車を運転するとき、偏光サングラスがあると快適性や安全性が上がる。一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 今回、編集長アッキーが注目したのは、メガネの産地として知られる福井県鯖江市で、長年培ってきた技術力を活かして、鯖江発のハイエンドサングラスブランドを立ち上げた企業です。
その名はドライビングサングラスの「DEEC(ディーク)」。約5万円からと値は張るものの、その品質の高さから注目されている秘密を、株式会社シューユウの代表取締役、酒井勇一氏に取材陣がお話を伺いました。
1本5万円のサングラスに込められた熱意とは?鯖江からサングラス文化を発信するブランド「DEEC」
2024/03/27
株式会社シューユウ 代表取締役の酒井勇一氏
―お父様から引き継いだ会社だとうかがっています。
酒井 はい。シューユウは父が設立した会社でして、設立当初からメガネの製造に取り組んでいました。その後、私が2代目として25歳で会社を引き継ぎ、これまで会社を切り盛りしています。
私は大学卒業後2年間、別のメガネ会社で働いていたのですが、それでも25歳という若さでの社長就任は大変でした。最初は机上の仕事をこなすところから始めましたが、実際に机上でできる仕事はそれほどなくて、現場を少しずつ知っていくことから始まりました。
―特にどういった点が大変でしたか?
酒井 まず従業員たちの信頼や協力を獲得するまでのことです。先代からの従業員が多かったこともあり、就任当初はなかなか認めてもらえませんでした。
しかしあるとき、会社の利益向上のために間接貿易を直接貿易に切り替える転機が訪れます。同時に取引先も一新されることとなり、私が自らアメリカへ渡って、辞書を引きながら対話をしたり、ときにはボディランゲージを混ぜたりして取り組んだところ、なんとか取引先の獲得に成功したんです。当時は25歳と若かったので、まず、現地の企業から相手にしてもらうだけでもひと苦労でした。
でもそれが、従業員からの信頼を得るきっかけになりました。そこから先代からの従業員も私を認めてくれて、要望を聞いてくれるようになりました。
DEECの名には、「D‐DRIVE(運転する)」、
「E‐ENRICH(価値を高める)」、「E‐ENJOY(楽しむ)」、
「C‐COMFORM(心地よくする)」の4つの意味が込められている。
―鯖江市はなぜメガネで有名な街なのですか?
酒井 そもそもメガネフレームの産地というのは日本で鯖江を中心とした福井県内しかありません。県外にもいくつか企業はありますが、それらはプラスチックの成形品を取り扱っているところがほとんどです。金属フレームのメガネを作っているのは、ほぼ鯖江を中心とした福井県内だけです。
また、鯖江が元々農業主体の土地柄だったことも関係しています。農業は冬の間できることが少なく、その間にできる仕事としてメガネ生産が始まりました。
ちなみに、海外に目を向けるとイタリアも日本と似たような状態になっています。ただ、鯖江は分業化が進んでいて、街単位で生産インフラが整っている強みがあります。
―鯖江がメガネ生産で評価されているのですか?
酒井 鯖江はメガネのOEMで成長してきた歴史があります。メガネ商社が展開するブランド品をOEMで作成することで、生産者としての技術力を培ってきました。90年代後半になるまで、中国や韓国がメガネ生産をしていなかったので、海外からのOEM需要もありました。
ちなみに、私が社長に就任した当初はアメリカをメインに受注していましたが、今は国内やヨーロッパ、アジアに切り替わっています。OEMに対する要望も変わってきていて、かつての大量生産から、ブランドが個性を出すための小ロット生産へと移り変わっています。
DEECのパーツは、パーツの一つひとつが鯖江で生産され、最高の精度で組み立てられる。
―サングラスブランドを立ち上げられたのは?
酒井 鯖江のメガネには、鯖江ブランドやメイドインジャパンブランドの強みがありますが、最近はブランドのネームバリューだけに頼っていられる状況ではなくなってきています。
原材料の高騰が続き、商社やメーカーに卸すにも価格交渉が必要になってきていますし、OEMの小ロット化が進むと、生産者としても利益の確保が厳しい面も出てきます。そこで、自分たちで作って自分たちで売る、自社ブランドの立ち上げを考えたんです。
サングラスは海外ブランド商品が多く、国内ブランドは少ない。それに、海外製品が日本人の顔にフィットしない問題もあったので、フレームとレンズ両方を生産できる技術力を活かすチャンスだと思ったのです。
―「ドライビングサングラス」に絞った理由は?
酒井 DEECというブランドを広めるためには、まずは確実に名前を知ってもらうことが大切だと考えました。そこで、ドライバーをターゲットに絞ってアプローチしようと考えたんです。
DEECの強みは高品質なガラスレンズにありますが、じつはこの「ガラス」という素材は、車の安全性を確保するために重要なポジションにあります。
車のパーツを見ると、かつてガラスが用いられていたテールランプやフロントライトは、今はプラスチックが用いられていますが、視界を確保するべき箇所は今もガラスが使われています。これは、ガラスがプラスチックより透明度が高く、UVによる劣化に強いためです。
サングラスにも同じことが言えます。DEECのガラスレンズは、高い透明性とUVに対する耐久度を兼ね備えていますから、運転中の快適な視界を維持するのに最適なのです。
DEECのサングラスは、ドライビングシーンに最適化されている。
影やトンネルなどにおける急な光の変化にも強い。
―DEECはリピーターが多いと聞きましたが、どのような部分が好評ですか?
酒井 やはりかけ心地の良さと視界のクリアさだと思います。
DEECのサングラスは、ガラスレンズに技術を集結して作っています。さらにデザインのスタイリッシュさも兼ね備えているので、品質とデザインが両立しているんです。
1本買ってくださったお客様が商品の良さを知ってくれて、色違いやデザイン違いで2本、3本目と買ってくださることもあります。嬉しい限りです。
―ドライビングシーン以外でのおすすめは?
酒井 ハイキングや山登りをする人は、自然の景色をクリアに見られますし、釣りをするときも水面の乱反射が抑えられるので、釣り場の状況把握に役立ちます。釣り人向けには「136サングラス」というブランドもありますので、そちらもチェックしてみてください。
もちろん、日常使いとしてもおすすめです。夏だけでなく、オールシーズン使い分けられるようにレンズカラーのラインナップを用意しています。
最終工程はレンズのゆがみやフレームのフィッティングなどを人の手で一つひとつ確認する。
―ブランドで大切にしていることを教えてください。
酒井 ハイエンド商品を取り扱うので、ブランドイメージはとても大事にしています。自分たちが実現したいことを妥協なく取り組んでいて、1商品目が出るまでにデザイナーさんと3年間の時間費やした経緯もあります。
価格は約5万円からと高いのですが、長く使える本当に良いものを作っています。まだまだ認知を広げるための投資の時期ですので、商品の良さを知ってもらえるよう、コツコツ発信し続けていきます。
ちなみに、本当に届けたい人に届けられるように、アプローチ方法にも気を使っています。じつは、あえてメガネ業界を通じて販売はしていなくて、その代わり車関係のイベントには積極的に参加しています。小売店さんも基本的には取り扱いを希望されるところのみ販売をお願いしています。
―今後の展開についてお聞かせください。
酒井 まだサングラスよりメガネの方が売れる現状があるので、サングラスの需要を高めていきたいです。1本あればOKではなく、2本目、3本目を買うような感じになって欲しいと考えています。そのために、まずはDEECサングラスの良さを知ってもらおうと、サングラスのレンタルにも取り組んでいます。
服やバッグにお金をかけても、メガネやサングラスにお金をかける人は意外と少ないんです。自分の目と言う大切な箇所を預けるものだからこそ、本当にいいものを使ってほしいと思います。
―本日は、貴重なお話、ありがとうございました。
「DAYTONA」
■サイズ レンズ:60mm、ブリッジ:13mm、テンプル:140mm
価格:¥49,500(税込)
店名:DEEC ONLINE STORE
問合せ先:Webサイト問い合わせフォームより
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://deec.shop-pro.jp/?pid=147576747
オンラインショップ:https://deec.jp/
「Imola」
■素材 レンズ:ガラス、フレーム:チタン
■サイズ レンズ:58mm、ブリッジ:16mm、テンプル:142mm
価格:¥79,200(税込)
店名:DEEC ONLINE STORE
問合せ先:Webサイト問い合わせフォームより
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://deec.shop-pro.jp/?pid=174140984
オンラインショップ:https://deec.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
酒井勇一(株式会社シューユウ 代表取締役)
1968年福井県生まれ。2年の修業期間を経て1992年に株式会社シューユウへ入社。1994年に同社代表取締役に就任。
<文/森田俊嗣 MC/三好彩子 画像協力/シューユウ>