部屋の雰囲気をがらりと変えてくれるアート。今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、絵画をグラビア印刷で模写するプロジェクト「MOSHA-PRO」から生まれたアートブランド「MOSHA-COLLE」です。考案したのは、なんと各種パッケージ印刷メーカーの大和グラビヤ株式会社。代表取締役社長の河合昭司氏にお話をうかがいました。
名画をフィルムに印刷!「MOSHA-COLLE」でモネや北斎の作品を気軽に楽しもう
2024/03/14
大和グラビヤ株式会社 代表取締役社長の河合昭司氏
―まずは、河合社長のご経歴をお聞かせいただけますか。
河合 私が大学院を卒業して弊社に入社した1994年は、バブル経済崩壊が就職活動に強く影響するタイミングでした。在籍していた理系の研究室は、それまで推薦で決まった企業に入る形が主流だったものの、バブル崩壊後は求人がなく、自分で就職先を探す必要があったのです。
まだインターネットに求人情報が溢れている時代ではなく、たまたま参加した企業展が「大和グラビヤ」との出会いでした。弊社は、包装やパッケージと称される「袋」を作る会社です。私は開発製品の「カートリッジパック」が非常に画期的だと感じ、当時の技術責任者からは「品質や機能を保ちつつ、材料の無駄を減らしている」というお話を聞きました。「自分も環境に配慮した面白い製品を作りたい」と感じたことが入社の経緯です。
大和グラビヤと容器メーカーが共同開発した詰め替えパッケージ。
手を汚さず詰め替えられ、中身を99%使い切ることが可能。
―社長にご就任されるまで、どのような経験をされましたか?
河合 特許製品を作ろうと思っていましたので、技術開発部に7~8年ほど在籍しました。その後は新設された経営企画室で中期経営計画などを学んだのち、技術開発責任者、長野県南アルプス工場の工場長、営業のサポートなどを経験しました。足かけ20年ぐらいで、最終的に社長を任されるとは全く考えていませんでした。
―今回ご紹介する商品のプロジェクト「MOSHA-PRO」に取り組んだきっかけは?
河合 絵画をグラビア印刷に模写するというプロジェクトですが、取り組みとしては、前社長の時代にスタートしました。きっかけは、カートリッジパック開発を通して、化粧品メーカー様からお仕事をいただけるようになったことでした。化粧品のデザインは色に非常に厳しい基準があり、弊社が印刷するにあたって、多くの困難が生じました。
パソコンの画面で色を見た状態と、プラスチックのフィルムに印刷した状態では、表現できる色の領域に差があります。完全に表現しきることは難しいのですが、デザイナーさんのこだわりと合致するパッケージを作っていく過程で、現場における色の表現レベルが上がりました。結果的にお客様から信頼を得て、さらにご依頼をいただけるようになったのです。
―お客様の要望に正面から取り組むことが技術の向上につながったのですね。
河合 インキメーカー様とも、いろいろなやり取りをしました。製版から印刷の工程も一昔前と比べると、色の出方に関わるデータ作りから深いコミュニケーションをとるようになったと思います。前社長の「せっかく高めた技術を客観視し、思いっきり表現する機会を社員のために創りたい」という想いから、絵画の印刷に取り組み始めたものが「MOSHA-PRO」という形になりました。
「MOSHA-PRO」というネーミングに含まれる「模写」は、そっくりそのまま書き写す行為ですが、模写することで「技術を向上させる」という目的もあります。弊社にぴったりな言葉に、プロジェクトやプロフェッショナルの「プロ」を合わせました。
そして、「これを社内だけに留めていてはもったいない」という社員の想いから「MOSHA-COLLE」という、お客様の手元にお届けできる形に進化しました。
名画の鮮やかな色を再現できるのが、グラビア印刷の特徴。
―「MOSHA-PRO」でグラビア印刷した作品をアートとして楽しめる「MOSHA-COLLE」。グラビア印刷の特徴を教えていただけますか。
河合 グラビア印刷は日本語で「凹版印刷」と呼ばれます。判子をはじめとする凸版印刷とは反対の仕組みで、「凹んだ場所にインキを載せて印刷物に写す手法」となります。最大の特徴は、プラスチックフィルムに載るインキ量が他の手法よりも多いことです。これにより、繊細な色合いや深みのある色表現が可能となります。
表面はマット加工を施し、フィルム特有の光沢感をおさえ、なめらかな感触。
中でも「モネ『散歩、日傘をさす女』シリーズ」は、モネが得意とする光の表現を忠実に再現するため、色彩にこだわった自信作です。通常の印刷に用いられるプロセスカラーだけでなく、特色(プロセスカラーでは再現できない色を出すための単色インキ)を効果的に使用することで、特徴的な逆光の具合をリアルに再現しました。
全ラインアップを通して、フィルムにマットインキを載せているので、触るとサラッとした質感になっています。後ろから光が入るとよりきれいに空間を演出できることに加えて、水を弾くのでお手入れがラクというのも紙の絵画との違いです。
表面は水をはじくフィルム。乾いた布で拭き取れ、お手入れが簡単。
クロード・モネの「散歩、日傘をさす女」をアクリルパネルに。
日に当てると透ける。窓際に飾るのにもぴったり。
―「葛飾北斎『神奈川沖浪裏(富嶽三十六景)』ペア木製フレーム」など、日本画の作品も魅力的です。
河合 最初に挑戦したのは雪舟の水墨画でした。難易度が高い、やりがいのあるものに取り組もうと、墨の濃淡を1色ではなくあえて3色のインキを使用して表現することにしたのです。その後、有名な浮世絵「葛飾北斎『神奈川沖浪裏(富嶽三十六景)」も手がけました。家庭用プリンタやコピー機でもプリントアウトは簡単にできますけれども、色の掛け合わせ数が多いグラビア印刷においては、より版画の方式に近い形で色表現ができています。
「MOSHA-PRO」や「MOSHA-COLLE」を通して、一般消費者の方から多くの声やご要望をいただけるようになりました。今後も自分たちがやりたいと思うことを見つけて、次の進化に繋げていき、その先にまた違う何かが見えてくるような展開を図りたいと思います。
大小のペアフレームが印象的、葛飾北斎「神奈川沖浪裏(富嶽三十六景)」。
―アートがカジュアルに楽しめますね。貴重なお話をありがとうございました!
※「MOSHA-COLLE」は、LIVING HOUSE.ららぽーと名古屋みなとアクルス店にて、委託による実店舗販売を実施中です。2024年5月末まで。
「モネ『散歩、日傘をさす女』カラーアクリルパネル」
サイズ:290×265×2mm
重さ:約185g
価格:¥8,800(税込)
店名:MOSHA-COLLE
電話:052-265-6763(平日 10:00~17:00 定休日:土・日・祝日(年末年始・お盆))
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://moshacolle.theshop.jp/items/72525842
オンラインショップ:https://moshacolle.theshop.jp/
「葛飾北斎『神奈川沖浪裏(富嶽三十六景)』ペア木製フレーム」
サイズ:小185×185×27mm、大360×185×27mm
木材:ハードメープル
重さ:小 約245g、大 約440g
価格:¥33,000(税込)
店名:MOSHA-COLLE
電話:052-265-6763(平日 10:00~17:00 定休日:土・日・祝日(年末年始・お盆))
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://moshacolle.theshop.jp/items/81057299
オンラインショップ:https://moshacolle.theshop.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
河合昭司(大和グラビヤ株式会社 代表取締役社長)
1994年、大和グラビヤ株式会社に入社。技術開発部、経営企画室、情報システム部、R&D本部などに在籍し、南アルプス工場長、生産管理部長、営業部長などを経て2015年に取締役、2022年に専務取締役を歴任。2023年4月に代表取締役社長に就任。
<文/マスダアヤノ MC/ 画像協力/大和グラビヤ>