編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、“ありふれた日常の中にちょっとイイコト”をコンセプトにするレイングッズブランド「mabu(マブ)」。なかでも人気なのが、日本で古くから現在まで愛され続ける番傘のデザインの美しさと現代の高い機能性が組み合わさった傘「江戸」です。株式会社SMV JAPAN 代表取締役の林崇之氏にお話を伺いました。
雨の日が待ち遠しくなる。「mabu」の美しく機能的な傘「江戸」
2024/05/02
株式会社SMV JAPAN 代表取締役の林崇之氏
―レイングッズのブランド「mabu」を立ち上げたきっかけを教えてください。
林 弊社はノベルティの企画と製造の会社としてスタートしました。創業当時に比べますと、お使いいただく企業様の業種やキャンペーン内容は、時代と共に様変わりしましたが、今でも当時からお取引を継続していただいているお客様や取引先様も数多く、皆様に支えていただき、今期で30期目を迎えることになり、大変ありがたく感謝しております。
当時は、呉服屋さんや下着メーカーさん、化粧品会社さんの案件が多く、予算に応じてさまざまな販促品を提供して参りました。その中でも春になると、日傘や雨傘が人気で、ワンシーズンに作る傘の数量も毎年増え、継続して採用いただいたのです。そのため、お客様に求められる品質以上の製品を作るノウハウや多くの生産リソースができました。
そこで、予算が制限されている傘ではなく、もっと良いマテリアルや、もっと新しい構造で機能的なパーツを使い、持つ人のライフスタイルに寄り添ったアイテムを作りたい思いで「mabu」を始めました。
「mabu」は、雨の日が待ち遠しくなる傘。“ありふれた日常の中にちょっとイイコト”を感じてほしいというコンセプトとビジョンで展開しています。雨って、嫌じゃないですか。日差しが強い日は外に出たくないですし。それを楽しみに変えてほしいなと。機能的で、しかもかっこいい。そんな傘を多くの方に使っていただきたいと思って立ち上げたブランドです。
東京の南青山に「mabu」の小さなオフィスを構えた当時、雨の日の仕事帰りに表参道の歩道橋から下を眺めると、人々が差す傘が一面に広がっていました。それを見て、この道いっぱいに「mabu」の傘が広がったらどんなに素晴らしいだろうと夢が膨らみました。発売から15年が経った今、雨の日になると「mabu」の傘を使っていただいているお客様をたくさん見かけるようになり、その当時の夢に一歩近づいたと感謝の気持ちでいっぱいです。私自身、雨の日がいつも待ち遠しいです。
番傘を思わせる美しい骨組みが印象的な「江戸」シリーズ。
―「mabu」のコンセプトにある“ちょっとイイコト”とは?
林 まずは価格面です。百貨店に行って傘を見ると、私は気軽に購入できないほど高い傘があったりしますが、これって「ありふれた日常」ではないと思うんです。セレクトショップなどでアウターやバッグなどを買う時も、アパレルショップなどにバッグやジャケットなどを買いに行く時も、けっこう悩んで決断します。これは日常の出来事ではなく特別なことだと思うのですが、「mabu」はそうではなく、お求め頂きやすい価格で、日常の買い物の一つとして買っていただけることを大事にしています。
雨はいつ降るか分からないので、傘はクローゼットに大切にしまって取り出すものではなく日常的に使うもの。しかし、ただ雨をしのぐだけでなく、雨の日を楽しめるようなものとして使っていただきたいと思っています。
子どもの頃はじめて長靴を買ってもらった時に、わざわざ水たまりに入っていくような気持ち。水たまりは普通入りたくないと思うのですが、新品の長靴が嬉しくて、水たまりをわざわざ選ぶくらい楽しい出来事に変わる。そんな風に、日常の中に「ちょっとイイコト」が待っているような傘を作りたいと思っています。
―超軽量24本骨傘「江戸」はどんな傘ですか?
林 傘の歴史をたどると古くて、諸説あると思いますが使われ始めたのは江戸の中期頃だと聞いています。その時に売られていた番傘は、今なお販売されています。番傘がなぜ今もずっと続いているのかというと、その美しさに理由があると思うのです。無地の和紙を貼ったシンプルな作りなのですが、傘を開くと放射線状に和紙が広がり、フォルムがきれいで、均等に配置された骨組みが美しさを引き立てます。職人さんの技術や日本人の美意識の高さによって、無地の和紙やたくさんの均等な骨組みが美しく見える。これを現代の傘で再現したかったというのが、「江戸」というシリーズを作ったきっかけです。
「江戸」は傘を開くと番傘のようにたくさんの骨組みが均等に配置されています。当然和紙ではなく撥水性の高い生地を使っていますが、デザインには透かし柄を入れています。和傘っぽいのですが実はすごく機能的で、骨組みが24本あって強度があるので曲がっても骨が折れないんです。番傘の美しいフォルムを意識しつつ、機能面では最新の技術を取り入れ、より一層使いやすいアイテムになっています。
強風にも耐えるグラスファイバー製骨で、よくしなって折れにくい。
―透かし柄にもこだわりが?
林 「江戸」は24本の親骨から成り立つモダンな機能美にフォーカスし、それまでは全体に和の雰囲気が強かった傘に、洋傘のプロダクトデザインの要素をプラスしました。普遍的なアイテムとしてずっと使っていただきたい、という思いのもとディティールを整理し、さまざまな装いにフィットする、洗練された外観へと変化を遂げました。
色や柄に関しては、従来から親しんでいただいていた日本の伝統色と和柄というブランドの財産を継承しています。「mabu」のシグネチャーシリーズとして育って欲しいというところから、黒や紺、赤色といったベーシックな色も、日本の色の持つ侘び寂びのような奥行きを表現できるよう、何度も色出しを行い決定しています。
江戸切子シリーズは直線的絵な柄が活きるキリッとした配色シリーズ、遮光傘を展開している小紋シリーズは柔和な華やかさをコンセプトに、何度も何度も染め色をやり直して、色彩設計をしています。日本の伝統色に乗せる模様はエンボス加工で表現しています。光の加減によって見え隠れするので、時には無地のように、時には模様が鮮明に見えるなど、天候によって違った表情をお楽しみいただけます。
描いている模様は、和の柄でも縁起の良い『吉祥文様』。模様により意味は様々ですが、雨の日の憂いがなくなりますように、という外出時の安全の願いを込めています。
「江戸」シリーズはその日のコーディネートに合わせて使っていただけるよう、13色で展開しています。一般的に雨傘は3色や4色で展開していることが多いのですが、当社では13色をご用意しました。
一般的な傘は骨が8本ですが、「江戸」は24本あるので、骨だけで普通の傘の3倍ある分重くなってしまいます。持ってもらいやすくするために極力軽くするのにも苦労しました。また、組み合わせる生地のコマは一般的な傘より小さく枚数が3倍あるので、1本の「江戸」の傘を作るために一般的な傘の3本分くらいの工程と労力がかかっています。
「江戸」は商品化までに1年以上はかかっています。色の一つ一つ、パーツの一つ一つにこだわって、工場さんや染屋さんなどさまざまな方に協力いただいて作った長傘です。
「江戸」は12本骨折りたたみ傘もラインナップ。
―使っているお客様からの声で印象深いものは?
林 デザインや強度がよいとレビューをいただくことが多いです。たくさんの方から評価をいただいて本当に感謝しています。季節になると各地の駅やデパートなどでポップアップストアを開催するのですが、多くの方から驚かれるのは「この値段ですか?」ということ。日常の買い物として買えることをコンセプトにしているので、価格の低さに喜んでいただいています。少し得した気分で嬉しい気持ちになっていただければこちらも嬉しいです。自分用に購入されるのももちろんですが、お友達やご家族に買っていきますというお声をいただくのもとても嬉しいです。
価格の話でいいますと、代官山でポップアップストアを開催していた時に、「江戸」を1本持ってきてレジで10倍の金額を出された方がいらっしゃったのです。「江戸」が1本4~5千円なので、4~5万円で精算しようとなさいました。「10本ご購入ですか?」とお聞きしたら「1本です」とおっしゃるので、価格を説明したらとても驚かれていました。今となっては笑い話ですが、機能やデザインからそれくらいの価値があると評価いただいたということですので、とても印象深い出来事でした。
また、先ほど歩道橋の上から「mabu」の傘が一面に見えたら、という話がありましたが、とあるリゾートホテルに泊まった時に雨が降ってきて、部屋のバルコニーから外を見ていたら「mabu」の傘だらけだったのです。どういうことだろうと驚いて下に行ったら、ホテルの方がお出迎えをする時に当社の傘を使っていただいていました。そのように使っていただいていることを知らなかったので、支配人さんを呼んでいただいてお礼をお伝えしました。
このようにお客様と直接関わらせていただく機会があって、こちらが“ちょっとイイコト”を体験させていただいています。
バンブーとタッセルがおしゃれで女性らしいデザインの「江戸」の12本骨遮光ショート 江戸
―新商品の晴雨兼用の遮光傘「江戸」についても教えてください。
林 近年気候変動によって暑い日が多いので、日傘にもなる晴雨兼用の傘はないかというお声も多くなりました。「mabu」はユニセックスのデザインがメインなのですが、もっと女性らしいデザインの傘がないかというお声もあり、企画開発した商品です。
サイズは女性が持ちやすいように雨傘にしては少し小さめの、一般的な日傘のサイズになっています。ただの日傘ではなく雨の日でも使えて、裏地が黒いのでより紫外線を通さない仕組みになっています。持ち手はバンブー(竹)の素材で、生地の色に合わせたタッセルも付いています。「江戸」は骨の先端のパーツがシルバーで大きめの金具なのですが、細部まで女性らしいデザインにこだわりゴールドで繊細な金具を採用しました。ブランドタグも、他の商品では黒字に白抜きで「mabu」と刺繡するのを、白地に黒文字にすることで柔らかい印象に変えています。
長傘と折りたたみタイプがあり、カラーはどちらも同じ色で5色展開です。折りたたみタイプは、当社の女性社員からたたむのがうまくいかないという声がありました。袋に入れるためにはぴちっとたたまなければいけないので難しいと。そこで袋は余裕をもたせた大きめのサイズにして、雑に巻いてもガサッと入れられるようにしています。巾着型になっているので、バッグにかけて持ち運べます。重さは150gほどで、一般的な折りたたみ傘は200~300g程度なので、とても軽量です。もちろん強度も「江戸」と同じで曲げても骨が折れず、ひっくり返ることもほとんどありません。女性社員からの意見もあって、ネイルガードも採用しています。
こちらも販売まで1年かけて企画しました。2024年3月中旬から下旬ごろに販売開始いたします。
「江戸」の7本骨遮光傘。
―まさに女性が好きなツボを全部おさえたデザインと機能ですね。
林 SDGsの観点から見ても、ビニール傘って問題だと思うんです。強風でひっくり返ったら骨が折れて、全部ゴミになってしまいます。それなら最初から強度のある丈夫な傘を、長く大切に使っていただきたいと思います。
―今後の方針やビジョンについて教えてください。
林 弊社では顧客満足度、社員満足度、地球満足度を最大化していこうとミッションを掲げていますので、今後は環境にも配慮した商品をどんどん展開していこうと思っています。中でも、今年は環境に優しいコンセプトの傘を3件特許出願していますので、順次発売していく計画です。「mabu」は機能的なものにデザインをのせていくというコンセプトの持つ人を選ばない傘ですが、そこに環境というテーマを加えていきたいなと。
気候変動の影響で、年々天候が変わっています。梅雨に雨が降らなかったり、猛暑が秋になっても終わらなかったり、地球環境がどんどん壊れていることを実感します。当社は気候や天気に関係する商品を扱っていますから、より一層SDGsを意識した商品開発を進めていくことが重要だと思っています。環境に優しい材料を使い、もっと長く使い続けてもらうための仕組みや構造を採用していきたいです。今までの機能性とデザインにプラスして、環境に配慮した商品を大切に使っていただけるような仕組みを作っていきたいと思っています。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
超軽量24本骨傘「江戸」(親骨の長さ:60cm、開いた時の直径:約103cm、全長:約87.5cm、重さ:約470g)
価格:¥4,290(税込)
店名:mabu
電話:0120-444-149(平日10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.mabuworld.co.jp/fs/mabuworld/2019/smv-4029
オンラインショップ:https://shop.mabuworld.co.jp/
12本骨遮光ショート「江戸」(2024年3月発売)
価格:¥4,950(税込)
店名:mabu
電話:0120-444-149(平日10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.mabuworld.co.jp/fs/mabuworld/smv-4195
オンラインショップ:https://shop.mabuworld.co.jp/
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林崇之(株式会社SMV JAPAN 代表取締役)
1964年三重県伊賀市に生まれ、31歳の時にノベルティ会社を創業。事業拡大に伴い2002年には、約8,000m2の国内自社物流センターと、上海でオフィスを構えるファブレス企業として成長。2008年には、傘のブランド「mabu」を設立。2018年に3社合併し、代表取締役に就任。
<文/藤原志帆 MC/伊藤マヤ 画像協力/SMV JAPAN>