「気に入ったものをいつまでも使いたい」と誰しも一度は願ったことでしょう。そんなお金で買えない願望を付加価値に乗せ、オーナーが気軽にメンテナンスできる眼鏡シリーズに今回、編集長のアッキ―こと坂口明子が注目しました。
4月に東京・青山に直営の旗艦店もオープン。日本人ならではのアイデアを盛り込んだ「YUICHI TOYAMA.」ブランドを展開する株式会社アトリエサンク 代表取締役の外山雄一氏に商品やブランドのこだわりなどお話をうかがいました。
自分でメンテナンスできる特典付き、鯖江職人の高い技術が結集したブランド眼鏡「YUICHI TOYAMA:5」
2024/07/23
株式会社アトリエサンク 代表取締役の外山雄一氏
―子ども時代はどんなことに興味がありましたか?
外山 小学生時代はボーイスカウトに所属していて、ナイフを使ってなにかを削って、たとえば釣りのルアーを作ったりするのはすごく好きな子ども時代でした。
現在の仕事に近いデザインやアートというものに興味を持ったのは10代の頃からです。ニューヨークのポップカルチャーとの出会いがきっかけでストリートアートに影響されて絵を描き始めました。80年代に学生時代を過ごして音楽とともにファッションやアートとミックスされたカルチャーに熱中し、「いつかアートやデザインと関係する仕事に携わりたい」と思っていました。
―デザインの勉強はいつから始めましたか?
外山 アートやデザインに興味を持ち始め立体的なプロダクトデザインを学ぶためにデザインの専門学校に進学しました。卒業後はモノづくりに携わりたいと思い、営業や事務職に就職することは考えていませんでした。
モデル:BANKSIDE。
「YUICHI TOYAMA:5」はすべてオリジナルパーツで製作。
―眼鏡の製作に向かったきっかけは?
外山 パソコンが普及していない頃に、鉛筆で線を引いてそれが立体になる、そういう仕事につきたいと思いました。ミュージシャンやアーティストが掛けているサングラスや眼鏡がカッコいいと思ったのが1つのきっかけで、アイウェアデザインに興味を持ちました。
また人が生活する上で重要な役割の視覚をサポートする眼鏡。その医療的側面と、デザインやファッションという相反する2つの要素が混在していることがすごく自分に向いていると感じました。
そして東京にデザイン室を持つ福井県鯖江市の眼鏡メーカーに就職しました。
―独立後にコンサルティングもされていますね。
外山 はい、最初に入った会社ではデザインだけでなく、企画まわりやマーチャンダイジングのような幅広い業務も担当していたので、独立後はそれを生かして活動していました。
福井県鯖江市は生産地であって消費地ではありません。そのため大消費地の東京や大阪のマーケット情報を生産地である鯖江にフィードバックしながら自分の製作デザインを説明してきました。フリーランスになってからは、こうして製造企画系のコンサルティングに携わっていきました。
―法人化したいきさつを教えてください。
外山 それまでは個人事業主としてフリーランスでデザインを請け負っていたのですが、自社ブランドを立ち上げる際に会社法人としての信頼が必要と感じて法人化しました。
そうして5年のフリー活動後、他者に投資してもらうのではなく、自己資金で会社を設立しました。
サングラスモデル:KYOTO。
―社名の由来と会社の強みについて教えてください。
外山 「サンク」はフランス語で5を意味する言葉です。5つのプロセスのモノを見る、書く、考える、作る、そして壊すというサイクルのことを「ファイブルーティン」と僕たちは呼んでいます。そのサイクルのなかで常に止まらずに繰り返していくという考え方が社名の由来です。
当社はクリエイティブであることにこだわり、それを表現するデザインを心がけています。ベースには「お金がお金を生む」のではなく、「デザインがお金を生んでいく」という考え方があり、コンセプトとしてチームで共有できているのが当社の強みといえます。
―「YUICHI TOYAMA:5」が誕生した背景をお聞かせください。
外山 コロナ禍に突入した時に、これからは高価であっても手の込んだ眼鏡を求めるニーズとデイリーユーズな眼鏡を求めるニーズの両極になっていくと考え、ブランドとして生き抜くうえでのグレード分けを行いました。
1つはデザインがシンプルで日常的なライン「YUICHI TOYAMA/D」、2つ目に既存のメインライン「YUICHI TOYAMA.」、3つ目は日本における眼鏡の製造技術を集結させた「YUICHI TOYAMA:5」。この3つのラインで展開することを決めました。
今回の商品はそのハイエンドシリーズとして誕生。多様化するニーズに対応して、より付加価値の高いモデル設定にしました。
―このシリーズの特徴は?
外山 「誰にでもメンテナンスができること」が大きな特長です。カード型のレンチを付属品として付けているので、自分でネジを回して調整や修繕することができます。
この眼鏡を通して皆さんが身の回りのモノに対して少しでも大切に長持ちさせようとする気持ちを持っていただけたらうれしいです。
またYUICHI TOYAMA:5は既存パーツを多用するメガネのスタンダードを覆すべく、100%オリジナルパーツにこだわりデザインしているのも大きな特徴です。
モデル:BEACON。
インパクトを与える大胆なフレームが特徴的。
―「YUICHI TOYAMA:5」のネーミングの由来は?
外山 開発の段階で工場の方に相談するところからスタートして、協力していただける工場のなかから選りすぐりの5人の職人さんに「こういうものが作りたい、ああいうことがしたい」と、新商品にかける思いを伝えながら話し合いをしてきました。
眼鏡の製造は分業制であり、1つの工場でできるわけではありません。商品名「YUICHI TOYAMA:5」は、それぞれの工程の職人さんといろんな話をしながら「一緒に作った5人」の意味が込められています。
―ブランドとしてのこだわりについておうかがいします。
外山 現在はヴィンテージデザインが流行っていますが、昔らしさをそのまま出すのではなく、「YUICHI TOYAMA.」のオリジナリティを付加させることを信条としています。
私自身のフィルターを通して、福井県鯖江市の伝統的な技術やデザインを新しいものに昇華させることを常に考えています。そのためにネジ1つをとっても自分たちで特注したものを使用し、100%オリジナルのパーツにこだわって製作しています。
モデル:TOKYO。
ブランドを通して日本人特有の発想を商品づくりに生かしています。
―どんな方にご利用いただきたいですか?
外山 私は眼鏡やデザインを通して、日本の伝統や職人の技術といった日本人ならではのモノづくりを体現して伝えていきたいと思っています。特に若い人たちには、そうしたことを伝えていく1つのメディアとして『YUICHI TOYAMA.』を見て本物の価値に気づいてほしいです。
入口はリーズナブルな眼鏡であっても、2本目3本目に「安かろう悪かろうではない」付加価値の高い眼鏡に触れてもらい、その選択肢の一つに私達のブランドが入るのであれば努力してきた甲斐があります。
―今後の展望をお聞かせください。
外山 4月1日に直営店を青山・骨董通りにオープンしました。
この店舗は直営店といっても自分たちにとっては「旗艦店(フラッグシップストア)」と位置づけ、ブランドを展開するうえでの機軸となる存在です。
この店舗ではYUICHI TOYAMA.の商品だけでなく、スタッフのサービスや検眼、フィッティングを通して工芸品としての眼鏡を訪れた皆様に体感できる場所にしたいと考えています。
今後は国内だけでなく海外にも直営店を増やしていく夢があります。そのための突破口であり、僕らにとっては大きなチャレンジの旗艦店にはぜひ多くの方に訪れていただきたいです。
2024年4月に東京・青山に直営の旗艦店がオープン!
―本日は素晴らしいお話をありがとうございました。
「YUICHI TOYAMA:5」
価格:¥92,400~(税込)
店名:YUICHI TOYAMA. TOKYO
電話:03-6427-7989(12:00~20:00 水・木除く)
メールアドレス:store-tokyo@yuichitoyama.com
定休日:水・木
商品URL:https://yuichitoyama.com/category/products/yuichi-toyama5/yt5-optical/
※電話・メールにて問い合わせ
ホームページ:https://yuichitoyama.com/
旗艦店:『YUICHI TOYAMA. TOKYO(直営店)』
〒107-0062 東京都港区南青山5-12-3 1F
インスタグラム:https://www.instagram.com/p/C5KShn6RfnH/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
外山雄一(株式会社アトリエサンク 代表取締役)
1993年 福井県の眼鏡メーカーのデザイン室に入社。
2004年 独立後フリーランスデザイナー、コンサルタントとして活動。
2009年 自身のブランド『USH』設立。国内外でコレクションを発表。
2010年 株式会社アトリエサンクを設立し、代表取締役に就任。
2017年 ブランド名を『YUICHI TOYAMA.』に変更。
2021年 レディースアイウェアブランド『mille』を設立。
2023年 渋谷PARCOに『mille』直営店をオープン。
『YUICHI TOYAMA.』とファッションブランド『GIORGIO ARMANI』によるコラボコレクションを発表。
2024年 青山・骨董通りに初の旗艦店『YUICHI TOYAMA. TOKYO』をオープン。
<文/田中省二 MC/澤水拳太 画像協力/アトリエサンク>