱印帳 リーフフォックス」、右が「御朱印帳 シマエナガ」。
―柄が素敵で、家で飾っておきたくなります。
岡田 と思いまして、飾るためのスタンドも販売しています(笑)。
―「御朱印帳 リーフフォックス」は、キツネがモチーフなのですね。
岡田 キツネは神社にご縁のあるモチーフですよね。優しい浅葱色の紙と合わせて上品さを出したおかげで、一番売れています。銀座のお土産店様などからも、「海外の方向けに販売したい」と仕入れていただいているようです。
―もう1つは「御朱印帳 シマエナガ」。「シマエナガ」とは?
岡田 白くてモフモフした鳥の名前で、御朱印帳を開発していた頃、弊社の女性社員が、「今、『シマエナガ』がバズっているので作りましょう!」というのです。私はシマエナガのことを知らなかったのですが、見てみるとかわいい。じゃあ作ろうと。そして商品ができまして、次に30万人ぐらいのフォロワーを持つシマエナガのインフルエンサーの方に案内をしたところ、こちらも見事にバズりました。今ではシマエナガを、弊社のさまざまな商品に採用しています。
―普段から会議などで社員の方の意見を取り込み、商品化されているのですか?
岡田 会議というより雑談ですね。私は1日に1回は会社を回って、現場で今どんなものが印刷されているかなどを見ているのですが、その中で、社員とも積極的にコミュニケーションを取っています。
―デザインはどなたが担当なさっているのですか?
岡田 優秀なデザイナーが1名おりまして、元々はチラシや商業印刷のグラフィックデザイナーなのですが、見事に工業デザイン的な処理も含めて上手にやってくれています。今後はあと3名くらいデザイナーを育てて、もっと幅広く商品が開発できたらと思っています。
―御朱印帳に対する、お客様からの反応はいかがですか?
岡田 喜んでいただいているようです。弊社は、ANA様と穴守稲荷神社様がタイアップした御朱印帳の製造も担当させていただています。それを偶然手にした方が、「あの、同人誌印刷で有名な栄光が、こんなアイテムまで手掛けているとは!」と喜んでくださった、という話も耳にしたこともあります。ANA様に関しては、初日の出フライトの記念品であるノートも弊社が作っているのですよ。
―色々なことを手掛けられているのですね。
岡田 そうですね。もともと商品作りの実績を作っていこうと動いていた時に、最初にOKをいただけたのはサッカーチームのサンフレッチェ広島様で、木製スマホスタンドや木製タブレットスタンドの制作を担当させていただいたのですが、そこからいろんな企業様からご依頼をいただくようになりました。
ちなみに商品作りを模索していた頃は、ネイルチップの印刷などにも挑戦しました。とても手間がかかるので今はストップしていますが…(笑)。その後は、アクリルスタンドなどを入れておく「推しボックス」や、小さなぬいぐるみをディスプレイできる「ぬいハウス」「ぬい部屋」といったアイテムも弊社の代表商品となりました。
「推しボックス」は種類も豊富。こちらは「遊郭M」。
リアルさが好評の「ぬい部屋」シリーズより「ぬい部屋BIG 和室」。
岡田 実績を作ると、相談が入ってきます。今年の秋には、愛知県の徳川美術館様からのご依頼で、「徳川美術館 ドールハウス」の企画・製造に携わらせていただきました。11月3日から開催された『アニメイトガールズフェスティバル(AGF)』のマルイノアニメ× #とくびぐみ ブースで販売したのですが、やや高額な商品ながら売れ行きは好調のようです。こちらのドールハウス、組み立てが複雑そうに見えますが、差し込むだけで簡単であるところもポイントです。
―幅広いですね。では最後に、今後の展望についても伺えますでしょうか?
岡田 現在は、弊社の「ハンドメイドショップmoku×moku」だけでなく、楽天市場やAmazonなど、ありがたいことに販売ルートも増えてきましたので、商品数をもっと増やしていきたいですね。御朱印帳も、今はまだ20種類くらいなのですが、100種類ぐらいまでは増やしたいです。と同時に、企業様のOEM事業も、より拡大していけたらと思っています。
―御朱印帳を手に取ってみますと、繊細な抜き柄が本当に美しく、神社仏閣巡りをどんどん楽しんでみようという気持ちになりました。岡田社長が漫画家時代に手掛けられていたという4コマ漫画にも興味津々です。この度はお話をありがとうございました!
「御朱印帳 シマエナガ」(ヨコ120mm×タテ180mm×厚さ12mm)
価格:¥2,750(税込)
店名:ハンドメイドショップmoku×moku
電話:問い合わせはHPのフォームより24時間365日受付
定休日:土曜・日曜、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://moku-moku.shop/?pid=171398169
オンラインショップ:https://moku-moku.shop
「御朱印帳 リーフフォックス」(ヨコ120mm×タテ180mm×厚さ12mm)
価格:¥2,750(税込)
店名:ハンドメイドショップmoku×moku
電話:問い合わせはHPのフォームより24時間365日受付
定休日:土曜・日曜、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://moku-moku.shop/?pid=173272008
オンラインショップ:https://moku-moku.shop
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
岡田一(株式会社栄光 代表取締役社長)
1958年、広島県生まれ。駒沢大学を卒業後、2つの印刷会社で経験を積み、2009年に株式会社栄光へ入社。2015年に同社代表取締役社長に就任。2019年、自社オリジナル商品販売のために「ハンドメイドショップmoku×moku」を立ち上げる。
なお、大学時代は漫画倶楽部に所属。在学中に大学OBの巨人軍・中畑選手(元DeNA監督)が活躍したことから、「中畑くん」を主人公とした四コマの原稿依頼が漫研に舞い込む。読み切り単行本の原稿を執筆し、それが認められ竹書房からプロ漫画家としてデビュー。大学在学中の1978年には同人誌も創刊。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/橋本小波 画像協力/株式会社栄光>