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世界が認める和製仕立て技術の集大成「やわらかデニムスラックス」「OSAKUライン」

2024/05/28

今回はメンズアパレルのなかでも「スラックス専業」という孤高のメーカーのスラックスに、編集長のアッキ―こと坂口明子が注目。それは、イタリア・フィレンツェで毎年開催される世界最高峰の展示会に出展し、日本の手作り縫製技術を世界に向けて発信し続けている株式会社エミネントです。
日本の衣料業界の復権に全力を注ぐ代表取締役社長の髙野圭右氏に、長崎県松浦市の中核ファクトリーをはじめとする製品への並々ならぬこだわりと情熱が感じられるお話を、取材陣が伺いました。

株式会社エミネント 代表取締役社長 髙野圭右氏
株式会社エミネント 代表取締役社長の髙野圭右氏

―どんな学生時代をお過ごしになりましたか?

髙野 私は奈良県に生まれ、中学・高校時代は部活でテニス部に所属し、大学時代は文化部のギターマンドリンクラブでクラシックギターを弾いていました。

大学の専攻は経済学部です。第1志望は奈良県という環境もあり、文学部の考古学を志望していました。しかし、実家が会社を経営しており、自分の意向があまり通る環境ではなかったですから、実用的な経済について学びました。
卒業後に銀行に就職し、7年勤めたあと1998年に株式会社エミネントに入社しました。

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他のカジュアル仕様のデニムと差別化した「大人のデニムパンツ」。
風合いをよりナチュラルでソフトに仕上げるために、製品洗いを行なっている。

―御社の歩みをお聞かせください。

髙野 戦争中に会社が焼けてしまって過去の歴史をひも解くことができないのですが、もとをたどれば1872年(明治5年)に6代前の先祖が福井県の勝山市から移転した大阪市石町で、「越前屋」の屋号で商売を始めたのが会社の起源と聞いています。
創業時は軍人の制服を作っていたのが、戦時中に国の指示により奈良の生駒で飛行機の部品を製造していた時代もあったそうです。

―スラックス専門で創業された経緯を教えてください。

髙野 戦時中に長男が戦死したため、次男であった祖父が家を継ぐことになりました。戦争が終わると、周りは軍服からスーツに切り替えが進んでいました。
そこで、祖父は皆と同じようにスーツを手がけるよりも、ズボンに特化しようと考えたようです。

聞いた話ですが「スーツの上着を脱いでも、ズボンを人前で脱ぐことはない」と、祖父は日本の男性の多くが長い時間スラックスをはくので堅い商売と考えたそうです。そして専門として日本一を目指し、会社を創業したという経緯です。

―創業当初からの御社の価値観や信念などについて教えていただけますか。

髙野 生地の開発・縫製のこだわりは変わっていません。デザインや機能は時代に応じて変化していますが、創業当時から生地メーカーとタイアップしてオリジナルの糸を作る開発意欲は続いています。

当初は他社に委託して製品を製作してもらっていましたが、創業から11年経った1960年に差別化するため、東大阪に縫製工場を建てました。そこから今日まで自分たちのオリジナル生地の縫製にこだわり貫いているのは、1つの信念といえるのではないでしょうか。

―経営面で大切にされていることは?

髙野 弊社では「ファクトリーtoコンシューマー」という考え方を、社内に定着させています。いかに工場と企画の思いを大切にし、正確にお客様にお伝えしていくのか、これが私たちの使命だと考えています。

そのために、販売スタッフに長崎の縫製工場まで足を運んでもらい、工場の中で作り手と売り手のコミュニケーションをとってお互いを知ってもらうカリキュラムを組んでいます。
そこで販売スタッフがアイロンがけやプレスをして体感したことを、直接お客様にお伝えしていく、こうした試みを実践しています。

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コア生産拠点の松浦工場。熟練の職人が手作業でていねいに仕上げている。

―「やわらかデニムスラックス」開発の背景は?

髙野 メンズスラックスは2000年頃からカジュアル化が一段と進み、コットンのカジュアルパンツから派生したものが求められ、テンセル(リヨセル)複合のストレッチタイプなどが一世を風靡していました。

その流れのなかでデニムパンツも開発されていましたが、「風合いが硬い、ストレッチ性・寸法性が良くない」などのデメリットがあり、なかなか良いものは登場しませんでした。
しかしその後、弊社取引先のプロフェッショナル集団「匠チーム」との画期的な開発によって、デニム特有の問題を解決できるモダール(レーヨン)を使うことに成功したのです。

それをもとに弱点を克服しながら完成させ、2009年の春夏商品から当商品の販売をスタートしました。「5ポケットデニムは窮屈ではきたくない」といった方々からソフトな風合いが支持され、ベストセラーへと成長しました。

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デニムスラックスの原料は綿58%ポリエステル26%、
レーヨン(モダール)15%、ポリウレタン1%。
インディゴの生地はデニムのトップメーカーで生産している。

―商品の開発で苦労されたことは?

髙野 もちろん、従来のセルロース系繊維をそのまま使用してうまくいったわけではありません。コットンデニムは硬い風合いになりがちのため、ソフトにするために新しくモダールで手触りがソフトな風合いを出そうと開発を進めました。
当初はポリウレタンでストレッチ性を出そうとしましたが、重く感じることとサイズに安定性がないことが欠点でした。

研究の結果、東レ社の関連会社の開発で新しい糸を考案しました。これは糸の真ん中のポリエステル系弾性糸をモダールで包むことで、ソフトで滑らかな風合いと糸の中間にある弾性糸の伸縮性を実現したものです。
この糸を使用することで、ソフトで肌触りの良いデニム生地を完成させることができました。

―「やわらかデニムスラックス」にまつわるエピソードを教えてください。

髙野 接客をしていた時、「5ポケットのアメリカンジーンズにちょっと抵抗があってはけなかった」と話しながら、ビジネスタイプのシルエットで生地がデニムの当商品をお求めになったご年配のお客様を思い出します。

実は私ども、発売後も以前よりストレッチ性を高める改良を行なっています。これはシルエットのスリム化による窮屈感を解消するためで、ポリウレタンを1%入れて伸長率を25%以上アップさせ、2022年に再デビューさせています。
そうした努力がどれだけ貢献したかは分かりませんが、そのお客様の奥様が「デニムをはく夢がかなえられて良かったね」と、お客様におっしゃっていたのがとても印象的でした。

―「OSAKUライン」が誕生した背景は?

髙野 コロナ禍でリモートワークが浸透し、いままでスーツを着ていた人も脱ぎはじめ、パンツはスラックスではなくゴム付きのシャーリングパンツへと変化しました。
弊社もシャーリングパンツの製品化に乗り出しましたが、「スラックスメーカーである我々が本当にこのままでいいのか」と、一抹の不安を拭うことができませんでした。

スラックスを作り続けて今年で75年を迎える会社としてもう一度、本物のスラックスとはなにかの本質に立ち返り、「あるべき仕様とあるべき形を追求し、日本だけでなく世界に通じるスタンダードスラックスを作りたい」と思いました。
その強い思いから、パンツテーラーの尾作隼人氏と共同開発でスラックスを作るプロジェクトが始まり、完成したのが「OSAKUライン」です。

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これまでに培ってきた技術に加え、
尾作隼人氏のテーラーノウハウを借りて完成。

―「OSAKUライン」の特徴は?

髙野 この商品はある意味、原点回帰的なものとなっています。
スラックスは男性の下半身を支えているアイテムであり、耐久性が非常に求められるものです。一方、耐久性の高い素材を使うと生地のゆとりが少なくなり、脚が動かしにくいデメリットが生じます。

今回、尾作氏が作成したパターンと当社工場の縫製、アイロン技術によってそれを克服。昔ながらの手法を復活させ、耐久性がありながらはき心地に優れ、脚さばきのよいものに仕上げました。

デザインは飽きのこない端正なものです。大切なシルエットは、人体にぴったりと曲線で沿う2プリーツ。従来のプリーツと違い、スタイリッシュに見えるのが大きな特徴です。股のあいだ部分の切れ上がりもよく、足長効果を得ることができるシルエットに仕上がっています。

―御社のブランドで海外の展示会にも出展を?

髙野 はい、イタリアのフィレンツェで年2回「PITTIUOMO」という展示会が開催されます。世界中から2万人のバイヤーやジャーナリストが集まり非常に盛り上がる、紳士服では世界最大級の展示会です。おかげさまでこの展示会に2024年1月に出展して13回になりました。

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メンズプレタの世界最高峰の展示会「PITTI UOMO」に「ECHIZENYA」ブランドとして出展。
世界各国で取引拡大中。

髙野 このイベントは製品の発表にとどまらず、メンズファッションとトレンドの発信源となっています。そのため、私たちは日本の中小アパレルになにができるか、日本の技術を世界にどれだけPRできるかという挑戦を、このイベントを通して行なってきました。

実際に、イギリスの老舗テーラーさんなどからの引き合いを多くいただいています。海外に弊社製品を発信して評価をいただく絶好の機会となり、現在では世界17ヵ国に輸出するまでに至っています。

―今後の展望をお聞かせください。

髙野 弊社の現状はOEMのオーダーが全体の6~7割ですので、日本のアパレルショップやセレクトショップからのオーダーがないと工場が回らない状況です。
そのため、私たちの持っている技術をセレクトショップさんにも提供させていただいています。業界全体としてもメイドインジャパンの比率が1.5%内外と言われるほど落ちていますので、お互いの工場間で出せる情報はどんどん共有したいと考えるからです。

事業目的のなかにも「日本のスラックス文化の発展と継承に対して責任を持つ」と謳っているように、開発したものを他社にも提供しながら、今後とも衣料業界発展の礎になる活動を実践していきたいと思います。

―本日は素敵なお話をありがとうございました。

「【レギュラーシルエット】やわらかデニムスラックス 《通年モデル》」

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店名:EMINENTO SLACKS ONLINE
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オンラインショップ:https://www.eminento.jp/onlineshop/

「OSAKUライン」

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電話:0120-907-121、携帯からは03-5695-2086(10:00~17:00、土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.eminento.jp/fs/eminento/c/osaku
オンラインショップ:https://www.eminento.jp/onlineshop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
髙野圭右(株式会社エミネント 代表取締役社長)

1968年奈良県生まれ。1991年、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。1998年、株式会社エミネントに入社。2005年、代表取締役社長に就任。日本の縫製業の継続発展に尽力。一般社団法人日本メンズファッション協会理事兼任。

<文・撮影/田中省二 MC/矢口優衣 画像協力/エミネント>

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