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【解説動画付き】初心者でも楽しめる!かぶれにくい天然うるしを使う「金継ぎセット」

2024/06/05

お気に入りの器が欠けたり割れたりして、捨てるのが忍びない…と思ったこと、ありませんか。そんな器を、うるしを接着剤としてつなぎ合わせ、金粉を蒔いて装飾することで、おしゃれに蘇らせることができるのが金継ぎです。今回アッキーこと坂口明子編集長は、日本の伝統的な金継ぎの手法を自宅で手軽に楽しめる「かぶれにくい金継ぎセット」に注目。手がけているのは、日本のうるし搔き職人発祥の地といわれる福井県で、100年以上前からうるしを精製・販売している箕輪漆行です。初心者にこそチャレンジしてもらいたい、と語る蓑輪社長に取材スタッフが話を伺いました。

株式会社箕輪漆行 代表取締役社長 蓑輪利一氏
株式会社箕輪漆行 代表取締役社長の蓑輪利一氏

―初心者向けとのことですが、どのようなセットなのですか。

蓑輪 割れや欠損を接着補修するうるしと、上から蒔く金粉、うるしを塗る筆、混ぜる皿、ヘラなどから、拭き取ったり洗ったりするための油や綿棒、作業中にはめるゴム手袋まで、金継ぎの工程に必要な材料と道具一式が入ったトライアルキットです。プロセスを丁寧に写真で追った説明冊子付きですので、継ぐ器をご準備いただければ、あとは自宅にある材料だけでどなたでも始められます。

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左上の箱に、必要な材料や道具が15種類入って届きます。
箱の下が11ページに渡る説明冊子。

―金継ぎの工程を簡単にご説明ください。

蓑輪 まず最初に、割れている器であれば、水で練った小麦粉(自宅でご用意ください)とうるしを混ぜたもので接着します。欠けた器なら、欠損部を専用の粉(砥の粉)とうるしを混ぜたパテのようなもので埋め、形をととのえます。どちらも乾燥させてから、うるしで線を描いたり塗り広げたりし、上から金粉を蒔いて装飾します。このセットでは、平磨き法といって金を蒔いたあと更にうるしを重ね、砥石粉で磨くことで艶のある美しい金色の仕上がりになる技法が習得できるのですが、初めての方でも簡単にできるように、できる限り工程を少なくした内容になっています。

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接着面の上に細い筆を使ってうるしで線を描く工程。
慣れるまではドキドキ!

―うるしが2種類入っていますが、どう使い分けるのでしょうか。

蓑輪 ひとつは「生漆(きうるし)」といって、ヘラで塗って断面を接合したり、欠損部分を埋めるパテと混ぜ合わせたりするなど、おもに接着と補修に使います。もうひとつは「練弁柄漆(ねりべんがらうるし)」といって、接合した部分に筆で塗り、上から金粉を蒔いて定着させるためのものです。うるしは少量で効果を発揮しますから、この2種があれば、十分金継ぎを楽しむことができますよ。

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うるしは残ったら冷暗所で保存。
生漆は1年程度、練弁柄漆は5年以上使えるそう。

―御社は、長い歴史をもつ、うるし販売の会社なのですよね。

蓑輪 うるしの製造と販売を行っています。もともとは天正時代…、16世紀の後半にさかのぼるのですが、庄屋の家系だったそうで、さまざまな物を扱うなかに、うるしもありました。さらに福井には、越前打刃物(えちぜんうちはもの)といって、包丁や鎌など、日本刀だけにとどまらない刃物の名産地としての側面もあります。そのなかに、うるし搔き用の特殊な鎌もあって、販売していたそうです。江戸時代に入ると、うるし搔き職人たちがこの鎌を持ってうるしを求め、日本全国を飛び回るようになります。福井藩の保護も受けて、販路はどんどん広がっていったのだとか。

―だから、福井県が日本のうるし搔き職人発祥の地といわれるのですね。

蓑輪 私の先々代にあたる祖父の代までは、当主もうるし搔き職人兼任だったんです。うるしの木に傷をつけ、染み出てくる液を一雫ずつ集めるうるし搔きは、気の遠くなるような作業です。その年の気候や採取された土地などの環境によって品質に差が生まれるため、高品質のものを安定して提供するには、豊かな経験と、色・艶のオーダーなどお客様の要望に忠実にお応えできる技が必要となります。お客様の要望を聞いているうちに、うるしに関する技術を高めていきました。

―今では国内のうるし販売シェア40%を占めるとか。

蓑輪 年間9トンという、日本最大量のうるしを扱っています。さらに、木地、顔料、刷毛類、筆、研磨剤など、取り扱い商品は5000点あまり。うるし関連ならひと通り揃う豊富な品ぞろえが成長の要因と捉え、とにかくお客様の要望に耳を傾けるようにしています。

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うるしの製造場の様子。昔ながらの木桶を使って精製しています。

―金継ぎ商品開発のきっかけを教えてください。

蓑輪 漆器や伝統工芸品の産地、仏具のメーカーさんなど、日本各地のお客様とうるし販売を通じてコミュニケーションをとるなかで、ここ10年くらいでしょうか、金継ぎにまつわる商品の話題やオーダーが増えてきたんです。各地に金継ぎ教室ができ、蒔絵の先生などから「金継ぎ用のうるしはありませんか」とか「うるしを扱いやすくする道具はないだろうか」といった問い合わせが来たり、個人で金継ぎを趣味とする方が注文してくださったり…。そういった要望にできるだけお応えできるよう、金継ぎに特化した商品も扱うようになりました。今回のセットはそんななかから生まれた、いわばお客様の要望を集約するようにしてできた商品なんです。海外からのオーダーも増えていて、希望されれば英語版の説明冊子もお送りできるんですよ。

―世界中で金継ぎがブームですよね。

蓑輪 金継ぎ自体は、安土桃山時代に確立したとされる日本の伝統的な器の修復の手法なのですが、欠けても割れても捨てずに使い続ける、そのもったいない精神が今の時代にしっくり来ているのだと思います。さらに、何といっても金がもつ華やかさです。修復箇所を生かしながら、金粉を使って世界にひとつしかないオリジナルのアート作品を作れるのですから、クラフトやDIYといった手仕事好きな方にはたまらないですよね。

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修復しながら大事に使うという考え方と美しさの共存が、
世界でも注目を集めています。

―金継ぎコンテストも開催されたそうですが。

蓑輪 「かぶれにくい金継ぎセット」を使って修復した作品の画像を送っていただいて、昨年、第1回金継ぎコンテストを開催しました。おかげさまでたくさんのご応募をいただき、あらためて金継ぎ人気を実感した次第です。また、その作品のクオリティの高さにも驚きました。

―インスタで拝見しました。どれも素敵ですね!これができるならと、やってみたくなります。

蓑輪 難しそうに見えるかもしれませんが、分からないことがあれば、ご購入者には弊社のうるしアドバイザーが電話で無料対応もしますので、安心してチャレンジしてみてください。コンテストも第2回、3回…と継続していきたいと思っていますので、ぜひご応募を(笑)。今後は、だれでもお披露目できるよう、でき上がった作品を投稿できるようなサイト制作も予定しているんですよ。

―かぶれやすくても大丈夫でしょうか。なぜかぶれにくいのか教えていただけますか。

蓑輪 うるしは、近寄るだけでかぶれてしまう人から素手で触ってもまったく大丈夫な人までさまざまいて、こればかりは扱ってみないとわかりません。人によって症状もいろいろです。残念ながらかぶれてしまう場合、皮膚のタンパク質とうるしが反応してアレルギー症状を引き起こすといわれていて、この商品ではあらかじめ、うるし自体にタンパク質を混ぜて反応しにくくしてあるので、かぶれにくいのです。ごくまれに体調の悪い時だけ反応してしまう人などもいますので、付属のゴム手袋をして作業してください。通常は、数回かぶれると免疫ができるといわれています。

―人工的なうるしということなのでしょうか。

蓑輪 いいえ。天然のうるしです。このセットでこだわったのは、あくまでも本物のうるしと純金粉を使っていただきたい、というところでした。金継ぎブームにのって、さまざまな金継ぎセットが売られていますが、なかには代用うるしと代用金で安く短時間で済ますような簡易なものもありますよね。確かに化学的な接着剤でくっつけ、コーティングされたような金色の塗料で塗ればあっという間にそれっぽく仕上がるとは思います。でも、それでは口に入れるものをのせる食器としての安全性が保障できませんので、仕上がっても使っていただけません。このセットでは、練習用の代用金も食器として使えるものをチョイスしてあります。何より、本物の手仕事のよさを実感していただきたい。ビギナー向けだからこそ、本物から入っていただきたいのです。

―天然うるしのよさって何でしょう。

蓑輪 うるしの木に傷をつけ、生命反応として染み出してくる液が、天然うるしです。その自然の恵みは、1本の木からたった5g前後。科学技術が飛躍的な発展を遂げた今も、そのうるし搔きの方法はまったく変わることなく受け継がれています。有機溶剤など有害物質を一切含まず、環境に優しいうるしは、接着剤として大変優れています。はがれにくいのに柔軟性があって、衝撃に強い。例えば落として割れた器を金継ぎして、もう一度同じように落としたとしても、今度は割れません。耐水性や防腐性も高く、紫外線に長時間あたらなければ数千年もち、器の寿命が尽きても自然に還っていくのです。ちなみにヨーロッパでは、うるしのことを「japan」と呼ぶらしく、これも日本のうるしや漆器が高い評価を受けている証だと思います。

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昔から受け継がれてきた、うるし搔き専用の鎌を使う天然うるしの採取。

―どんな方にこのセットを使っていただきたいですか。

蓑輪 ものづくりが好きで、手仕事の楽しさを味わいたい、と思う方にぜひ使っていただきたいです。うるしは乾燥するのにどうしても時間がかかります。でも本物の金継ぎは、今日始めて今日中にパッと終わるようなものではなく、気温や湿度、器の様子と相談しながらじっくりと向き合うのが醍醐味なのです。私自身も半年ほどかけて金継ぎを習いましたが、最初のうちはうまくいかず、説明書と格闘しました(笑)。その分、仕上がった時の喜びはひとしお。一連の流れを撮った解説動画もありますので、見ていただいて、やってみたいなと思ったらぜひ、金継ぎ仲間に加わってくださいね。

―金継ぎをきっかけとして、うるしという日本の文化の奥深さに触れることができました。本日は、ありがとうございました!

「かぶれにくい金継ぎセット(平磨き法)」
セット内容:かぶれにくい金継ぎ用生漆×15g、かぶれにくい練弁柄漆×15g、ガムテレピン油×100cc、面相筆(小)×1、あしらい毛棒(小)×1、純金平極粉×0.2g、練習用代用金粉×10g、プラベラ×30mm、真綿×1袋、小皿×1枚、ゴム手袋×1双、砥の粉×50g、耐水ペーパー#600×10cm、鳴滝砥石粉10g
価格:¥14,300(税込)
店名:箕輪漆行オンラインショップ
電話:0778-43-0055(8:30~17:30 日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://urushiya.ocnk.net/product/1578
オンラインショップ:https://urushiya.ocnk.net/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
蓑輪利一(株式会社箕輪漆行 代表取締役社長)

1974年、福井県生まれ。1993年に箕輪漆行に入社し、2016年箕輪漆行代表取締役社長に就任。

<文・撮影/亀田由美子 MC/矢口優衣 画像協力/箕輪漆行>

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