今回アッキーこと坂口明子編集長が気になったのは、苔栽培の入門書『苔で楽しむテラリウム』と、珍しい植物を紹介する雑誌『INDOOR JUNGLE』。制作したのは、熱帯魚の情報誌や水族館向けの書籍・グッズを取り扱っている出版社です。水辺の生き物だけでなく、植物に関する書籍も始めたきっかけや制作秘話について、株式会社エムピージェー 代表取締役社長の清水晃氏と編集担当の江藤有摩氏に、取材陣が伺いました。
インテリアに癒しの空間を。苔の種類や育て方のハウツー本『苔で楽しむテラリウム』と珍しい植物に出会える雑誌『INDOOR JUNGLE』
2024/07/05
―会社の沿革と事業内容を教えてください。
清水 創業は1991年4月、今年で33年目の出版社です。観賞魚の総合情報雑誌『月刊アクアライフ』の編集長だった先代の社長が独立し、株式会社エムピージェーを設立しました。熱帯魚や海水魚、水草など水辺の生き物だけでなく、爬虫類、苔類等、マニアックなペットや植物関連の書籍も出版しています。また、全国の水族館向けにオリジナルグッズやアイテムを企画・制作・販売しており、総合的な事業を展開しています。
―「テラリウム」「コケリウム」とは?
清水 透明なガラス容器などで植物や動物を育てることを「テラリウム」といいます。ラテン語の“大地”と“場所”を意味する言葉を組み合わせた造語です。「コケリウム」は、“苔”と“テラリウム”をかけ合わせたワードで、苔を育てるという意味です。今回紹介する本『苔で楽しむテラリウム』では、苔に特化して種類や栽培方法、作品集を収録しています。
コケリウムは玄関やリビングなど、ミニマムなスペースでも始めやすいのが特徴。
―なぜ苔の本を出版されたのですか?
清水 苔の魅力や楽しみ方を多くの人に知ってもらいたいと思い企画しました。今でこそ、コケリウムという言葉は広く知られるようになりましたが、本書の企画時は、まだ一般的ではありませんでした。苔は森・川べりだけでなく、公園や道端の側溝など、至る所に生育しています。実は世界には約2万種、日本だけでも2,000種近くの苔が存在するほど、形状や生息環境が多様多彩な植物なのです。「見過ごされがちな苔をもっと身近に感じてほしい」「苔による癒しの空間を多くの人に楽しんでもらいたい」との思いから制作を始めました。
苔玉や岩付き苔など、好みのサイズ・技法で苔ワールドを楽しめる。
―『苔で楽しむテラリウム』の特徴を教えてください。
清水 苔の種類から栽培方法、作品例まで解説した入門書で、コンセプトは“誰もが手軽に苔を楽しめるようにすること”です。苔で何ができるのかをイメージしてもらうため、できるだけたくさんの作品例を載せることに注力しました。初めて苔を栽培する人でも、簡単に制作できる作品を多めに収録しています。また、100円ショップの器や、流木・石など身近で手に入れやすい材料を使い、気軽にコケリウムを始めてもらえるようにしました。
苔の種類や作品づくり、採取方法、便利グッズも学べる一冊。
コケリウムの魅力は、自分だけの作品をつくれるところ。
―とくにこだわったことは?
清水 最初は小さな容器で栽培を始めて、次に少し大きめの器や大型水槽、そして3メートルの巨大ケースへと、本書を読み進めながら徐々にステップアップできる構成にしました。図鑑ページでは、入手しやすく配置したときに見栄えする苔を厳選し、苔の品種ごとにスケールを入れて、実際の大きさをイメージしやすいように工夫しています。
また、制作直後の作品だけでなく、ある程度時間をかけて維持したものも紹介しています。制作直後はキレイな状態が当たり前ですが、時間とともに苔が枯れてしまっては意味がありません。撮影には時間と手間がかかりましたが、その分、苔をできるだけ長く楽しめて、美しい状態を維持しやすい作品を収録することができました。
コケ図鑑には、「容易・普通・やや難しい」の3段階で栽培難易度を記載。
―苔を育てるコツは?
清水 どのような植物でも、基本的な知識を身につけてから育てると失敗しにくいと思います。本書では、苔を詳しく知らなくても挑戦しやすいよう、写真を多めに入れて解説しています。「部屋にグリーンを取り入れて癒しの空間をつくりたい」と考えている方に役立つ内容ですので、ぜひ手に取っていただければと思います。
置き場所や水やりなど、日々のメンテナンス方法も。
―『INDOOR JUNGLE(インドアジャングル)』はどのような雑誌ですか?
清水 珍奇植物を紹介する雑誌として、2023年9月に創刊しました。一般的な観葉植物から一歩踏み込んで、変わった形状や生態の植物を知ってもらうガイド本です。第1号につづいて、第2号となる『INDOOR JUNGLE Issue.02』を2024年2月に発売しました。表紙のビカクシダは、鉢ではなく壁にかける“板付け”に仕立てて栽培できる植物で、インテリア用として人気が広まっています。近年、おうち時間を充実させる方が増えたことや、観葉植物ブームの影響もあり、このようなマニアックな植物の認知度が上がっているようです。
インパクトのある見た目と、その希少性が話題をあつめている珍奇植物の雑誌。
左から、『INDOOR JUNGLE Issue .01』・『INDOOR JUNGLE Issue .02』。
2024年7月31日にはIssue.03の発売が予定されている。
―美しい写真も印象的です。撮影時の工夫は?
清水 珍奇植物を扱っている国内のショップやファームにご協力いただき、プロのカメラマンに撮影を依頼しました。植物の特徴やインテリアのイメージが伝わるよう、特に写真の画質にはこだわっています。
コケリウムでは物足りなくなった人におすすめ。
―どのような方向けの本ですか?
清水 「コケリウムから一歩進んで、もっと他の植物を知りたい」という方にぜひチェックしていただきたいです。近年は水槽内に湿潤環境を再現するパルダリウムを筆頭に、珍奇植物が注目されています。弊社でも、雑誌『INDOOR JUNGLE Issue .02』に加えて、書籍『パルダリウムとアクアテラリウム』を2月に刊行しました。少し変わったインテリアグリーンを楽しみたい方の参考になればうれしく思います。
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
清水 弊社は『月刊アクアライフ』等、マニア向けの本からスタートしました。今後は、幅広い層のみなさまに手に取っていただける本も制作していきたいと思います。また、水族館・博物館の市場には、まだまだ可能性がありますので、これまでの販路や経験を活かして、児童書などファミリー層向けの本づくりも進めて参ります。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「苔で楽しむテラリウム」
価格:¥1,628(税込)
店名:エムピージェーショッピングサイト
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://mpj-shop.com/?pid=145116523
オンラインショップ:http://mpj-shop.com/
「INDOOR JUNGLE Issue .02」
価格:¥1,870(税込)
店名:エムピージェーショッピングサイト
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://mpj-shop.com/?pid=179676920
オンラインショップ:http://mpj-shop.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
清水晃(株式会社エムピージェー 代表取締役社長)
1969年東京生まれ。新卒で入社し、水族館関連商品を企画販売する事業部に配属。2021年に同社代表取締役社長に就任。観光ブームで好調の水族館物販事業と、45年続く観賞魚雑誌『月刊アクアライフ』を基幹とした出版事業の両輪を担う。
<文・撮影/香川けいこ MC/伊藤マヤ 画像協力/エムピージェー>