使うたびに心躍る、素敵なお弁当箱を探し求めていた編集長アッキー。ついに京都で出合ったのは、幾重にも重なる竹の模様が美しい一品。創業以来120年以上にわたり、竹製品一筋にものづくりを続けてきた公長斎小菅の「一段弁当箱」です。伝統を大切にしながらも、現代のライフスタイルにしっくりなじむ製品作りに取り組む5代目小菅達之氏に誕生秘話を伺ってきました。
いつものお弁当がいっそう映える!竹の模様が美しい「一段弁当箱」
2024/01/26
株式会社公長斎小菅 代表取締役社長の小菅達之氏
―小菅社長は商社勤めを経て、家業に入られたそうですね。
小菅 大学を卒業後、大阪の繊維商社に就職したのが2003年。公長斎小菅に入社したのは2005年です。今は伝統産業や手仕事の価値が見直されてきていますが、当時はそういった評価をいただける機会が少なく、会社も苦境に立たされていて。ここで終わらせてはいけないという使命感から入社を決心しました。
1898年創業の老舗竹芸品メーカー。
暮らしの道具を中心に、伝統と現代的なセンスが融合した
美しくも使い勝手のよい商品を生み出している。
―逆境の時代ということもあり、ご苦労も多かったのでは?
小菅 その頃は、かなり向かい風が強かったです。時代にあったアプローチで竹の魅力を伝えていこうと、営業に出てライフスタイルショップなど色々なところを回っても、デフレの真っ只中ということもあり「手仕事のものは高い」「伝統産業の製品は合わない」と取り合ってもらえなくて。当時は竹の花籠や茶道具の扱いが多く、老舗の古いイメージもあったのだと思います。
―今では看板商品「一段弁当箱」が評判を呼んでいますね。
小菅 20代半ばで入社してから「自分と近い世代の人に公長斎小菅の商品をもっと知ってもらうためには、どういうものを企画したらいいのだろう」というのはずっと考え続けてきました。でも今、このお弁当箱が一つの媒体となって、これまで縁遠い存在だった30代、40代の人にも広く知られるようになってきたことを実感しています。
すっきりシンプルなデザインながらも存在感バツグン!
大きすぎず、小さすぎないサイズ感も◎。
―商品誕生のきっかけは?
小菅 これは竹の板を箱形に組み立てて作っているのですが、竹は中が空洞になっていますので割っただけでは厚みのある板状の材料にはならないんですよ。では何を材料に作っているのかというと、割った竹を重ね合わせた集成材です。これは比較的新しい技術で、集成材が使えるようになったことで商品の幅がグッと広がりました。この集成材をいかした商品を考案していくなかで生まれたものの一つが「一段弁当箱」です。
―人気に火が付いた理由は何だとお考えでしょうか?
小菅 もともと弊社は、取引先から毎年新商品を求められ、それに応えるというサイクルを繰り返していました。そのため、一つひとつの商品の良さを追求して、地道に継続的して発信することがあまりできていませんでした。それをECショップ担当の社員が変えてくれたおかげだと考えています。お弁当箱に限らずですが、あれこれ考えながら見出した商品価値を地道に発信し続けてくれたからこそ、多くの方のご支持をいただけているのだと思います。このことは私自身にとっても大きな学びとなりました。実は「ものをよく見なさい」というのがうちの代々の教えなのですが、ものをよく見て魅力を追求することの大切さを改めて感じました。
竹の艶やかな色合いと節が作り出す濃淡の柄が美しい。
―「一段弁当箱」のどんなところに注目してもらいたいですか?
小菅 このお弁当箱は角型で、縁にほどよい厚みがあります。それがフレームのように、中に詰めたおかずを引き立てて、よりおいしそうに見せてくれるのです。
お弁当箱って、使っているうちに使い手それぞれのストーリーが生まれていくものだと思うんですよ。子どもとの思い出だったり、家族で出かけた思い出だったり。でも、毎日のお弁当作りが負担になってしまうこともありますよね。だからこそ、うちのお弁当箱を使うことで少しでも楽しい時間にしてもらえたらなと思っています。
根竹(竹の根の部分)の飾りが可愛いバンドと取り外しできる仕切り板付き。
ウレタン塗装が施されているので、お手入れも簡単。
―ものづくりを続けていく上で、今後も大切にしたいことは?
小菅 代々大切にしてきたのは「竹の可能性を追求し、価値を高めていくこと」です。我々は、自社で生産設備は持たず、昔からお付き合いしている職人さんと共にものづくりをしてきました。いわばプロデューサーのような立ち位置ですね。でも今、竹製品に携わる職人さんはどんどん少なくなり、竹産業は厳しい状況となってきています。価値を高めようにも、そこが成り立たないと何もできませんので、我々のような企業が事業の更なる発展を目指すことが何より大事だと思っています。今後も人の生活が豊かになるような製品を企画し、販売することで竹産業の発展に寄与したいと考えています。
オンラインショップにはテーブルウェアを中心に、
熟達した職人技で産み出された製品が並ぶ。
―最後に、今後の展望を教えてください。
小菅 竹でできた道具の良さを、もっともっと発信していきたいと考えています。たとえば、竹の特性を最大限にいかした道具の一つに「お箸」があります。“しなり”があることで口当たりがよくなりますし、器に箸先が当たったときの跳ね返りもやわらかくなります。繊維一本一本に粘りがあるので、細く削っても折れにくいのも利点です。軽量な素材なので箸先と持ち手の重量比がそれほど変わらないため持ち心地が良いなど、竹は箸の素材として大変理にかなっています。でも、竹箸が使いやすいということは、意外と知られていません。その一方で、ものづくりの材料としては、非常に扱いづらい素材で。硬くて削りにくく、真っ直ぐなようで真っ直ぐでなく、シミも多くてロスもたくさん出ます。それでも私たちや職人さんが、日々粘り強く向きあい続けているのは、この素材ならではの良さをより多くの方に知ってもらいたいという信念を持っているからです。もっと多くの方に竹製品の魅力を知ってもらうことで竹産業を盛り上げ、いずれは竹を使ったものづくりをする人が増えていくといいなと思います。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
「一段弁当箱」
(バンド色:ナチュラル/レッド/ブラック)
価格:¥7,700(税込)
店名:公長斎小菅 楽天市場店
定休日:土曜日・日曜日・祝日・GW・お盆・年末年始
インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/kohchosai/17010/
オンラインショップ:https://www.rakuten.ne.jp/gold/kohchosai/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小菅達之(株式会社公長斎小菅 代表取締役社長)
1981年京都生まれ。大学卒業後、大阪の繊維専門商社に入社。2005年に株式会社公長斎小菅に入社し、国内外の営業や商品企画等、幅広く活動し、2011年には直営店「京都本店」をプロデュース、2021年同社代表取締役社長に就任。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/髙橋美羽 画像協力/公長斎小菅>