家の中で神さまに家内安全や商売繁盛などをお祈りするために設置する神棚。静岡木工では、現代の洋住宅やマンションの暮らしの中でも、神さまへのお祀りがもっと身近になる「モダン神棚」を提案しています。2016年度・2018年度にはグッドデザイン賞を受賞。今回編集長アッキーこと坂口明子が注目した有限会社 静岡木工 代表取締役杉本かづ行氏に、取材陣が伺いました。
上品でシンプル。空間に溶け込む神棚「かみさまのたな S」「かみさまの線 SANSHA NF」
2024/02/19
有限会社 静岡木工 代表取締役の杉本かづ行氏
―創業当初から神棚が専門だったのでしょうか?
杉本 いいえ。もともと船大工であった初代が、その技術を活かして1961年に前身の杉本木工を立ち上げたのが始まりです。創業当初は、オルゴールや台所用品などの小さな木工品の依頼から始まりましたが、どんどん依頼の種類が多岐に渡っていき、神棚の依頼も入るようになりました。神棚としては、約40年以上の歴史がある木工所です。
―入社された当時は、どのような業務をされていましたか?
杉本 入社当時は、ホームセンターへの卸売事業が主流だったため、営業職を担当していました。当時取り扱っている商品は、神棚50%・木製品50%の割合。しかし当時は、同じような商品を取り扱っている競合他社が多かったため、商品の売り場を取り合うかのように、厳しい価格競争が行われている状態でした。私自身、当時の仕事に対しては、やりがいや誇りを感じられなかったのが正直な思いです。
静岡県にある有限会社 静岡木工の本社社屋。
―そのような思いからの転換されたのですね。
杉本 そうです。卸売業からの転換のきっかけは、インターネット販売事業への参入です。神棚と木工品をそれぞれ取り扱う2店舗を、インターネット上で出店しました。すると、実際に使用されたお客様からの声が直接届くようになったことに感動しました。卸売業では味わえなかったことです。
―インターネット販売事業はどのような影響がありましたか?
杉本 木工品を取り扱っている店舗には「安くて早く商品が届いて良かった」などの感想をいただき、神棚の店舗には「これで安心して暮らせます」「気持ちがスッキリしました」などの感想をいただきました。お客様からいただいた声によって、神棚という素晴らしい商品に携わっていたことに気づき、お客様にもっと喜んでいただきたい思いが生まれました。
モダン神棚が生まれるきっかけとなったオンラインショップ。
―そこから神棚専門会社へ。
杉本 2013年に私が代表取締役に就任したタイミングで、経営理念を発表しました。その中に、神棚を通じて社会に貢献していくことを取り入れたのです。経営理念の発表後は、徐々に神棚以外の木工品の取り扱いを減らし、神棚を専門とする会社へと移行していきました。
―神棚に注力することで、何か変化はありましたか?
杉本 季節に関係なく毎日、神棚のことばかり考えるようになりました(笑)。それまでは、季節や時期によって売れる商品が変わるため、そこに注力していました。たとえば、夏休みの時期は、木工品の工作キットが売れます。しかし神棚は、年末年始に一気に需要が高まります。新しい年を迎えるタイミングで神棚を購入される方が多いのでしょう。一年の中でも、年末年始が弊社全体の売り上げの6割を占めるほどです。ですから、年末年始以外の静かになる時期は、神棚の商品開発やYouTube・SNSによる普及活動を行っています。
シンプルなデザインは現代のインテリアにも合う。
―モダン神棚への着想はどのような経緯だったのでしょうか?
杉本 一番初めのきっかけは、インターネット販売を通じていただいた多くのお客様の声から、ヒントを得たことです。その中で、従来の神棚よりも、スッキリとしたシンプルなデザインが受け入れられるのではと思いました。商品として初めに動いたのは、箱宮タイプの神棚です。これは、全面ガラス張りの箱型で、箱の中に一式を納める神棚であり、北陸地方でよく飾られるものです。しかし、おもに関東地方を中心に売り上げが伸びていきました。スッキリとしたデザインが好評だったようです。地域性が強い神棚なのですが、地域性は関係なく、デザインが選ばれて売れたことに驚きました。そして今の暮らしにも合うように、デザイン性に重視して、洋材を取り入れたり壁に掛けられたりできるモダン神棚が生まれたのです。
スッキリとしたデザインの箱宮タイプの神棚。
無垢のウォールナットが使用されたモダン神棚。
―インターネット販売を通じて地域性関係なく、全国から注目されたのですね。
杉本 まさにそうです。また都心を中心に、三世代世帯から核家族世帯へと、家庭環境も変わってきているため、家を継ぐという考え方が減ってきています。新しい世帯が、自分たちの考えや好みで、神棚を自由に選べるようになった背景も影響しているのかもしれません。
―「かみさまのたな」・「かみさまの線」の両シリーズにて、初めてデザイナーを起用されました。
杉本 はい。若い方にも神棚を広めたいという思いを周りに伝えていたところ、プロダクトデザイン事務所mag design labo.の代表 花澤啓太さんを紹介していただきました。今の暮らしにあうデザインの神棚をお願いしましたが、具体的なデザインや機能、材質などについては、すべてお任せしました。
―「かみさまのたな S」は、どのような思いが込められた神棚ですか?
杉本 従来の神棚は直線的なものが多かったのですが「かみさまのたな S」は、少し丸みを帯びており、柔らかい雲の形をイメージしています。また、材質にはヒノキを使用しているため、ピンクがかった木の色からも、柔らかい印象を与えてくれます。より親近感を感じてもらいたい思いでデザインされた神棚です。
この神棚を通じて、今までは神さまの存在を遠くに感じられていた方にも、より身近に感じてもらいたいと思っています。神棚は、家庭を守ってくれるものなので、家族が団らんできる場所で神さまをお祀りいただけたら嬉しいです。
雲をモチーフにした可愛らしい神棚「かみさまのたな S」。
溝付加工が施されているため、お神札もきれいに揃えてお祀り出来ます。
小さな穴で取り付けができる石膏ボード専用釘にも対応しています。
―反響はどうでしたか?
杉本 グッドデザイン賞を受賞したのも重なって、注目度が一気に上がりました。可愛らしくコロンとしたデザインだからでしょうか、特に30~40代の女性に選ばれる商品となりました。
和室やナチュラルテイストのお部屋にも馴染む、柔らかいデザイン。
―「かみさまの線 SANSHA NF」はどのような違いが?
杉本 「かみさまのたな S」とは対照的で、「かみさまの線 SANSHA NF」は、直線的なデザインです。神さまの前で、背筋がスッと伸びるような緊張感で、心を整えてもらいたい思いがあります。
こちらの材質にも、ヒノキを使用しています。壁がなくフレーム状になっているため、圧迫感がありません。フレームの角の部分は「三方留め」の技術が用いられ、強度にこだわっています。また、壁に掛けることでフレームを浮かせると、織りなす影が美しいのも特徴です。
シャープで洗練されたデザインの神棚「かみさまの線 SANSHA NF」。
角の部分には留めの技術が、台の部分には溝付加工が施されています。
お神札は3枚並べてお祀り出来ます。
―こちらの反響はどうでしたか?
杉本 こちらの神棚も、グッドデザイン賞を受賞しました。スタイリッシュなデザインなので、マンションにお住まいの方や、男性に選ばれている商品です。さらに多くの方に提案できる神棚商品が仕上がりました。
シンプルモダンなお部屋にも馴染むデザイン。
―神社との間でもお取引をされていますが、どのような活動をされていますか?
杉本 社務所等での弊社神棚の展示や、OEM商品(相手先ブランド製造)の展開、また、各都道府県に設置されている神社庁が主催する関係者大会に出品させていただく活動も行っています。現在、全国の約60〜70社の神社とのお取引があります。
訪れた神社でご祈祷を受けられ、お神札と弊社の神棚を一緒にお持ち帰りいただき、家の中でも神さまをお祀りしていただけたら嬉しいです。
―今後の展望をお聞かせください。
杉本 神棚が身近でない方たちにも興味を持っていただき、より広く普及していきたいと思っています。そのためにも、新たな市場への参入を検討中です。また、一社でも多くの神社とお取引ができるように注力していきたいです。
このような弊社の活動を通じて、お神札の頒布の向上と各家庭でのお祀りの文化を伝承していけるように、社員一同励んでいきたいと思います。
―貴重なお話をありがとうございました。
「かみさまのたな S」(約280mm×140mm×80mm/約580g/神棚本体、説明書、取付アダプター)
価格:¥19,800(税込)
店名:神棚の里 静岡木工
電話:0120-45-4138(平日9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kamidananosato.jp/?pid=134565362
オンラインショップ:https://kamidananosato.jp
「かみさまの線 SANSHA NF」(約360mm×129mm×300mm/神棚本体、説明書、取付金具)
価格:¥30,800(税込)
店名:神棚の里 静岡木工
電話:0120-45-4138(平日9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kamidananosato.jp/?pid=134565164
オンラインショップ:https://kamidananosato.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
杉本かづ行(有限会社 静岡木工 代表取締役)
1979年静岡県生まれ。2002年に入社し、2012年に同社代表取締役に就任。神棚の製造・販売を通して、神道文化と“神棚のある暮らし”の継承に注力している。
<文/土屋香名子 MC/三好彩子 画像協力/有限会社 静岡木工>