今回編集長アッキーが注目したのは、着圧ソックス。淡いカラーとしっとりとした肌触りが心地いい商品です。この商品を作っているのは、ストッキング製造メーカーである香川シームレス株式会社。取引先の倒産や、ストッキング市場の縮小といった窮地を乗り越えて、着圧ソックスの製造に乗り出しました。高い技術を活かした独自の商品について、使用しているオリーブオイルや地域貢献について、そして幅広い製品ラインナップの展望についても、同社代表取締役社長の金地祐一郎氏に取材陣が聞きました。

香川シームレス株式会社 代表取締役社長の金地祐一郎氏

―ストッキングやタイツの専門メーカーでいらっしゃいます。

金地　香川県の丸亀の地で、ストッキング関連の製造をしている会社です。会社を経営することの大変さを知っているので、母は私を安定した会社員にしたいと家業から遠ざけていましたが、父はいつかは継いでほしいと思っていたのかもしれません。結局私は就職の時に、当社と取引のあった帝人商事（現 帝人フロンティア）に、父の紹介で入社しました。

―ストッキングの製造には技術が必要なんですね。

金地　ストッキングは靴下とは違って、片足ずつ筒生地を作って裁断して縫い合わせ、さらに着色します。工程が複雑な上に、非常に細い糸を使っており、技術が必要とされます。技術革新は進んでいますが、自動化できない部分や微妙な調整など、手作業が必要な場面もあり、職人技に頼っている部分も少なくないです。

当社も父の経営のもと、技術を活かして製造をしていたのですが、2003年に大手靴下メーカーが経営破綻し、大打撃を受けました。同社との取引が当社の売上の8割ほどを占めていたので、窮地に陥ってしまったんです。すると当時私が勤めていた帝人商事から支援の申し出があり、なんとか会社を続けることができました。両社の信頼関係と、当時帝人商事の花形だったレッグウェア部門の風土によって、事業を続けることができたのだと思います。もちろん、商工中金や地元銀行などからも温かく支援をいただきました。その後、多少経営が落ち着いた2007年に、家業に戻ることにしました。

手作業も必要なストッキング製造。

―家業に戻られて、いかがでしたか？

金地　なんとか事業を立て直した後に会社に参画したのですが、そもそもストッキングの需要も低下し始めていました。バブル経済が崩壊してからは、ストッキングが売れなくなっていきました。90年代にはタレントのプロデュース商品が人気になったり、柄物のストッキングが売れたりしていたんですが、その後売上は減少。2010年代に入ってインバウンドの影響で海外からのお客様が質の高い日本のストッキングを爆買いしたこともありましたが、根本的な解決にはなりませんでしたね。生足ブームというか、素足の方がオシャレだという感覚も広まり、さらにコロナ禍が追い討ちをかけました。私が会社に戻ってから、悲しいことに“良い時代”がないんです。

ワンポイントの入ったストッキングが流行したことも。

―着圧ソックスを開発したきっかけは？

金地　ストッキング需要の大幅な回復が見込めない中で、何か付加価値の高いものをやりたいと考えたのがきっかけです。そんな中で着圧ソックスに目をつけて、専用の製造機械をドイツから輸入し、商品開発をしました。展示会などで地道なPRを重ね、自社商品はもちろん、着圧ソックスのブームを作った他社商品のOEMも一部手がけるようになりました。

その後、付加価値という部分でしっかりと効果効能をうたいたいと思い、一般医療機器製造・販売認可も取得しました。着圧ソックスは認可なしでも製造販売できますが、品質や効果をしっかりアピールしたいと考えたんです。

機械を導入して着圧ソックス製品を開発。

―今回紹介する商品には、どんな特徴がありますか。

金地　メディックピエドのOLIVEという商品です。名前の通り、生地にオリーブオイルが練り込まれていて、しっとりとした肌触りが特徴です。香川県は小豆島がオリーブオイルの産地として知られていますよね。私がオイルメーカーの社長と知り合い、一緒にやろうということになりました。生地を水洗いする工程で、熱を加えながら、カプセル化したオイルを練り込んでいます。着用時にこのカプセルが割れて、保湿効果が発揮される仕組みで、10回程度までは洗っても、効果が保たれるのは確認しています。

ソックスの形はいろいろなタイプをラインナップしているのですが、一番要望が大きかったのが、オーバーニーの形状です。しっかりと圧力をかけながらも、きつくはないので、就寝時の着用におすすめしています。

地元香川産のオリーブオイルを練り込んで。

―色もかわいいですね。

金地　着圧ソックスというと圧倒的に黒が多いのですが、当社の女性社員にヒアリングして、ナチュラルなカラーを揃えてみました。家に帰ったら、中高生の娘たちが履いていたこともあります（笑）。嬉しかったですね。

社内の女性も積極的に商品開発に関わる。

―今後の展望について教えてください。

金地　商品認知度のアップは欠かせません。着圧ソックスならメディックピエドというイメージを作っていきたいです。その上で、モコモコ生地の着圧ルームソックスや、運動用、仕事用のサポーターなど、用途や対象に応じた商品を強化していきたいですね。

実は工場の裏に直売店を設けており商品を販売しています。また毎年年末に即売会を行っており、地元の方からとても喜ばれます。地域の方や社員にも愛されてこそ、会社は成長すると思います。適正な価格で付加価値の高い商品を作ることで、“会社の良い時代”を作っていきたいと切に願っています。

―貴重なお話をありがとうございました。

「メディックピエド オリーブ綿混着圧オーバーニー」
価格：¥1,980（税込）(ブラック・モカ・オリーブ)
店名：Legstyle
電話：090-2823-2255（9:00〜17:00 土日祝除く）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://item.rakuten.co.jp/legstyle/mp-ov442/
オンラインショップ：https://www.rakuten.co.jp/legstyle/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
金地祐一郎（香川シームレス株式会社 代表取締役社長）

1975年香川県生まれ。帝人商事(現・帝人フロンティア)に入社し、約10年間の修業期間を経て2007年に当社へ入社。2016年に同社代表取締役社長に就任。現在はストッキング・タイツの製造販売以外に一般医療機器の製造販売認可を取得し、弾性ストッキングの製造販売にも力を入れている。

＜文／鈴木満優子　MC／油井直美　画像協力／香川シームレス＞