今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、モードな世界観で人々を魅了するブランド「Uttrykk（ユートリーク）」。2024SPRING／SUMMERコレクションでは「菱形」をモチーフにしたデザインの服も多く展開されています。そのブランドを有する株式会社TEN PLANNING代表取締役の和田秀二郎氏に、取材陣が商品開発のエピソードやこだわりなどを伺いました。

株式会社TEN PLANNING 代表取締役の和田秀二郎氏

―小さい頃からデザイナーに興味が？

和田　小学生の頃はそれこそ親が選んだ服を着ていましたが、中学生くらいの頃にはなんとなくこの道に進みたいと思っていました。

初めて編み物で小物をつくったときに「なんか楽しいな」という感覚がありました。そこからミシンを始めて。漠然とモノづくりに興味を持ち始めたんだと思います。高校は普通高校に行ったのですが、その間もどんどんファッションへの関心が強くなっていきました。わりと進学校だったので、卒業時に専門学校に行く同級生はいないなか、「俺は東京モード学園に行く！」と言ったら周りは驚いていました。

―東京モード学園ではどんな勉強をされましたか？

和田　もうひたすら絵を描いていました。専門学校によってパターンを重視したり、縫製を重視したりといった傾向があると思うのですが、東京モード学園はわりとデザイナーやパタンナー向けの勉強が多かったかもしれません。

―御社は2014年創業とのことで、2024年で10周年を迎えられます。創業からの10年はどんな期間でしたか？

和田　アパレル業界は逆風というか、当時からアパレルが景気いいという感じはすでになかったので、とにかくなんでもいいからがんばろう！みたいな感じでした。マンションの一室を事務所にしているのですが、10年前の事務所に比べたら今は3倍の広さになりました（笑）

バイアススクエアチェックのカットジャガード素材を使用した「Sheer Jacquard Over Shirt」。
袖裾を絞ることでシルエットを調整できる。

―創業当初から順調でしたか？

和田　実は、今回紹介するブランドを始めたのはまだ3年前くらいなのです。それ以前の7年間はOEM（他社ブランドの製品を製造すること）をやっていました。工場とブランドの間に立って、製品化する仕事です。

当初は資金もなかったので。ブランドをやるとなるとどうしても資金が必要なのです。いずれは自分のブランドをつくりたいけど、とりあえずOEMをやろうと。おかげさまで業績は右肩上がりでやってこられました。「そろそろブランドを始めたい」とずっと言ってたのですが、やっと始められたのが3年前でした。

菱形モチーフ「Sheer Jacquard Over Shirt」のカラー展開は、White・Yellow・Blue・Beigeの4色。
選ぶ色によって印象が異なり、つい迷ってしまう。

―OEMでのお仕事がお忙しかったのですね。

和田　それもありますし、ブランドを始めたいと言ってもやり方がわからない。服はつくれるのですが、つくった後どうやって売ればいいかがわからない。今もいい服をつくるところまでは結構自信がありますが、もうちょっとうまく売れたらいいなと、まだ手探り状態です。

―女性をターゲットにした服を展開されていますが、女性向けの服に特化された理由をお聞かせください。

和田　これはあくまで一般論になってしまうのですが、やはり女性のほうがよりファションを楽しんでいるような気がします。自分のブランドの服は「なんでもいいからこれ着とこう」といった感じではなく、やっぱり服が好きで楽しんで着ていただける方たちに届けたいという思いがあります。もちろん、男性でもファッションを楽しんでいらっしゃる方は多いのですが、割合的に女性の方が多いのかなと思って。

女性をターゲットにした独特の世界観を持つブランド。
ゆったりと身にまとえるデザインも多く、リラックスしたいときにもぴったり。

―ブランド「Uttrykk／ユートリーク」は染め方に特徴があるようですが、特徴やこだわりについて詳しくお聞かせください。

和田　弊社のブランドは「製品染め」を採用しています。製品染めというのは、服を最後まで縫い上げてから染める製法です。製品染めは染料が入った高温のお湯で染色するのですが、生地全体や縫い目の一つひとつがフワッと柔らかくなる印象です。何回か着て洗濯した服って生地が柔らかくなる。あのようなイメージで、わりとリラックス感のある服ができるのが特徴です。他ブランでも一部の商品だけ製品染めをしているところはありますが、弊社では製品染めの服だけを出していこうという話をしておりまして、それは他ブランドとの大きな違いでもあります。

―製品染めは手間もかかりそうですね。

和田　製品染めにはデメリットもあり、型崩れしやすいです。製品ごとに形も違うので、染めムラが出ることも多く良い味として出ることもありますが、嫌な感じの染めムラになることもあります。そこが結構やりにくいポイントでして、いまだに毎回トラブルはあります。ブランドとしては結構苦労が多いです。ほかの染め方に比べ、より面倒を見なくてはいけない感じです。

また、製品染めではない服の場合、思い描いたとおりに仕上がりやすいのですが、製品染めをすると仕上がりが想像と違うことも多々あります。陶芸みたいに、仕上がりは最後に焼きあがってみないとわからない、みたいな。普通に失敗に終わることもあれば、想像を超えた奇跡的な良さが出ることもあります。

―今回ご紹介いただく「Sheer Jacquard Over Shirt」のこだわりについて伺えますか？

和田　今シーズンのテーマは「菱形」で、ここ半年ほどは菱形をデザインした服をたくさんつくっています。このシャツにも菱形がデザインされています。こちらはジャガードのオリジナルでつくった生地です。ジャガードの生地の生産地に半年1回は伺って、生地屋さんで生地の中に柄を入れてもらいます。

ジャガード生地は製品染めをする際に柄が浮き出るような生地をつくりやすいので、製品染めとは相性が良いと思っていて。毎年1～3着くらいはジャガード生地を使った服をつくるようにしています。

―着心地もゆったりとゆとりがある感じですね。

和田　商品名に「Over Shirt」とあるように、今回のシャツは割と大きめサイズです。その辺はトレンドも意識しました。ただ、弊社のブランドの服はレディース向けですが、サイズ感的には男性が着れる商品も多いです。

また、袖の長さを調整できるデザインも特徴です。弊社のデザイナーは袖まくりするデザインが好きで、そういう商品が多いかもしれません。袖を肘くらいまでまくり上げると肩の張りが出て少し膨らんだようなトレンド感のあるシルエットになりますし、袖を下ろすと生地の重みで自然と肩に沿ったシルエットで着れる。そういったバリエーションも楽しめるデザインになっています。

―「Fringe-knitting Net short Tops」はどの点にこだわってらっしゃいますか？

和田　この商品のこだわりはニットの真ん中に通っている紐です。実はこの紐、染工所さんで生地染めをする際に出る端材を使っています。デザイン段階でなにか紐を通すことは決まっていたのですが、結果、端材を使って服を完成させようということになりました。

「Fringe-knitting Net short Tops」。
中央に通った紐は染めの過程で出る端材を使用している。
テープを編み込み、脇から長めに垂らしたデザイン。

―Uttrykkの服はどんなシーンで着ていただきたいと思いますか？

和田　どう着ていただいても構いませんが、私がイメージしているのは、家で仕事をするときやリラックスしているときに着て、そのまま外出もできる、といった着方です。そのままお昼も食べに行くし、夜もその格好で遊びに行くみたいな。おしゃれでありながら、楽さも兼ね備えている服です。

一応、手洗い表示にはなっていますが、実際に洗濯機で普通に洗えますので、日常に気軽に着ていただけたらうれしいです。

―今後のビジョンをお聞かせください。

和田　服づくり自体は自信を持ってやっているのですが、売り方を考えるのがこれからの課題です。ブランドのイメージを大切にしながら、できるだけ多くの方に知っていただきたいです。もっとブランドの魅力を知ってもらえるようがんばります。

―素晴らしいお話をありがとうございました。

【Fringe-knitting Net short Tops】
価格：¥19,800（税込）
店名：Uttrykk オンラインショップ
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://uttrykk.theshop.jp/items/82153039
オンラインショップ：https://uttrykk.theshop.jp

【Sheer Jacquard Over Shirt】
価格：¥39,400（税込）
店名：Uttrykk オンラインショップ
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://uttrykk.theshop.jp/items/82067206
オンラインショップ：https://uttrykk.theshop.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
和田秀二郎（株式会社TENPLANNING 代表取締役）

1981年東京都生まれ。東京モード学園卒業後、レディースブランドにパタンナーとして勤務後、2014年株式会社TEN PLANNINGを創業。2021年より自社ブランドUttrykkをスタート。

＜文・撮影／時田涼子　MC／伊藤マヤ　画像協力／TEN PLANNING＞