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木の手ざわりが心地良い!鉛筆の老舗が手がける「大人の水彩色鉛筆3.3」「鉛筆屋のボールペン・シャープペン」

2024/02/26

東京都葛飾区にある北星鉛筆株式会社は、70年以上にわたって鉛筆づくりを続ける会社。子どもたちが使う「かきかたえんぴつ」のほか、“大人の鉛筆“をコンセプトにした商品も多数手掛けています。なかでも編集長・アッキーが注目したのは「大人の水彩色鉛筆3.3」と「鉛筆屋のボールペン・シャープペン」。これらの誕生秘話や、ものづくりにかける想いを代表取締役の杉谷龍一氏に伺いました。

北星鉛筆株式会社 代表取締役の杉谷龍一氏

―御社の歩みをお聞かせください。

杉谷 現在の場所で鉛筆製造業を開始したのが1951年。初代は私の曾祖父で、私で5代目にあたります。もっと遡ると江戸時代、我々の先祖は伊勢にいて、書記(祐筆)として徳川家に仕えていたようです。幕府解体後は、屯田兵として北海道へ渡ることに。木材が豊富にあったことから「これからは鉛筆の時代になる」と考え、1909年頃、日本で初めて鉛筆用の板を製造する会社を立ち上げました。それが我々の原点です。

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社屋には「PENCIL HOUSE」の文字とともに色とりどりの鉛筆が。

―江戸時代から“書くこと”にご縁があったんですね。代々大切にされていることは何ですか?

杉谷 “鉛筆の精神”を大切に受け継いでいます。鉛筆は我が身を削って人のためになる、真ん中に芯が通った人間を育てるのに大事なものだから、鉛筆がある限り、家業として利益を考えず続けるように、というのが初代の言葉なので。私たちが常に考えているのは、いかに鉛筆を作り続けていくかということ。できればこの東京の地で、ずっと作り続けていきたいと思っています。

―商品には「MADE IN TOKYO」と書かれていますね。

杉谷 鉛筆作りは、東京の地場産業なんです。私たちのいる葛飾区や荒川区、足立区といった下町には鉛筆屋さんがたくさんあるんですよ。「MADE IN TOKYO」と謳うことで、それをアピールして鉛筆業界を盛り上げていければなと思っています。

40年ほど前から工場見学も受け入れていて、地元の子どもたちは小学3年生になるとうちに社会科見学に訪れます。2012年には見学施設「東京ペンシルラボ」を開設し、一般開放も始めました。予約していただければ、どなたでも鉛筆作りの様子を間近にご覧いただけます。

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「東京ペンシルラボ」では工場見学ができるほか、資料展示やワークショップの実施も。
見学者には記念品をプレゼントしてくれる。

―削らず使える「大人の水彩色鉛筆3.3」が生まれた経緯は?

杉谷 鉛筆の欠点は削らないといけないこと、削るとゴミがたくさん出ること。鉛筆はもともとエコな道具で、1本で50km以上の線が書けると言われています。ボールペンの場合は1本1km~1.5km、シャープペンは芯1本700mなので、それらと比べても桁違いです。でも少し書いてはすぐ削り、最後に短く残った部分を捨ててしまうと、1本あたり1kmも書けない計算になってしまいます。せっかくエコな道具なのに使われ方次第では、本来書ける能力の大部分が失われてしまうのです。とくに水彩色鉛筆は柔らかいので、削るときに折れてしまうことも多く、すぐに短くなってしまいがち。それなら、削らずゴミを出さずに使える色鉛筆があればいいのではないか、というアイデアからこの商品は生まれました。

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みず筆や芯削り器、替芯も付いた「大人の水彩色鉛筆3.3スターターキット」。
紙と水さえあればすぐに水彩画を始められる。

―水彩色鉛筆としては“世界初“の画期的な仕組みになっているそうですね。

杉谷 木軸に芯を入れて使うスライド式ホルダータイプで、先端には口金、側面には細いスリットが入っています。口金をゆるめ、スリットの金具をスライドさせると芯が押し出されるという仕組みです。ホルダータイプの筆記具は既にありましたが、“水彩色鉛筆で”というのは、おそらくこの商品が世界初です。水彩色鉛筆は芯が柔らかいので難しいのだと思います。

シャープペンのようなノック式だとバネの力でチャックが芯に食い込んでしまうため、スライド式を考案しました。尖らせたいときも芯だけを削ればいい、つまり軸を削る必要がないので木くずが出ないし、削りカスを水で溶かせば絵の具として使えるので一切無駄がありません。

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軸側面の金具をスライドさせて芯を押し出し、好みの長さに調整したら、口金をキュッとしめて固定する仕組み。

―2023年秋に発売されたばかりのこの商品。開発にはどれくらいの時間を要したのでしょうか?

杉谷 昔作っていた「ノーカットペンシル」という商品をベースにいろいろ試行錯誤しながら、1年ほどかけて完成させました。ホルダーの形を考えたり、スリットを入れる機械を作ったり。芯自体は社内で作っていないので、芯メーカーさん探しにも時間を要しました。

―お客様の反応は?

杉谷 画材を扱ったことがなかったので不安な部分もあったのですが、水彩色鉛筆画家の方曰く、世界最古の筆記具メーカー・ファーバーカステルさんや、同じく老舗のステッドラーさんのものと比べても全然遜色ない、と。とても発色が良いし、自分の描き方にもマッチしているから、今色鉛筆画教室で使っている水彩色鉛筆を全部うちのものに変えたいというお話までいただきました。

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削りカスや折れた芯は細かく仕切られたパレットに入れ、付属の“みず筆”で溶かしておけば絵の具として保管できる。

―ものづくりをする上でどんなことを大切にしていますか?

杉谷 弊社は小さな企業なので、大手さんがやらないようなことをどんどんやっていかないといけないと思っています。お客様の目線に立ったものづくりをしていけば、自ずと良い商品ができると思っていて、既に世の中にある商品をそのまま真似していては面白くないので、弊社が持つ技術とアイデアを組み合わせた新しい商品を出していくことを心がけています。

―鉛筆屋のボールペン・シャープペン「W」も“お客様目線“で作った商品なんですか?

杉谷 そうです。「鉛筆は好きだけど、大人が使いたくなるような鉛筆がない」というお声がもとになっています。実際は鉛筆とは少し違うのですが、木のやさしい感触や、鉛筆のようになめらかな書き心地を味わってもらうことで「また鉛筆を使ってみようかな」という気持ちになってもらえたらいいなと思っているんです。

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「これまでのノウハウを詰め込んだ一番いい商品を作ろう」と社長自ら企画・デザインした鉛筆屋のボールペン・シャープペン「W」。

―鉛筆のようにボディが木でできているんですね。

杉谷 日本の老舗筆記具メーカーOHTOボールペンさんが70年以上前に発売した国産初のボールペンも、ボディは木でできていたんです。先端のボール部分はOHTOさんが作っていたのですが、ボディを手がけたのは我々、北星鉛筆でした。発売当初はめちゃくちゃ売れたのですが、プラスチック製の良いものが出始めるとあまり売れなくなってしまって。というのも当時は、森林伐採が問題視されるようになり、プラスチック素材を使った方が良いとされていましたので。

そういう時代を経て、SGDsや脱プラが叫ばれるようになった今、再び我々の出番なのではないか、と。それで自社製品の木軸のボールペン、シャープペンを作ろうと考えたんです。

―自社製品としては初のボールペン・シャープペンなんですよね。

杉谷 ボディ部分を作る技術は持っていても、中芯は作っていなかったので、ずっと縁の下の力持ちというか。自社製品としてボールペンやシャープペンを出すことはありませんでした。でも数年前にパイロットコーポレーションさんと業務提携を結んだことで、「パイロットさんの替芯を使ってください」と言えるようになりましたので、オリジナルで作る商品の幅がグンと広がりました。

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木軸は使い込むほどに手になじんでいく自然素材ならではの良さが魅力。
環境に配慮した完全紙製のパッケージにもこだわっている。

―普通のボールペンやシャープペンと何が違うのでしょうか?

杉谷 鉛筆の感覚をそのまま残した商品にしたくて、太さと芯の硬さを工夫しました。とくにシャープペンは使ってみてもらうとみなさんびっくりするんですが、本当に鉛筆で書いているようになめらかな書き心地です。芯はいろいろ試してみて、最も鉛筆の感覚に近かった“2B“を採用しています。シャープペンで2Bって、あまりメジャーではないんですけどね。太さも0.5mmだと折れてしまうので、0.7mmにしました。

―ボールペンはさらに太くて、1mmなんですね。

杉谷 細い方が好まれる傾向にありますが、鉛筆のように太くしっかり書く感覚を味わってもらうには、やっぱり1mmくらいあった方が良くて。ボールが太いとインクが出やすいので、なめらかに書くことができます。

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ボディは1mm太めの設計。しっかり書けるので、“初めてのシャープペン”としてもおすすめ。

―お客様の声で印象に残っていることはありますか?

杉谷 実際に書いてみると、書き心地がすごく良くてみなさん驚かれます。だから、一度使うとファンになってくださる方がとても多いんです。発売前に展示会で出品したときは、その場で体験された方が「販売したら買いに行くから、すぐに知らせてくれ」と言ってくださったんです。連絡したら、本当に発売日に会社まで買いにいらして。たまたま使ってみてよかったからということで、小学校の卒業記念品に使ってくださった方もいます。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

杉谷 ほかの筆記具にはない鉛筆の良さは、“書くこと”に集中できることだと思っています。ボールペンやマジックとは違って、試し書きをしなくても確実に書き出せるし、芯が残っている限り100年、200年経っても書ける。いつでも・いつまでも書けるという絶対的な安心感が鉛筆の良さです。

でも近年は学校でタブレット授業なんかも始まっていますし、今後鉛筆を使う機会はどんどん減っていきます。そんな中で、いかに鉛筆を未来に存続させるかということを考えていかないといけないと思っていて。大人や子どもも隔てなく、みんなが鉛筆を使いたくなるような商品をこれからも作っていきたいです。

―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

「大人の水彩色鉛筆3.3 スターターキット」

「大人の水彩色鉛筆3.3 スターターキット」
価格:¥8,800(税込)
店名:北星鉛筆
電話:03-3693-0777(10:00~17:00 土日祝除く)
商品URL:http://www.kitaboshi.co.jp/product/post-165/?postID=post-165
オンラインショップ:問い合わせより購入可

「鉛筆屋のボールペン W」「鉛筆屋のシャープペン W」

「鉛筆屋のボールペン W」「鉛筆屋のシャープペン W」
価格:¥660(税込)
店名:北星鉛筆
電話:03-3693-0777(10:00~17:00 土日祝除く)
商品URL:http://www.kitaboshi.co.jp/home/
オンラインショップ:問い合わせより購入可

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
杉谷龍一(北星鉛筆株式会社 代表取締役)

1976年 11月27日生まれ
2000年 3月敬愛大学経済学部を卒業
2000年 4月北星鉛筆株式会社入社
おがくずのリサイクル事業の担当者として新商品開発に取り組む
2019年 4月同社代表取締役に就任
2023年 東京鉛筆組合昭午会会長に就任

<文・撮影/野村枝里奈 MC/伊藤マヤ 画像協力/北星鉛筆>

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