今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、「文染 天然染料インク」と「インクを楽しむガラスペン」。京都発の文房具店「文具店TAG」から生まれた文具・雑貨メーカー「TAG STATIONERY」のオリジナル商品です。文具店TAGを運営する株式会社竹田事務機の代表取締役 竹田登氏に、事業展開を進めた経緯やオリジナル文具の魅力について、取材陣がうかがいました。
古都・京都に息づく伝統美と技術が生み出す現代の文具「文染(ふみそめ)天然染料インク」と「インクを楽しむガラスペン」
2024/09/06
株式会社竹田事務機 代表取締役の竹田登氏
―創業の経緯をお聞かせください。
竹田 設立は1986年です。オフィス家具やコピー機といった事務機器の販売を行う会社として創業しました。会社を設立する前は、同じように事務機器を扱う企業に勤めていました。いつまでに独立する、といったような明確な目標があったわけではなく、私としましては、独立は自然の流れであったように思います。
―文房具のお取り扱いを始めたのはいつ頃でしょうか?
竹田 創業して間もなく、1986年頃からです。事務機器の販売事業に並行して文房具の取り扱いを開始しました。10坪の小さな文具店を開き、文房具の卸、小売事業が軌道に乗り、徐々に事業規模が拡大。現在までに京都市内のほか、大阪、兵庫、奈良、静岡などに、合計16店舗を展開しています。
京都市下京区にある文房具・事務機の小売店
「文具店TAG(タグ)本店」の外観と店内。
―オリジナル商品の開発・販売を始められた経緯は?
竹田 10年ほど前から、自社オリジナルの商品を作っていかなければという機運が社内で高まり、商品の企画開発がスタートしました。「TAG STATIONERY(タグステーショナリー)」事業を立ち上げ、企画開発室室長の森内孝一を中心に、オリジナル商品の開発、展開に取り組んでいます。
―今回ご紹介いただく「文染 天然染料のインク」シリーズについて教えてください。
竹田 染料の研究をされている「京都草木染研究所」と共同開発した商品です。伝統的な草木染めの染色技術をお借りして完成した、植物由来のインクになります。平安時代の頃に生まれた伝統色を再現しており、藍、葉緑、梔子(くちなし)、地衣、杉といったカラーバリエーションがあります。
草木染めの天然染料ならではの、
自然で奥深い彩りを楽しめる。
写真上から藍、葉緑、梔子。
―なぜインクを開発したのでしょうか?
竹田 当社は京都の企業であり、京都にまつわる商品展開を行いたいと考えていました。またオリジナルの商品開発を始めた当時、万年筆のインクブームが起こり始めていました。京都は染織の町としても知られており、友禅染めなどで使われる絹を染めるための染料を筆記具のインクに使うことができたなら、京都らしいのではないか、と考えたからです。
そこで、京都草木染研究所様にご相談にうかがったところ、日頃の地域のお付き合いから、この新しい試みにご関心をお寄せくださり、やってみましょうとご承諾いただきました。京都というのは、新しいものを取り入れる文化なのですね。染色業界と我々文具業界、何の接点もないだろうと思っていましたが、共にチャレンジ精神が旺盛なのだなと感じました。
箱は保存用のケースとしてそのまま使用できるよう、
しっかりとした厚みのあるファンシーペーパーで作られている。
―色はどのように決めているのでしょうか?
竹田 京都草木染研究所様にご指導いただいています。当社は創業40年ほどですが、京都の染物の歴史はひと桁違います。300年、400年といった長い歴史の中で受け継がれてきた伝統文化です。その文化と技術に携わる方々の力をお借りしています。色のレシピは染物屋さんに帳面が残っていて、それを惜しげもなく、ご提供いただいています。
日本伝統の和色を再現した合成染料インクシリーズ「京の音」も人気。
―インクを使用する際におすすめの筆記具は?
竹田 万年筆、ガラスペン、つけペンなどです。万年筆の場合は、高級な万年筆よりは手頃な価格の万年筆を複数本用意するのがいいと思います。1本の万年筆でほかの色を試したいときは、水に浸けておいて、洗ってまた新しいインクをつけていただかなければなりません。さまざまな色を楽しみたいときには、複数本ご用意いただいたほうが色替えの際に便利です。
―「ガラスペン」について教えてください。
竹田 メインで販売しているのは、「TAG STATIONERY」オリジナルの「インクを楽しむガラスペン」というシリーズです。理化学用のガラスで製作しており、シンプルで書きやすいガラスペンです。また透明度が高い、丈夫、軽量、耐熱性に優れているといった特長もあります。
ガラスペンは、万年筆インクのカラーバリエーションをお楽しみいただく際には、水につけてさっと拭くだけで色替えができるので、使い勝手もよいかと思います。インクの色を混ぜて使う際にも便利です。
さまざまなデザインのガラスペンがラインナップ。
書きやすさや握りやすさにこだわっている。
ペン先の太さは「細字」「中字」から選べる。
―今後の展望をお聞かせください。
竹田 文房具というのは、アナログの世界だと思っています。たとえば本や音楽はデジタルでも楽しめますが、ペンや絵の具、ノートやはさみは手元にないと使えません。実際にそこになければならないという観点から、文房具の世界ではリアル店舗がどんどん必要になってくるのではと考えます。文房具屋さんは減っていますが、文房具売り場は増えており、コンビニやドラッグストア、家電量販店には、以前にはなかった文房具売り場が広がっています。文房具を扱っていない小売業は、今はほとんどないのではないでしょうか。
文房具に長く携わってきた企業として、ものづくりや店舗運営といったアナログの世界を大事にしながらも、ECサイトやSNSといったデジタルの世界を上手に活用した事業展開を、今後も行っていきたいと考えています。
―貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「文染 天然染料のインク」(25ml)
カラー:藍、葉緑、梔子、地衣、杉ほか
価格:¥2,200(税込)
電話:075-351-0291(9:00~18:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://store.tagstationery.jp/collections/natural-dye-ink
オンラインショップ:https://store.tagstationery.jp/
「TAG STATIONERY インクを楽しむガラスペン」シリーズ
価格:¥6,600(税込)
店名:TAG STATIONERY STORE
電話:075-351-0291(9:00~18:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://store.tagstationery.jp/collections/glass-pen
オンラインショップ:https://store.tagstationery.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
竹田登(株式会社竹田事務機 代表取締役)
1951年 滋賀県生まれ。京都市内の事務機販売会社を退職し、1986年に株式会社竹田事務機を設立。当初3年間は自宅より事務機の訪問営業活動を行い、その後、10坪の小さな文具店を開業。徐々に店舗数を拡大し、現在は16店舗を運営。事務機器の販売、店舗運営のほか、ネットショップの展開やオリジナル文房具の製作も行っている。
<文/棚田れんげ MC/三好彩子 画像協力/竹田事務機>