インテリアの雰囲気を決める「家具」。一生ものになるかもしれないアイテムであり、時には運命的な出会いもあります。今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのはナチュラルな木の素材感とモダンなデザインが光るチェスト「SONO チェスト070」とインテリア小物「SONO ビーンズ」。その商品の特徴について、福岡県大川市に本社を置く、広松木工株式会社 代表取締役社長の廣松嘉明氏に取材陣がお話をうかがいました。
自然な色合いと遊び心で木の魅力を発揮する「SONO チェスト070」。資源の大切さを知る「SONO ビーンズ」
2024/07/11
広松木工株式会社 代表取締役社長の廣松嘉明氏
―会社の沿革と社長の経歴について。
廣松 広松木工は、僕の父が本家から独立する形で1950年に創業した会社です。当初は木製机のみを製作していましたが、スチール製デスクの登場により需要が落ち、商品の幅を広げていきました。今は「生活に必要なもの」という捉え方で家具を製作し、ネット通販や実店舗での小売も行っています。
中学3年生のときに父が他界し、母には「進路は自由に決めなさい」と言われていました。僕は住宅兼工場という環境で育ち、小さい頃からものづくりが好きでした。大学卒業と同時に家業に入り、平成元年というタイミングで母から代替わりして今に至ります。
―小売業を始めたきっかけを教えてください。
廣松 百貨店で展示した家具について、購入希望のお問い合わせをいただいたことがきっかけです。納期が厳しいため問屋さんを通してお断りしたのですが、お客様から「どうしても嫁入り道具にしたい」と直接ご連絡がありました。「これは引き受けるしかない」と、なんとか結婚式に間に合わせたところ、菓子折りと共にお手紙が届いたのです。「本当にありがとうございました。一生大事に使います」と書かれた手紙を読み、社員らと「家具づくりは使う人に喜ばれてこそ成り立つ仕事だ」と喜び合いました。
家具はメンテナンスが必要なので、ご購入いただいてからが長いお付き合いとなります。それまでは商品を卸した段階で仕事を終えていましたが「お客様の喜びを確認して初めて仕事をまっとうしたことになる」と感じ、小売業を始めました。いろいろな業種のお客様と繋がることで視野も広がり、とてもありがたく感じています。
―昔から変わらない企業のDNAは?
廣松 良いものを仕上げて、お客様に納得していただける価格でお届けし、長くお付き合いしていくというのが基本です。弊社が家具に使う広葉樹は大きくなるまでに数百年単位がかかります。地球の空気を浄化してくれる木を無駄にしないように、きちっとデザイン処理し、木の大切さを伝えていくことも自分たちの仕事だと思っています。
「コンパクトだけどインパクトのある会社」を40年近くモットーに掲げ、いろいろな開発をしてきました。僕がデザインの重要性に目覚めてからは、家具を最も素敵な形にするためデザイナーさんの力を借りるようにもなりました。「デザインは人を幸せにするためにある」と考え、家具を使うことで人が心地いい生活を送れるようなものづくりをしています。
―「SONO チェスト070」の魅力を教えてください。
廣松 木に着色せず、自然の色を生かしたチェストです。上からメープル、チェリー、ウェンジ、チーク、ウォールナット、パドゥークと、色や手触りの異なる木を前板に使用しています。全て浅型の引出しに見えますが、実はさまざまな引出しや扉が隠れた実用性と、開けたときのユニークさは、職人の繊細な手仕事から生まれています。
その魅力は国内だけでなく、海外でも「日本人らしさ」を感じると評価して頂きました。デザインの原型は、2年に1度の社内デザインコンペから商品化したもので、「SONO」は女性の名前からきています。デザインの原型を考えた当時の職人が結婚した女性、つまり現在の奥様のお名前です。
部屋に馴染むナチュラルさと存在感を兼ね備えたチェスト。
―どんな人に使ってほしいですか?
廣松 世の中の流行りものではなく自分たちが好きなものを作っているので、それに共感してくださる人や木が好きな人に使ってほしいです。このチェストがあることで「部屋の雰囲気が楽しくなった・すごく良くなった」といった声もいただきました。機能性だけを追求するよりも、存在感を大事にした家具づくりをしたいと思います。
―「SONO ビーンズ」について。
廣松 家具を作る過程で工場で出た端材を、特殊な機械で加工したものです。河原の石が転がると丸くなる理屈と同じ工程で、木の角が取れて丸くなります。端材といえども数百年かけて育った貴重な木であり、もちろん着色していません。SONOビーンズ以外にも、加工時に出る粉を特殊な樹脂で固めて木の粘土を作るなど、とにかく木を無駄なく使うという考えから生まれた商品です。
手の中で転がすと気持ち良くて癒されるほか、「アロマオイルを垂らしてディフューザーにする」など用途はアイディア次第です。売り上げの一部は森林保全団体や世界の子どもたちへ向けた活動に寄付していて、そういう点でも「人の役に立つデザイン」のひとつだといえます。
ひとつひとつに味がある木製ビーンズ。用途を想像するのも楽しい。
―今後の展望について。
廣松 店頭でお客様に「この家具すごく良いですね」と言っていただくと、思わず握手したくなります。木の良さをわかってくれる仲間作りという意味でも、広松木工を知らない国内外の人たちにもっと情報をお届けしていくことが今後の課題です。
僕にとって完璧に研ぎ澄まされたデザインは少し居心地が悪いので、「完成されていないもの」が広松の味だと思っています。余白や余韻など、味のある部分が親しみやすさにつながる気がします。「味わいを楽しみながら永く安心できる家具」を提供し、お客様に心地よさを感じてもらうことが会社の望みです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
「SONO チェスト070」
サイズ:W70.5×D36.5×H94(cm)
価格:¥239,800(税込)
店名:広松木工株式会社 FACTORY SHOP HIROMATSU大川本店
電話:0944-87-5911(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hiromatsu.org/products/sono-chest-070
オンラインショップ:https://shop.hiromatsu.org
「SONO ビーンズ」
価格:¥ 1,210(税込)~
店名:広松木工株式会社 FACTORY SHOP HIROMATSU大川本店
電話:0944-87-5911(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://hiromatsu.org/products/sono-beans-100g
オンラインショップ:https://shop.hiromatsu.org
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
廣松嘉明(広松木工株式会社 代表取締役社長)
1953年、福岡県大川市生まれ。父親が創業した広松木工を70年代に継承。素材の質や手触りにこだわった経年変化を楽しめる家具を展開している。福岡と東京に直営店を構え、業界でいち早くオンライン販売を開始。現在もオリジナリティのある家具造りを追求している。
<文・撮影/マスダアヤノ MC/高橋知 画像協力/広松木工>