使うほどに味が出て、経年変化を楽しめる製品染めのバッグ。革の状態などによって染まり方もまったく異なり、同じものは二つとありません。そんなバッグに、編集長アッキ―こと坂口明子が注目。日本製にこだわって製作を続けている株式会社リリー 代表取締役の加藤大統氏に、製造秘話を取材スタッフが伺いました。
使うほどに味が出る、愛着が湧く。世界で一つだけの製品染めバッグ。
2024/06/06
株式会社リリー 代表取締役の加藤大統氏
―御社のコンセプトを教えてください。
加藤 リリーは主に、レザー製品のデザイン企画・販売・物流を行なっています。大事にしているのは「消費者の皆さんが本当に満足するものを作って売っていく」ということ。購入される方が「どう思うか」、それが一番の判断基準です。
その上で、厳選された素材にこだわり、日本の匠が作った高い品質の製品を身に着ける喜びを提供していきたいと考えています。当社は「新たなファッションスタイル」を創造すると発信していますが、バッグはやはり服飾雑貨の部類。
例えばファッション誌でも、このバッグに合うファッションというような特集は、なかなかありません。だからこそ「このバッグを持ちたくて、この服を選ぶ」というような価値のあるバッグ、存在感のあるバッグを作っていきたいと思っています。
―こだわりを具体的に教えてください。
加藤 ひとつは、日本製であることです。海外製品も多い時代ですが、どうしても商品に対しての思いや作るまでの過程、ストーリーが見えにくい。加えて、国内には大ベテランとなった高齢の職人さんがまだまだ製鞄を続けています。バック業界をずっと支えてくださった方々もたくさんいる。
職人さんたちが続けてきたことが、この先の50年でなくなってしまったら寂しいですし、次代の職人さんも育んでいきたい。そうした意味でも、日本製にこだわっていきたいと思っています。
それから、もう一点。修理対応のことがあります。国内で製造しているので、修理時間も2週間ほど。他の作業を止めてしまうこともあるのですが、これは、国内で血の通ったメーカーさんとのコミュニケーションがないとできないものです。そのあたりも、日本製にこだわる大きな要因です。
「フォロ ショルダー大 」(写真左)は、男女ともに使いやすい小ぶりサイズ。
「フォロ ショルダー小」(写真右)は2way。ウエストバッグや肩がけで使用できます。
―そうして作られているのが「FORO(フォロ)」シリーズの「フォロ ショルダ大」「フォロ ショルダー小」ですね。
加藤 リリーを代表するのが「FORO」シリーズです。大きな特徴は、馬のヌメ革を使っていること。通常、バックは牛の革を使うことが多いのですが、馬は牛よりも丈夫です。触ったときの質感もよく、染めたときのオイルの入り具合、経年変化の出方なども美しい。そのため使用しています。
それから、もう一つ。製品染めも特徴です。製品染めとは、製品の形にしてから染色する、珍しい方法です。人の肌と同じように、馬の革も一つひとつ違います。部位によって染まり方もまったく異なるので、濃く染まったり薄く染まったり。でき上がるまで、どのように染まるかわからないのも面白さです。
上蓋やポケットだけ色が薄いこともあるので、通常では不良品だと思われてしまうかもしれません。でも、それが製品染めの良さであり、味。一点もののようになっていて、同じバッグができないのです。染め上がったときに、すでに雰囲気のある製品になっている。それこそ「FORO」シリーズの最大の魅力だと思います。
「フォロ ショルダー小」のウエストベルトは外すことができます。
ぷらっとしてしまう留め具はスナップボタンで止めるとスッキリする工夫が!
―「フォロ ショルダー大」はショルダー型、「フォロ ショルダー小」はショルダーバッグとボディバッグの2Wayですね。
加藤 「フォロ ショルダー大」のショルダー型は、購入される年齢層が本当に幅広いバッグです。「フォロ ショルダー小」は、ショルダーバッグとボディバッグの2Wayで使用できるタイプで、ウエストベルトを取り外すことができます。
このウエストベルトを取ってしまうと、留め具のところがぷらぷらっとしてしまうのですが、バッグの裏側にあるボタンで止められるようになっていて。一見、ムダのように見えるかもしれませんが、キレイに使えるようにしています。それもこだわりです。
使い込むほどに味が出るバッグ。
キャメルも生成り(白ヌメ/右)も美しく、選ぶのに迷いそう。
―その他のポイントも教えてください。
加藤 まずは、裏地です。裏地は後から付けています。もともと、製品染めの際に、裏地も付けて染めていました。でもその場合、中に入れるものに色移りしてしまう。例えば、ハンカチに色移りしてしまうと使えなくなってしまう。それでは、お客様にもデメリットです。
そうしたことを解消するために、裏地を後付けにしました。また、色に関してもポイントがあります。「フォロ ショルダー」も「フォロ ショルダー小」も「キャメル」と「生成り」の2色展開。「キャメル」は製品染めをしたものですが、「生成り」は染める前の白ヌメの状態です。この「生成り」は、使い込むと色がどんどん変化していくのですが、少し使っていただいた後に、「キャメル」に染めることができます。
染め直しサービスは無料で実施していて、そういう遊び心を入れているのもポイントです。ただ、白ヌメで使い始めると愛着も増すようで。そのままご使用になる方も多いです。
―おすすめのお手入れ方法を教えてください。
加藤 個人的に使っているのはスキンケアクリームの「ニベア」です。少しの量を塗っています。タイミングとしては、革がカサカサしてきたとき。保湿をするために、ちょっと塗り込む程度がおすすめです。
雨の日などで濡れてしまった場合も、少し塗るといい。ただ、正直に言うと、そこまで頻繁にお手入れはしていませんし、気軽に持っていただいた方が楽しめるかなと思います。
―最後に今後の目標やビジョンを教えてください。
加藤 海外にも販路を広げていきたいと思っています。当社の製品染めは品質が高い。真似しようと思っても簡単にできるものでないですし、職人さんの技術があるからこそできるものです。日本の高い技術を含めた製品を、海外で提案をしていきたいという思いがあります。
また、あくまでも個人的な考えですが、いつかアメリカ・テキサスのカウボーイが持ってくれたらうれしい。馬が好きな彼らが使ってくれたら楽しいだろうなと思います。そんな「FORO」シリーズは、日本では購買層が本当に広く、うれしいことにご夫婦でお使いいただける場面も多い製品です。
老若男女問わず愛用できるので、海外も含めていろいろな方にお使いいただきたいです。日本の匠が作るこだわりのバッグを、その魅力を、今後も届けていきたいと思います。
―貴重なお話をありがとうございました。
「フォロ ショルダー大」(約580g)
カラー:キャメル、生成
価格:¥30,800(税込)
店名:LILY co.,ltd.
電話:052-411-1666(9:00~17:30 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
公式HP:https://lilys.co.jp/
商品URL:https://lilys.co.jp/products/lily-110066/
「フォロ ショルダー小」(約650g)
カラー:キャメル、生成
価格:¥31,900(税込)
店名:LILY co.,ltd.
電話:052-411-1666(9:00~17:30 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
公式HP:https://lilys.co.jp/
商品URL:https://lilys.co.jp/products/lily-110029/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
加藤大統(株式会社リリー 代表取締役)
1975年愛知県生まれ。1998年に大学を卒業後、テキスタイルや雑貨の企画を経て、2010年株式会社リリー入社。お客様との距離感の近さに魅力を感じながら企画、営業に尽力。2023年に代表取締役就任。リアルマインド、レバント、レッセフェールの自社3ブランドを手掛ける。また、修理やアフターケアにも全力で取り組む。
<文/青柳舞子 MC/伊藤マヤ 画像協力/リリー>