“今に生きる”モダンで洗練された和の小物。京都・西陣の織元ブランド秦流舎の「おちょぼバッグ」と「おじゃみがま口」

2024/09/04

今回編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、水玉模様と色鮮やかな生地が目を引く「おちょぼバッグ」と「おじゃみがま口」。本商品を販売するのは京都・西陣で西陣御召の製造・企画・販売を行う株式会社秦流舎。同社の代表取締役 野中順子氏に、織物の特長と商品の魅力について、取材陣がお話をうかがいました。

株式会社秦流舎 代表取締役 野中順子氏
株式会社秦流舎 代表取締役の野中順子氏

―御社の沿革をお聞かせください。

野中 当社の歴史は1966年、夫の父が「野中正機業店」を創業したことに始まります。義父は西陣の、江戸時代から続く織屋の番頭でした。義父が勤めていた織屋は御召(おめし。絹織物の名称のひとつ)の中でも白生地のものを織る会社で、義父も御召白生地の織屋として独立しました。白生地は染めといった加工を施す前の段階のもので、重視されるのは風合いや丈夫さ、着物を着たときの落ち感などです。当社のルーツはここにあり、その技術や伝統を受け継いでいます。

―御社を設立された経緯は?

野中 織物産業の多くは分業体制をとっていますが、御召白生地を織るという工程だけではなく、糸に色をつけて図案を決めて織り、それを製品に仕上げるまでを行いたいと考えました。そのための会社として、1995年に、夫とともに「秦流舎」を立ち上げました。
2003年には京都最古の花街ともいわれる上七軒の町家に和小物や着物、バッグなどを扱うショップ「弓月京店」をオープンし、2009年にはデニム着物をメインとしたブランド「でにむどす」を発表しています。

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京都・上七軒のショップ「弓月京店」。
和小物、バッグ、着物、帯などの販売のほか、
2Fのギャラリーでは工房で織り上がった西陣御召の着物や帯の展示などを行う。
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季節や年代を問わずに着られるデニム素材に着目し、
デニム着物を発表。製織、縫製は、
ジーンズの聖地・岡山県倉敷市児島で行っている。

―西陣織の仕事に携わられるようになったのはいつから?

野中 私は生まれも育ちも京都の祇園で、夫と結婚して初めて西陣に住み、西陣織の仕事に関わるようになりました。本を読んだり職人さんに教えてもらったりして、とにかく懸命に織物や図案などを勉強し、本格的に仕事に取り組み始めたのは、子どもたちが小学生になり、当社を設立してからです。

―商品を作る際に、大事にされていることは?

野中 「所有価値」ではなく、「使用価値」を重視することです。御召に関しては、たとえば、歌舞伎を観に行くとき、お稽古するとき、お友達と食事にいくとき……そういう普段の何気ない場面で何度も着てもらいたいと考えています。パッと見ただけでも目立つ奇をてらった図案は、一度着てしまうと次に着にくくなるものです。帯や小物合わせで何度も着て楽しめるようなデザインに、それから現代の街並みにも合うような色合いに仕上げています。長く、何度も着てもらうことを考慮し、風合いや丈夫さも大切にしています。
また、当社では染織品を通して日本の文化、歴史、美意識を発信する、次の世代に伝える、というモットーを掲げ、ものづくりを行っています。

―今回ご紹介いただくアイテムの生地の特長を教えてください。

野中 使用しているのは、当社オリジナルの素材、先練紋御召輪奈ビロードです。先練りとは、生糸から不純物を取り除き、細く綺麗な絹糸にしてから生地を織ること。絹糸を用い、紋織りで織った御召の白生地を、さまざまな色に染めています。小物用に染めているため、赤やオレンジ、ターコイズブルーといった着物にはなかなか使えない色もあり、アイテムはコーディネートのアクセントとしても取り入れていただけると思います。
生地に柄を作る際、切りビロードといってパイルを切る手法を用いることも多いのですが、輪奈ビロードはパイルをカットせず、ループのまま、ループの配置によって柄が作られます。こうして作られる生地は軽くて丈夫で、またしなやかさが特長です。

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可愛らしい水玉模様!カラーバリエーションが豊富。

―「おちょぼバッグ」について教えてください。

野中 風呂敷を2枚使った「あずま袋」を元に企画したバッグです。この形は京都の袋物職人さんが作ってくださったもので、裏張り一つとっても生地の風合いが生きるよう、こだわりを持って仕立ててくださいました。金具を一切使っておらず、またマチもないので、ペタンと折りたためるのも特徴です。
「おちょぼ」とは「小さい」「かわいい」という意味です。近所へのちょっとしたお出かけから茶事などのよそ行きまで、広くお使いいただけるかと思います。トートバッグの持ち手のところにかけるなどして、サブバックとしてもご活用いただけます。

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留具に使われているのは釈迦頭と江戸うち紐。
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「あずま袋」の伝統的な包装様式をヒントに生まれたアイテム。
物を大切に扱う日本人の知恵と美意識が感じられる。
サイズは大(写真左)と小(写真右)の2種類。

―「おじゃみがま口」の特徴は?

野中 「おじゃみ」とは、主に関西地方で使われる方言で、「お手玉」をいいます。コロンとした、かわいらしく温かみのあるフォルムから、そう名付けました。ビロードの優しい風合い、絹のしっとりとした風合いを味わっていただければと思います。こうした小物づくりをとおしても、日本の素晴らしいい文化を伝えていきたいです。

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「おじゃみがま口」は大、中、小の3サイズ展開。
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「おじゃみがま口」小は手のひらサイズ。

―今後の展望を教えてください。

野中 当社では、伝統とは、今の時代に合えばこそ、残っていくものだと考えます。着物には、季節や月に応じて着分けるという伝統がありますが、暑い時期が長く続く現代では、その伝統的な着分け方がそぐわない場面も見受けられるようになりました。そのため当社では、織り方を工夫して、現代の気候や暮らし方に合った着物の製作に取りかかっているところです。絹織物に異素材を少し織り込むことで、より涼しくなったり、手入れが少し楽になったりといったメリットが見出せれば、そういった織り方にも挑戦していきたいと思っています。そうして生まれた今に生きる着物、今に生きる小物を、年代を問わず、今を生きる皆様にお使いいただけると嬉しいです。

―貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

「おちょぼバッグ 小」(タテ11cm×ヨコ20cm×マチ6cm、底から持ち手までは26cm)

「おちょぼバッグ 小」(タテ11cm×ヨコ20cm×マチ6cm、底から持ち手までは26cm)
カラー:Gレッド、八重桜、紅桜、アメジスト、Hオレンジ、Gグリーンなど
価格:¥4,400(税込)
店名:弓月京店
電話:075-467-8778(10:00~17:00)
定休日:毎週水曜日、毎月第1・3・5日曜日(祝日・25日の場合は翌日に振替)
商品URL:https://www.yuzuki-net.jp
オンラインショップ:https://www.yuzuki-net.jp/shop/

「おじゃみがま口 小」(タテ4cm×ヨコ6cm×マチ4cm)

「おじゃみがま口 小」(タテ4cm×ヨコ6cm×マチ4cm)
カラー:八重桜、紅桜、アメジスト、ターコイズブルー、エメラルドグリーン、Pブラックなど
価格:¥2,750(税込)
店名:弓月京店
電話:075-467-8778(10:00~17:00)
定休日:毎週水曜日、毎月第1・3・5日曜日(祝日・25日の場合は翌日に振替)
商品URL:https://www.yuzuki-net.jp
オンラインショップ:https://www.yuzuki-net.jp/shop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
野中順子(株式会社秦流舎 代表取締役)

1959年 京都市祇園生まれ。京都女子大学を卒業後、松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)入社。1981年、西陣御召織元の野中正機業店を家業とする故・野中健二と結婚し、織物業に携わる。1994年に株式会社秦流舎を設立、取締役専務に就任。1997年に呉服店・弓月を開店して女将に就任。現代女性ならではの着物のコーディネート提案が評判となり、カリスマ女将として人気を博す。2017年より同社代表取締役を務め、西陣の文化を守りながら、常に斬新なモノづくりを続けている。

<文/棚田れんげ MC/伊藤マヤ 画像協力/秦流舎>

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