日本の伝統を表現するメイドインジャパンの腕時計「Knot(ノット)」。ハイブランドクオリティをリーズナブルにカスタムオーダー

2024/06/24

今回、編集長アッキーの目に留まったのは「漆金銀重ね(うるしきんぎんがさね)」と「螺鈿 墨(らでん すみ)」の腕時計。高級時計のクオリティを標準搭載しながら、手の届く価格で提供されています。さらに、10万通り以上の組み合わせのなかから、カスタムオーダーを楽しめるのも嬉しいポイント。そんな日本の伝統工芸とコラボした唯一無二の腕時計を製作する、株式会社Knotの代表取締役、遠藤弘満氏に取材陣が伺いました。

株式会社Knot 代表取締役の遠藤弘満氏
株式会社Knot 代表取締役の遠藤弘満氏

―なぜ腕時計にこだわられたのですか?

遠藤 通信販売会社のバイヤーを経て、2003年に輸入商社を設立しました。当時はWebが普及しはじめた頃で、海外の商品は現地に行かなければ見られない時代でした。

そのため、商品の見本市を見るために年の半分くらいは海外に行っていたのです。そこで日本では売っていない売れそうなものを買い付けて、日本で売っていました。

そんななか、テレビドラマで使用する軍用ウォッチを探して来てほしいと要望を受けました。ドイツの軍用ウォッチでしたが、すでに代理店がいる腕時計だったため、最初は断りました。しかし「それでもいいから行ってこい」と言われ、渋々行くことに(笑)。

アポなしで行ったところ、その会社の社長に叱られ、現地の日本代理店にも叱られ、散々な思いをしました。

しかし、そのときに叱ってくれた現地代理店のN氏が後の大恩人になります。その日の夜、家に泊めてくれたのですが、その方は私も海外製品の情報収集に愛読していた、当時日本で大人気の男性誌(大人の男の趣味を紹介する雑誌)のヨーロッパ支社長さんでした。

「腕時計に興味があるなら、3〜4月にスイスでバーゼルフェアという見本市があるから、来年おいで」と誘ってくれたのです。野田さんは記者なので、普通は立ち入れないところにも入れてくれました。そこで時計のことを教えてもらいました。

時計の知識がついたところで出合ったのが「LUMINOX(ルミノックス)」というアメリカの軍用ウォッチです。軍用ウォッチは黒やカーキなど地味な色が主流です。一方でLUMINOXの時計は、無骨な時計にカラフルな組み合わせが面白かったのです。

しかし、メーカーの社長と交渉したところ「日本には持ち込めない」と言われました。トリチウムガスという放射性物質が含まれているから日本に持ち込み禁止だそうです。しかしドイツの軍用ウォッチも、トリチウムガスを使っていました。

そこでN支社長に確認すると「〇〇大学の教授にトリチウムガスが基準以下に抑えられていることを証明してもらえば、日本でも販売できる」と教えてもらいました。

そうして輸入できることになり、「LUMINOX」と契約して日本代理店になれたのです。有名俳優がテレビドラマで着用したこともあり、とても売れました。ここから時計専業になりました。

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漆の定番色「黒」と「朱」に金銀が映える「漆金銀重ね」。

―デンマークの腕時計も扱っていたと伺いました。

遠藤 先ほどお話した代理店とKnotの間にもう1つ会社を経営していました。「SKAGEN(スカーゲン)」「noon(ヌーン)」「BERING(ベーリング)」など、北欧のブランドを中心に扱う会社です。これらの北欧腕時計を、年間20万本の市場へと成長させました。

そして2011年「デンマーク輸出協会賞及びヘンリック王配殿下名誉勲章」を受勲しました。(王配殿下とは、女王陛下の夫。)デンマークデザインを広く普及させた実績が評価されたためです。ファッション分野では日本人初でした。

デンマークからいらっしゃった皇太子様から、メダルをいただいたのです。このときは「人生勝った」と思いました(笑)。

しかし半年後、売上の約7割を占めていたSKAGEN社のオーナー夫妻が、アメリカの時計会社「FOSSIL(フォッシル)」に会社を売却してしまいました。すでに日本にフォッシルジャパンという子会社があったため、SKAGENを販売する権利を失ったのです。

受勲した半年後にデンマークの売上がなくなりました。10年間頑張って大きなマーケットを作ってきたのに、あっという間にほぼ0になってしまったのです。

このとき「人のブランドをいくら成長させても結局いつかこうなる」と感じました。ファッションブランドでも、最初は現地の代理店がマーケットを作って、その後に本社が進出して乗っ取ってしまうことはよくあるのです。

当時の私は40歳手前。また50歳まで10年間頑張って、0になったら立ち直れません。だったら、自分でブランドを立ち上げようと思いました。

―これをきっかけにKnotを創業するのですね。

遠藤 20~30代にかけて、ずっと海外の一流品と呼ばれるものをたくさん見てきたからこそ、日本の強みを活かそうと思いました。海外で高級品として取引されている素材より、かなり安価に同等の質の素材が日本では手に入ります。

日本のレザーや金属加工技術は、世界の高級品と同等の質にもかかわらず、世界で名が通っていなかったのです。そこで、メイドインジャパンでプライスバリューの高い腕時計を考えました。

日本の技術で腕時計を作ったら、世界に発信していけると思ったのです。さらにカスタムオーダーにして、楽しんで買い物できる仕組みを考えました。

そして、創業したのが2014年の3月4日。創業後、クラウドファンディングを使ったことで注目を浴び、いろいろなメディアから取材されました。そのときに「1年以内にカスタムオーダーを体験していただく場を必ずご用意する」と色々なメディアで話したのです。

普通のスケジュールなら1年後にオープンさせるのは困難でしたが、メディアに宣言した手前、必死で準備を進めました。商業物件が見つからないなど困難もありましたが、ちょうど1年後の2015年3月4日に、吉祥寺店をオープンしました。

そして、現在では国内に12店舗を展開しています。仮にKnotでお買い上げいただけなくても、イタリアンでランチしたり公園で遊んだりなど、楽しんで帰っていただける場所に出店しています。

少し駅から離れていても、間に楽しいお店がある場所です。駅から離れている分家賃が安いため、その分商品価格も抑えられています。

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Knot吉祥寺の店内。
時計・ベルトの好きな組み合わせを選べるのが楽しい。

―Knotの腕時計について教えてください。

遠藤 Knotの腕時計は、時計本体とベルトを合わせて、数十万通りのカスタマイズができます。ベルトの裏にイージーレバーというバネが付いており、ワンタッチで時計とベルトを付け替え可能です。金具も4色あり、自由に付け替えられます。

そして腕時計本体は全商品がメイドインジャパンであり、高級時計に使われている素材を標準搭載しています。

また、全製品標準で「SUS316L」というステンレスを使っています。別名サージカルスチールと呼ばれ、医療用のメスや入れ歯などに使われている素材です。市販で買えるもっとも純度の高いステンレスで、金属アレルギーが起こりにくい特徴があります。

さらに、Knotの時計ガラスは全製品標準で「サファイアガラス」です。宝石のサファイアではなく、宝石のサファイアと同等の硬度という意味で、数十万円する高級時計に使われているガラスです。5万円以下の時計には、サファイアガラスはあまり使われていません。Knotは1万円台の時計でも標準搭載しています。

―プレミアムシリーズとスタンダードシリーズがあるとか。

遠藤 先ほどご説明した数十万通りのカスタマイズやサージカルステンレスなどは、プレミアムとスタンダード共通です。このあと紹介する2つの腕時計は、プレミアムシリーズになります。

プレミアムシリーズの機械式時計のケースは、福島県須賀川市にある林精器製造という金属加工の工場で作っています。数十万円以上する腕時計と、同じ工場・職人が作っているのです。時計の文字盤も、東京に工場のある高級時計の製造と同じラインで作っています。

また、プレミアムシリーズは日本製の「ハイビートムーブメント」も搭載しています。ハイビートは1秒間に8振動以上で、それ以下がロービートといわれます。ハイビートの方が精度が高く高性能です。

そしてプレミアムシリーズは、すべての部品が日本製の「ピュアメイドインジャパンウォッチ」です。最高峰の機械式時計となっています。

―このクオリティで、なぜこの値段を実現できるのですか。

遠藤 これらのケース製造、文字盤製造などを行っているのは、日本に数社しかありません。新規はほとんど受け付けていない状況です。なので、他社がこれから同等のクオリティの腕時計を製造するのは困難なのです。

また、中間流通を挟まずに直接仕入れていること、卸売りをせずに店舗でスタッフが直接売っているため、価格を抑えられています。

ヨーロッパの時計に詳しい方にスペックと値段を説明すると「なぜこのクオリティでこの値段で売れるのか」と言われます。このクオリティでスイス製で発売されると、30万円以上はするためです。

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「螺鈿 墨」の外周に向かって変化するグラデーション仕上げ。

―「漆金銀重ね」と「螺鈿 墨」について教えてください。

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遠藤 漆金銀重ね(うるしきんぎんがさね)は、文字盤に会津漆を入れて、蒔絵(まきえ)の技法で金銀の粉を蒔きつけました。数少ない会津漆の伝統工芸士である大竹信一さんに作ってもらっています。

螺鈿 墨(らでん すみ)は、文字盤に螺鈿を装飾しました。螺鈿の螺とは、らせん状の殻を持つ巻き貝を表し、鈿には飾るという意味があります。この螺鈿に漆を薄く塗って彩度を抑えるオリジナルの技法によって、シックな墨色に抑えています。

他社だと、漆は100万円ほど、螺鈿は50万円ほどするものもあります。

―お店でのお客様の反応はどうですか?

遠藤 吉祥寺のお店をオープンして、可愛いやかっこいいという声をいただきました。このように腕時計なので容姿に対する評価は多々あります。そんななか、商品を見ながら「超楽しい」とお客様が言っていたことがありました。「楽しい」は体験に対する評価です。これを聞いたときに自信が確信に変わりました。

また、腕時計店は、家族でくることは多くありません。男性1人での来店が多いものです。Knotはカップルや家族で来て、ワイワイガヤガヤ、こっちがいいあっちがいいと、楽しんでもらえます。ほかのメーカーにはない点です。

そして、全国の工芸メーカーなどとコラボしているため、地元の方が来店されると喜んでもらえます。例えば栃木の方がいらっしゃると「俺の街の栃木レザー使ってるの?」と喜んでいただけます。京都の方がいらっしゃると「京都のくみひもじゃん!」と買ってくださるのです。

さらに、価格でも喜んでいただけています。お客様には時計の知識がある方が多いので、これだけのものを作ったらどれくらい費用がかかるというのがわかるのです。

コロナ禍のなかでハイブランドは何度も値上げをしました。一般の人の手が届く価格ではなくなったと思います。そのなかで、同等の質の腕時計を手の届く価格で提供できているから喜んでいただけていると感じています。

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「漆金銀重ね」の美しいグラデーション仕上げ。

―最後に、今後のビジョンについて教えてください。

遠藤 次の10年を第2創業と位置づけ、ブランドの向かう道をがらっと変えていこうと思っています。ここ100年、時計は技術開発が主でしたが、電波時計が生まれて狂いがなくなりました。スマートフォンやスマートウォッチなどは電波時計です。

これからの腕時計は、性能よりもアートや所有欲だと考えています。他社も数年前から芸術要素の強い時計に力を入れています。

Knotは、日本のアートな時計を世界に発信していく予定です。メイドインジャパンのアートウォッチを世界に発信します。まだ試作段階ですが、有田焼や蒔絵なども職人さんと進めています。

また、Knotを世界に発信して、グローバルブランドにしたいと考えています。海外で認められれば、日本のお客様にも喜んでもらえるでしょう。

例えば、日本の伝統工芸である螺鈿や漆の時計は日本のメーカー以外で作る事は出来ないと思います。さらに、このクオリティを作れるのが、Knotを含めて数社ほどです。しかし、同じクオリティを作れる他社は高額なため、一部のターゲットにしか届きません。

日本の文化を海外に広げるには、多くの人に愛用してもらう必要があります。Knotなら、多くの人の手が届く価格で提供しているため、幅広い人に愛用してもらえます。Knotが世界に発信しなければ、他にできる人がいないのです。

―貴重なお話をありがとうございました!

漆金銀重ね

「漆金銀重ね」
価格:¥82,500〜170,500(税込)
店名:Knot
電話:0422-27-6360(11:00~19:00 吉祥寺本店)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://knot-designs.com/collections/urushi
オンラインショップ:https://knot-designs.com/

螺鈿 墨

「螺鈿 墨」
価格:¥88,000〜154,000(税込)
店名:Knot
電話:0422-27-6360(11:00~19:00 吉祥寺本店)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://knot-designs.com/collections/raden
オンラインショップ:https://knot-designs.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
遠藤弘満 (株式会社Knot 代表取締役)

1974年東京生まれ。米国特殊部隊用腕時計「LUMINOX」を日本に定着させ、「SKAGEN」「noon」「BERING」といった北欧ブランド時計を年間20万本の市場へと成長させたウォッチプロデューサー。2011年、デンマークデザインを広く普及した実績が評価され、ファッション分野では日本人初となる「デンマーク輸出協会賞及びヘンリック王配殿下名誉勲章」を受勲。2014年、腕時計離れが進むマーケットにおいて、今本当に求められている時計を消費者に届けるため、JAPAN MADE WATCH「Knot」を創設。

<文・撮影/林本直 MC/伊藤マヤ 画像協力/Knot>

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