今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、サスティナブル素材「NUNOUSⓇ」を使用した「スマホサコッシュ」。商品を販売するのは、創業140年以上の歴史を持つ岡山県の染色加工会社、セイショク株式会社です。同社の代表取締役社長 姫井明氏に、新たな素材を開発した経緯や商品の魅力について、取材陣がお話をうかがいました。
岡山・老舗染色加工会社が開発!今注目を集めるアップサイクル素材「NUNOUSⓇ(ニューノス)」を使用したきれいめおしゃれな「スマホサコッシュ」
2024/08/28
セイショク株式会社 代表取締役社長の姫井明氏
―御社の事業内容を教えてください。
姫井 1880年創業、岡山県倉敷市に本社を構える染色加工会社です。長い歴史の中で培ってきた加工技術力や生産管理力を生かし、ワーキングユニフォーム生地や人工皮革といった生地の染色整理加工事業を広く行っています。
―社長に就任されるまでの経緯をお聞かせください。
姫井 大学卒業後、東京の食品会社に入社しました。入社して数年経った頃に結婚し、妻の実家の家業である当社を私が継ぐことになったため、5年間勤めた食品会社を退職。繊維業界を学ぶために東京の繊維メーカーで3年ほど修業した後、2011年に当社の岡山工場に赴任しました。代表取締役社長に就任したのはその1年後の2012年です。
―社長就任後、すぐに新規事業を立ち上げられたそうですね。その理由は?
姫井 染色業界に足を踏み入れたときに、苦労しているな、このままではいけないな、という不安や危機感があったからです。それまで勤めてきた食品メーカーでは自社に価格決定権がありましたが、当社にはそれを持たない取引が多くありました。事業を継続するためには、自社で価格設定できるものを作るべきではないか、それがより面白い仕事へとつながるのではないか――。そうした想いがあったからです。
―どのように事業内容を決めていったのでしょうか?
姫井 最初は事業といえるほどの規模ではなく、新たな事業の創出に適任だと感じた社員数人に声をかけ、定期的に集まってブレインストーミングをするところから始まりました。ブレインストーミングを重ねる中で、当社の資源は何か、他社がまだやっていないことは何か、当社が行うからこそ意義のあることは何か、といった点について考え、数えきれないほどの案を出し合いました。
そして、先見性や独自性、また市場規模や運用の観点から挙がった案を精査し、1年ほどかけて、選択肢を一つずつ潰すという作業を行います。その結果残ったのが、布を染色する工程で発生する規格外の布を活用すること。最初から意識していたわけではなく、自然とたどり着いた答えが、SDGsやアップサイクルに関するものでした。
―開発期間はどれくらいですか?
姫井 事業内容を固めて、それに向かって具体的に動き始めたのは2013年、社長に就任して2年目のときです。工業技術センターに通って試験を繰り返し、製品化にこぎつけて事業部を立ち上げたのは、それから5年後の2018年のことでした。こうして生まれたのが、アップサイクル素材「NUNOUSⓇ(ニューノス)」です。ゼネコン様や建築事務所様、デザイン事務所様を訪ねて商品をご紹介させていただいたり、展示会に出展したりして、現在まで認知拡大に努めています。
―「NUNOUSⓇ」の特長は?
姫井
規格外品となり廃棄されてしまう布を、数百枚積層し、サトウキビ由来の樹脂を浸してブロック状にしたもので、独自の特許製法で製作しています。これを「NUNOUSⓇ STONE」と名づけました。地層のような断面が特徴的で、柔らかな感触のある素材です。商業施設やオフィス空間の建材として、インテリアプロダクトの材料として用いられています。
またSTONEを水平方向にスライスし、シート状にした「NUNOUSⓇ SKIN」も開発しています。加工しやすい素材で、布を原料にしていながら革や木のような手触りがあります。布の色や質感を損なわない新たなアップサイクル方法として、国内外のさまざまな業種の企業様にお引き合いをいただいています。
繊維の規格外品はリサイクルが難しく、
一般的に粉砕や焼却など廃棄に近い処理が行われる。
こうした社会課題に向き合う新たなアップサイクル方法として注目を集める。
―「スマホサコッシュ」について教えてください。
姫井 岡山県の中学生が「地元に貢献したい!」「もっと多くの人に知ってもらいたい」という思いからプロデュースしてくれた「NUNOUSⓇ」の商品です。スマホを入れるケースの需要が高まっているのではないかと考え、制作してくれました。
スマホケースながら小物も入るバッグで便利。
姫井 スマホの出し入れのしやすさを重視しながら、キーケースやハンカチなども一緒に入れられるサイズに仕上がっています。また、縫製は岡山市の革工房様に行っていただき、強度を上げるために、パーツの一部に国産革を使用しています。
積層させたブロックをスライスする際、木目のような美しい模様が生まれ、その模様は1枚1枚異なります。製品ごとに異なる柄や、新感覚の風合いをぜひ楽しんでいただければと思います。
カラーはブラック、ライトグレー、ライトブルー、デニムの4色展開。
裏面には交通系ICカードなどを収納できるポケットがついている。
スマホサコッシュのほか、
ペンケース(写真左)、パスケース(写真右)も製品化されている。
―今後の展望をお聞かせください。
姫井 繊維産業、特に染色業では廃業される企業も多く、今まで染色をお願いしていた会社がなくなってしまったからと、これまでお取引のなかった新しい企業様にお声がけいただく機会が増えています。当社は、新しいその需要に応えるために、新たな機械を導入しながら今までできなかったことにも少しずつ対応できるようになってきました。染色の事業でも、「NUNOUSⓇ」の事業においても、当社でなければできないもの、オリジナルの付加価値をご提供することを目指して、今後もしっかり設備投資しながら、取り組んでいきたいと思っています。
また、「NUNOUSⓇ」を使ったアイテムに関しては、たくさんの方々にご愛用いただければ、ひいては廃棄される布を減らすことにつながると考えます。多くの方々に手に取っていただくために、SDGsの目標達成に貢献するために、新しい素材感を楽しんでいただきながら、長く使っていただける商品展開を行っていきたいです。
―貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「スマホサコッシュ」(約115mm×155mm×25~30mm)
カラー:ブラック、ライトグレー、ライトブルー、デニム
価格:¥5,500(税込)
店名:NUNOUS ONLINE SHOP
電話:086-224-3284(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.nunous.jp/view/item/000000000225?category_page_id=ct23
オンラインショップ:https://shop.nunous.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
姫井明(セイショク株式会社 代表取締役社長)
1980年 群馬県生まれ。明治大学卒業後、丸美屋食品工業株式会社へ入社し、営業活動に従事。2011年、妻の実家の家業であるセイショク株式会社岡山工場へ赴任し、2012年に代表取締役社長に就任。2013年より現在のNUNOUSⓇ事業の前身である新規事業開発プロジェクトを立ち上げ、現在はNUNOUSⓇを広めるべく、国内海外でトップセールスを展開する。
<文/棚田れんげ MC/油井直美 画像協力/セイショク>