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ジャパンクラフトの技術が冴えわたる本革リュックとコインケース

2024/06/27

今回編集長のアッキ―こと坂口明子が注目したのは、ジャパンクラフトの技術が冴えわたる本革製品。
東京都葛飾区に昭和初期の創業からクラフトマンを最優先にして技術を育んできた革カバンメーカーで、「Flathority(フラソリティ)」ブランドを展開し、日本のモノづくりを広く伝える株式会社猪瀬。

同社のカバン業界への貢献度はきわめて高く、業界の長を務めた先代の2代目社長は長年の功績をたたえられ「旭日小綬章」を受賞したほどです。その遺伝子を引き継ぐ代表取締役の猪瀬繁晴氏とディレクターの嘉納様にオリジナル製品への思いなど、取材陣がインタビューしました。

株式会社猪瀬 代表取締役の猪瀬繁晴氏
株式会社猪瀬 代表取締役の猪瀬繁晴氏

―家業を継がれるまでの経緯をお聞かせください。

猪瀬 子どもの頃から親がカバンを作る仕事ということは分かっていました。作っているのは革製品でしたから学校に行くときにみんながスポーツタイプやカジュアルなものを持っている中、1人だけ革のボストンバックを持たされていました。

恥ずかしかったので「継ぐことはないだろうな」と思っていた記憶があります(笑)。親から「会社を継いでくれ」などとは大学を出るまで一度も言われたことはなかったです。最初に就職した会社もIT関係の会社で、そのまま違う仕事をやっていくのだろうと当時は思っていました。

ところが就職して2年ほど経った頃に父が体調を崩して倒れたことがあり、その際に初めて「手伝ってくれないか」と言われたので、会社を辞めて家業に入り現在に至ります。

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「Flathority(フラソリティ)」ブランドは和製本革手工芸の証し。

―入社して感じたことは?

猪瀬 いざ入ってみるといろんなことが想像どおりではなかったです。生活は苦しかった思い出がないので「稼いでいる会社だろう」とばかり思っていました。

ところが実情はというと、父の代から海外製造にどんどんシフトしていき、国内より中国などの安い賃金で作る動きが主流の時代でした。

それでも弊社は中国製造には全面的にかじを切らず、日本の職人さんと一緒にやっていく方向性をとっていましたので、さすがに価格競争が厳しく業績が思わしくない状態でした。

―社長になられてどんな経営方針をとられましたか?

猪瀬 祖父や父の時代は大手カバンメーカーのOEMを中心に請け負っていたのですが、時が進むにつれてそれだけでは職人さんの賃金を確保するのが難しくなってきました。

弊社で行う製作はミシンを使った手工芸であり、職人さんの技術あってのメーカーです。かつてはOEMを請けながらオリジナルを作るのはタブーな面があったのですが、それが薄れてきた私の代からはオリジナル製品をたくさん作り、技術スタッフに多く還元できるよう取り組んでいます。

―今回ご紹介のリュック「Caucasus Ruck L」の特徴は?

猪瀬 まずは素材にキップレザー、つまり生後6ヵ月から2年の大人になる前の牛の革を使用しているのが大きな特徴です。

この革は肌理細かいのでとても手触りが良いだけでなく、通常の革よりも軽量で柔軟さが特徴で、高級衣類などの素材として重宝されています。リュックのような体に当たる製品に使うのは非常に有効なものです。

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美しい光沢となめらかな肌触りの高級革を使用。

猪瀬 また独自の立体裁断技法を採用し、通常は洋服に使う立体裁断をバッグに取り入れています。この方法で立体的なカーブを出すことにより、人のボディーラインにうまくフィットする形状に仕上げることができるのです。

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キップレザーは滑らかで上質な触感を長く楽しむことができる。

嘉納 この商品が開発された数年前と現在とでは、ライフスタイルも大きく変わりました。需要に合わせながらアップデートを繰り返した現在のモデルは、ポケットを内側やサイドにも設けて実用性を高めています。

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シンプルな外観、裏地やポケットなどの機能性にもこだわっている。

嘉納 細かい部分にもこだわりがあります。たとえば肩に掛けるベルトは直線ではなく、非常に複雑な曲線で作られておりますが、背負った時にピッタリと身体にフィットするよう計算され作られています。また生地と生地の接合部分は意識的に厚くすることで耐久性を強化しています。

―コインケース「Shell Cordovan Round Coin」の特徴は?

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コインケースのカラーは6種類。写真はツートーンのNo4。

猪瀬 使用する革はアメリカの老舗タンナー、ホーウィン社の「シェルコードバン」で、馬のお尻の革でできた専売特許的な高級素材です。この名前を検索して商品を探す人が大勢いるような著名な革でもあります。

専用のヤスリでていねいに研磨してツルツルとしてとても触り心地のいい表面に仕上げられ、長く愛用するほどテイストの違いが楽しめる逸材です。

機能性も兼ね備え、中を開けばカードが複数差せる構造です。時代とともに財布がどんどんコンパクトになっているトレンドをつかみ、デザインはシンプルで飽きずに長く使いやすいスタイルとなっています。

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コインにお札、カードを入れるスペースは十分。

―今後のビジョンや目標をお聞かせください。

嘉納 「Flathorityフラソリティ」は、ディレクターとして関わらせて頂く前から、日本が世界に誇るブランドになり得る、職人さんの高い技術と感性が素晴らしいブランドだと感じていました。

デザイン的な部分は「Flathority」らしさを追求しながら、真の価値あるモノづくりを目指し取り組んでいきます。

猪瀬 新しいブランドを作った理由の1つは、若い職人さんたちにモノづくりの環境を多く提供し、育成に注力していくためです。

またその一方で、作り手に頼り過ぎた商品づくりになってはうまくいきません。今年から新たにブランドコンセプトを担う嘉納ディレクターとともに、メーカー都合にならずに市場ニーズを反映させながらさらにクオリティの高い商品作りを目指したいと思います。

―本日は素敵なお話をありがとうございました。

Caucasus Ruck L(FF-204)

「Caucasus Ruck L(FF-204)」※写真はオリーブ
カラー:ブラック、チョコブラック、オリーブ
価格:¥74,800(税込)
店名:Flathority
営業時間:10:30~18:00
お問い合わせ:contact@flathority.com
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.flathority.com/products/ff-204/
オンラインショップ:https://www.flathority.com/

Shell Cordovan Round Coin(FS-711)

「Shell Cordovan Round Coin(FS-711)」※写真はネイビー
カラー:ブラック、バーガンディ、ネイビー、バーボン、グリーン、No4
価格:¥33,000(税込)
店名:Flathority
営業時間:10:30~18:00
お問い合わせ:contact@flathority.com
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.flathority.com/products/fs711/
オンラインショップ:https://www.flathority.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
猪瀬繁晴(株式会社猪瀬 代表取締役)

1975年東京都生まれ。日本大学商学部卒業後、ソフトウェア会社に入社。2年後に家業を継ぐため、株式会社吉田で修業させていただき、2002年に株式会社猪瀬に入社。2016年に同社代表取締役に就任。

<文・撮影/田中省二 MC/伊藤マヤ 画像協力/猪瀬>

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