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与謝野晶子も愛用!世界からも注目される日本伝統の江戸筆「あさつゆ」「写奏」

2024/10/18

精神が研ぎ澄まされる「書」の世界。今回、編集長アッキーが注目したのは江戸時代から続く筆墨硯紙の老舗「玉川堂」の筆。創業当時から支持されている「あさつゆ」「写奏」はどんな筆なのか。8代目を担う代表取締役の齋藤征一氏に、商品へのこだわりをうかがいました。

株式会社玉川堂 代表取締役の齋藤征一氏
株式会社玉川堂 代表取締役の齋藤征一氏

―幼少期から、ご家業に興味があったのですか?

齋藤 弊社は家族経営の筆屋で、神保町にある店舗の2階が住居でした。昔から書の展覧会などによく行っていたので、常に書が身近な環境で育ってきました。手先が器用なために工作や絵を描くことが好きで、「いつか親の会社を継ぐ」という考えも幼少期から頭の中にありました。大学卒業後、一度は外で働いてみたい気持ちがあり、古物という特殊な世界に近い環境を選び、茶道具屋の「味岡松華園」に4年ほど勤めました。

―味岡松華園での思い出は?

齋藤 丁稚奉公のような形でしたので、日曜日にはお茶会の手伝いをするなど休みがない大変さはありました。職種としては違うものの家業と似た傾向があり、4年間で学んだことは今でもとても生きています。

味岡松華園は骨董や掛け軸、書道具など多様な古物を扱っているので、道具の扱い方や「物を見る目」を養いました。筆や硯、紙、墨といった書道にまつわる物には歴史のある道具も多いのです。また、古物には偽物や傷を上手く隠したものが多いので本物を見分ける方法も教えていただきました。

―「玉川堂」の歴史を解説してください。

齋藤 弊社は文政元年、江戸末期の1818年に創業しました。当時は中坂(九段)に店を構えていて、筆墨硯紙と画材を取り扱うほか2階が貸席となっていました。貸席とは、会合や食事のために貸し出す部屋のことです。

玉川堂ではみんなで集まって漢詩を読んだり、書画会をやったり、関連道具の販売も行われました。現代でたとえるとオンラインサロンのようなものです。夏目漱石氏をはじめ、著名人も多数いらっしゃったそうです。

―創業当初から変わらないDNAについて。

齋藤 弊社が扱う筆は「江戸筆」というジャンルになります。神保町周辺が町人町であるのに対して、江戸時代の中坂はお武家様が多いエリアでした。下級武士の収入が少ないことから、幕府が副業として筆作りを推奨した流れで、弊社は今でも江戸筆を製作しています。

筆の産地は広島や奈良にもあるのですが、江戸筆の特徴はシンプルな持ち手です。ストレートな竹でコストをかけずに持ち手を作り、毛は良い素材を使用します。鋭くて弾力のある毛が「シンプルな筆」の持ち味であり、弊社が創業当時から継承してきたものです。

―社長に就任されてから大変だったことは?

齋藤 新型コロナ感染症の影響で展覧会が開催できなくなり、書道業界全体が不安に包まれました。展覧会が再開してからも、今まで足繁く通っていた方がそのまま遠ざかったり、書道を辞めてしまったりするケースが多かったのです。

現在はYouTubeで弊社の筆を紹介してくださる先生方が現れたほか、通信販売も行うなど、従来とは異なる新しい流通の形が生まれています。肩書きが社長になっても大きな変化はありません。「玉川堂の筆で書いたら賞をとった」「自分の想像以上のものが書けた」といったお声をいただくと、仕事のやりがいを感じます。

―「あさつゆ 大」の特徴を教えてください。

齋藤 「あさつゆ」はイタチの毛で作られた面相筆です。面相筆は画筆として線書きに用いられてきた筆ですが、細い線が出しやすく、仮名を書くのにも適していることで幅広く使われるようになりました。

イタチの毛は全体的に弾力がありながら硬すぎず、しなやかな線が書けます。かつては与謝野晶子先生や鈴木翠軒先生にも「あさつゆ」を愛用していただきました。

最大のこだわりはやはり材料です。筆作りには尻尾の毛を使うのですが、イタチの部位や雌雄によって毛の硬さが異なります。それらを上手く配合して、硬すぎず柔らかすぎず、しなやかな線が出る毛組みをしているのです。配合は弊社の職人が1本1本、手で練り混ぜて行います。

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硬すぎず柔らかすぎず。しなやかに文字を書くことができる。

―「写奏」についても教えてください。

齋藤 「写奏」は毛先が鋭い雀頭型という形で、細い線と太い線が出しやすい筆です。こちらもイタチの毛を使っていますが、面相筆とはまた違った形で写経に特化しています。鉛筆やボールペンで字を書く感覚で使う筆なので「書きやすさ」が前提にあり、楷書などカチッとした字を書くのに適しています。

書道は楷書から入るものですので、「払い」をしっかりと書く練習にも使えて、初心者でも扱いやすいことが魅力です。毛組みのバランスをとるのが難しいため、職人の方にはいつも細心の注意を払っていただいています。

写経向きの筆は、細かい字を書かれる中国の方にも好まれています。田中角栄氏が日中友好の行事で毛沢東氏に会う際に、日本の筆を持っていったそうです。その中に「写奏」も入っていて、現地で喜ばれたというエピソードが印象的です。

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書きやすく、初心者でも扱いやすい。

―どんな時に使用してほしいですか?

齋藤 一般的な用途ですと、「あさつゆ」はハガキを書く際の宛名書きや、筆でお手紙を書きたいときにおすすめです。筆に慣れていないと、どうしてもボテッとした太い線になってしまいますが、面相筆は比較的書きやすいといえるでしょう。

「あさつゆ」「写奏」は、写経に興味のある方にも人気の筆です。弊社のお客様には写経をされる方が多く、店先では写経用紙を販売しています。神保町はオフィス街ということもあり、書道を習う前に「自分で写経をやってみよう」という方が気軽に立ち寄ってくださるのです。

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雀頭型の「写奏」よりも穂先が長く腰のある「あさつゆ」。
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「写奏」でハガキを1枚。初心者でもサラサラとした書き味を楽しめた。

―今後のビジョンについて。

齋藤 日本では書道をやられる方が少なくなっていますが、中国や欧米では広がりを見せていて、海外への発送も随時行っています。欧米では禅のブームをきっかけに書道に興味を持つ方が多く、来日時に足を運んでいただけることが増えました。今後はSNSも活用して、「日本の筆」を通した日本文化を世界に発信していきたいと思います。

―日本の筆の奥深さを改めて実感できました。貴重なお話をありがとうございました!

あさつゆ 大(穂先の長さ3cm 太さ0.4cm)

「あさつゆ 大」(穂先の長さ3cm 太さ0.4cm)
価格:¥2,200(税込)
店名:筆墨硯紙老舗 玉川堂
電話:03-3264-3741(10:00〜18:00 土曜日は17:00まで)
定休日:日曜・祝日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://gyokusen-do.stores.jp/items/6026131a6728be1dc269e77d
オンラインショップ:https://gyokusen-do.stores.jp/

写奏(穂先の長さ2.4cm 太さ0.6cm)

「写奏」(穂先の長さ2.4cm 太さ0.6cm)
価格:¥1,760(税込)
店名:筆墨硯紙老舗 玉川堂
電話:03-3264-3741(10:00〜18:00 土曜日は17:00まで)
定休日:日曜・祝日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://gyokusen-do.stores.jp/items/6139b4fa784e3f2efc47ec70
オンラインショップ:https://gyokusen-do.stores.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
齋藤征一(株式会社玉川堂 代表取締役)

1980年、東京生まれ。大学卒業後、茶道具店「味岡松華園」に入社。4年の修行期間を経て2006年に株式会社玉川堂へ入社。2023年、同社代表取締役に就任。

<文・撮影/マスダアヤノ MC/矢口優衣 画像協力/玉川堂>

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