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環境に配慮したものづくりを発信するブランド「genten(ゲンテン)」の、長く愛用できる本革バッグ

2024/10/17

今回アッキーこと坂口明子編集長が注目したのは、天然の革素材を主軸としたバッグのブランド「genten(ゲンテン)」。“ファッションとエコロジーの融合”という理念を掲げ、25年前にスタートした日本のブランドです。
今でこそ環境問題への意識はさまざまな分野に浸透していますが、当時どんな思いで地球環境とバッグを結び付け、どうやって具現化していったのか。
自社ブランドとして「genten」を手掛ける株式会社クイーポの代表取締役社長・岡田敏氏に、取材陣が伺いました。

株式会社クイーポ 代表取締役社長の岡田敏氏
株式会社クイーポ 代表取締役社長の岡田敏氏

―まずは貴社の事業内容と沿革をお聞かせください。

岡田 1965年(昭和40年)創業の、ハンドバッグを中心としたファッションアイテムの企画・製造・販売を手掛けるメーカーで、今年で創業59周年なります。1970年代には初めてライセンス契約をスタートさせ、日本における「PRADA(プラダ)」の輸入・販売契約を始めて締結。1980年代からは「ベネトン」、「モスキーノ」とライセンス契約をし、日本のバッグシーンをリードしてきました。
現在は、今回ご紹介する「genten(ゲンテン)」などのオリジナルブランドと、「ANNA SUI(アナ・スイ)」「DAKS(ダックス)」「ピエール・カルダン」といったライセンスブランド、インポートブランドの扱いもあります。
生産拠点としては、1989年にタイ・バンコクと中国・蘇州に自社工場を創設。現在はタイで現地の職人を中心とした雇用拡大と安定に貢献しています。

―社名のクイーポは、どのような意味なのですか。

岡田 ハワイの現地の言葉で“愛おしい”とか“可愛らしい”という意味があり、転じて“社会の恋人”とも言われることから、みんなに愛される企業に成長してほしい、という創業社長の願いが込められています。エルビス・プレスリーが『ブルーハワイ』という映画のなかで、女性に対して「クイーポ」とギターの弾き語りをしたことでも知られている言葉です。

―創業のきっかけを教えてください。

岡田 先代社長である創業者が、“ファッションとエコロジーの共存”という明確な意思をもって起業いたしました。もともと豊かな自然に恵まれた長野県で生まれ育ち、東京のバッグメーカーに就職したのですが、その頃から高度経済成長に伴う自然破壊が著しい日本の街を非常に憂いていたそうです。世界を見渡してもダムの建設によって素晴らしい景観が湖の底に沈んだり、木々が伐採されたり…。「人間も自然の一部である」という地球環境への謙虚な姿勢をちゃんと具現化できるものづくりがしたい、という強い気持ちで独立したといいます。

―具体的にはバッグにどのように反映するのでしょうか。

岡田 必要なのは、革や麻など長く使えて土に還すことができる天然素材に敬意を払い、無駄なく使いきるよう製品化する努力、です。大量生産、大量消費、大量廃棄による環境汚染やごみ処理がファッション業界の課題と捉え、環境に負荷を与えず、共生しながら愛着をもって使い続けることができるものづくりを目指します。例えば、バッグの素材となる皮をなめす処理をする際、化学薬品は使わず、植物由来のタンニンを使って革にするなど、他社に先駆けて自然に配慮した商品を供給することにこだわってきました。

―早くからサステナビリティを意識されていたんですね!

岡田 1998年に長野で冬季オリンピックが開催された際には、次々と故郷の山が切り崩されていくのを目の当たりにしてさらに危機感を強くしたそうです。そういった創業者の思いをのせて、翌1999年に世に送り出したのが、今回ご紹介するオリジナルブランド「genten(ゲンテン)」です。

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デビュー25周年を迎える「genten」を象徴する、ナチュラルなブランドサイトのイメージビジュアル。

―日本語の原点…ですか?

岡田 はい、ものごとの根本によるものを意味する原点です。バッグのブランド名としてはかなり尖ったネーミングですが、難しい横文字よりも、一度聞いたら忘れられないインパクトのある名前だと思います。本革製品の価値を見つめ直し、原点に立ち返ろう、というメッセージも分かりやすく伝わってきますよね。

―ブランドの立ち上げには岡田社長も関わられたのだとか。

岡田 まだ部長職だった頃です。当時、ハイブランドがつくるナイロンバッグが大流行していました。ナイロンやプラスチックなど石油由来の素材は再資源化できず、燃やすと有害物質を発生します。これらを極力使わず、しっかりとした革主体のバッグブランドを立ち上げたいと社長から聞いた時は、思わず反対してしまいました。軽いナイロンバッグ全盛の時代、「コンセプトはすばらしいが時代が早すぎます」と進言して激怒されたこともあるんですよ(笑)。

―でも、「genten」1号店は伊勢丹新宿店の1階でデビュー、ですよね。かなり注目されたということでは?

岡田 じつはコンセプトの見直しや再検討を繰り返し、オープンは3シーズンも延期されたんです。2年前からサンプルはつくっていたのですが、伊勢丹のトップをはじめ弊社の社長、私、現場担当…と集まって、何度も何度も話し合いを重ね、時には「エコロジーとファッションの共存なんて消費者は求めていない!」などと厳しいご意見もいただいたりして紆余曲折の末、やっとお披露目となりました。
でも、いざフタをあけてみたら大反響!年配のお客様からは革のバッグが懐かしいと言っていただき、ナイロンバッグを見慣れた若い方の目には本革は新鮮に映ったようです。デザインをシンプルにして、ノンエイジ、ノンセックスとターゲットを絞り込みすぎなかったのも功を奏したのだと思います。当時、ここまで明確にコンセプトを掲げているブランドは少なく、伊勢丹の実績を見た他の百貨店からもたくさんのオファーが舞い込み、パリや上海といった海外支店もオープンしていきました。

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クイーポ本社1階にある、現在の「genten」本店。

―「genten」の特徴を教えてください。

岡田 革素材の製品がほとんどだというところです。その革は、食肉の副産物として生産されるものや、害獣駆除された動物の皮などを積極的に製品化して、限りある命を余さず活用。化学薬品を使わない植物タンニンでなめし、使い込むうちに深い味わいが出る(経年変化)、特徴的な素材です。また、動物が生きた証としての傷やシミも、不良品としてはじいてしまうのではなく、そのまま生かすことで個性としています。バッグの金具などには鉄や真鍮といった再資源化可能な素材を使い、ほどよくクラシカルなアクセントに。流行に左右されず商品価値が増すようなデザインは多くの工程を職人の丁寧な手仕事で担っているため、壊れたら修理をすることもでき、愛着をもって長く使用できます。それが、結果として安易な使い捨てを防ぐことにも繋がるのです。

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使い込まれて艶やかに光る革が美しいバッグに、ブランドのコンセプトチャートが。

―今回ご紹介いただくミネルヴァシリーズとは?

岡田 ミネルヴァは、「genten」らしさのカギとも言える革の名称で、創業者がイタリアのフィレンツェでこの美しい革と出合ったことが、ブランド立ち上げに大きく影響しました。
これは、10世紀以上前から伝わるバケッタ製法という昔ながらのレシピで仕上げています。自然由来の植物タンニンと牛脚脂を使い、時間と手間をかけてじっくりとなめすことで風合いが独特になる、こだわりの素材です。
この革の魅力は革そのものの自然な風合いがあり、使う時間を重ねることで、表情豊かなシボ(革表面の不規則なしわ模様)がしっとりと馴染んで落ち着いた輝きを見せていくところ。ミネルヴァシリーズには、独特の「シボ」が印象的なミネルヴァボックスを使用し、その風合いを生かすべく、できるだけシンプルなデザインに落とし込んでいます。

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ミネルヴァは、ノルマンディ産の雌牛のショルダー部分のみを使用。
ふくよかで上品な革の質感がブランドイメージにぴったりです。

―そのミネルヴァを使用したアイテムが、「ミネルヴァミニ2WAYショルダーバッグ」ですね。

岡田 はい。部位によってシボの入り方が変わるため、ひとつひとつ革の質感が異なるところが魅力のアイテムです。ミニならではのコンパクトな可愛らしさがありつつも、外側にゆとりをもたせ長財布が横に収まるよう改良した新型で、中央の仕切りをファスナー仕様にし、ファスナーをあけるとフラップポケット、後ろにもファスナーポケット、と収納性を大幅にアップデート。タグとパドロック錠…いわゆる南京錠に革を巻いたものも取り付け、デザイン性と安全性の両方に配慮したことで、ちょっとしたお出かけや旅先での散策など、大事なものを持ち歩くのにとても便利なバッグになっています。

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ミニ2WAYショルダーバッグは、ミネルヴァシリーズの2023年春夏コレクションに登場した新作。
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ファスナー付きの仕切りを中心に、前側と背側に2つの間口が。
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パドロック錠に差す鍵は、タグの革の内側に。

―トラディショナルなデザインもステキです。

岡田 横長のバランスが、クラシカルなハンドバッグのような佇まいですよね。真鍮金具で簡単に取り外しできるショルダーベルトつきの2WAY仕様ですから、外して手提げ持ちでおめかしした装いに、長めのショルダーで斜めがけすればカジュアルなコーディネートにもぴったり。さまざまなシーンで活躍するはずです。タンニンなめしの特性上、日焼けや経年変化がみられますが、それも長年愛用していただいた証。時を重ねた革の風合いに愛着を感じていただければと思います。

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持ちやすいやわらかな手縫いのハンドル。
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両手があいて便利なショルダー掛けも可愛い。

―もうひとつの「サスティナブルカットワーク トートバッグ(中)」についてはいかがでしょうか。

岡田 「genten」のアイコニック的な存在になっている、花模様のカットワークのデザインです。地中海沿岸の家屋や調度品などに使われる伝統的な意匠がモチーフとなり、花模様を職人がひとつずつ革から抜き出す手仕事から生まれるカットワーク。店頭でも不動人気のロングセラーシリーズですので、一度は手に取られたことのある方も多いかもしれません。

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華やかな存在感を放つ、サスティナブルカットワーク トートバッグ。

―まるで工芸品のような美しさですね!

岡田 定番のカットワークの花模様のカッティングを細かなパーツに施し、縫い合わせたのが、サスティナブルカットワークです。一枚一枚形の異なる革から職人が金型を組み合わせ、バッグパーツとして抜き出して使いきるのはとても難しい作業なのですが、長方形にするなど細かいパーツを考案し、極力余さず隅々まで裁断しきれるように取り組みました。やわらかなミネルヴァの小さな革に、ひとパーツごとに花模様の抜きを入れ、コバ(断面)を磨き、焼きねんという加工を施してから、ひとつひとつ丁寧に縫製していきます。
大量生産やスピード化の時代に逆行するような、とても沢山の手間と時間が必要になります。でも優先すべきは効率や、スピードではありません。限りある資源を大切に使うものづくり。これこそ創業者がこだわり続けた象徴ともいえるファッションアイテムだと思います。

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余すことなく革を隅々まで使いきるよう、職人が一枚一枚工夫して調整。

―こちらも、素材はミネルヴァ使用ですね。

岡田 ミネルヴァは、使われる方々のライフスタイルが経年変化に色濃く出るのも、面白いところ。長年持つほどに唯一無二のバッグへと変化していきますので、環境への意識を感じながら、価値を増やし、育てる気持ちで愛用してください。
もちろん、機能面も充実しています。クラフト感があって繊細そうに見えますが、意外と丈夫。本体から持ち手にかけてのカーブは肩掛けやひじ入れがしやすいよう計算されていますし、内ポケットはファスナーありなし合計4つ。全方位的につくり手のやさしさがあふれる仕様になっています。

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持ち手や口元に金具のパーツがなく、やわらかな印象。
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口元のベルトや裏地もついているので安心です。

―それでは最後に、今後の「genten」への思いやビジョンをお聞かせください。

岡田 私は「genten」を日本発のラグジュアリーブランドにしたい、と考えています。ラグジュアリーとはつまり、輝きをもった、という意味です。海外にはすばらしいバッグをつくるラグジュアリーブランドがたくさんあって、その長い歴史にはかないません。ですが、日本にはこんなに優れた革製品をつくる独自の技術があり、信念をもって魅力あるバッグを提供している、と認知されれば、必ず世界で輝けると信じています。
クイーポという会社の理念は、ファッションを通じて人々や社会に幸せを届けること。そのためには魅力的な商品を提案していくことが重要です。それを具現化するために「genten」があるのです。

―海外進出のお考えもあるのでしょうか。

岡田 以前はパリやフィレンツェ、上海などに路面店があったのですが、どこも撤退してしまったので、必ずリベンジを果たしたいと思っています。楽しみにしていてくださいね!

―本日は、貴重なお話をありがとうございました!

ミネルヴァミニ2WAYショルダーバッグ

「ミネルヴァミニ2WAYショルダーバッグ」(横幅:上部26×下部26㎝、高さ:16㎝、マチ:10㎝、持ち手:29㎝、ショルダーベルト:86~141㎝、重さ:615g、カラー展開:チャ・ドーンブラック)
価格:¥75,900(税込)
商品URL:https://genten-onlineshop.jp/item/detail/44037/50
genten公式オンラインショップ:https://genten-onlineshop.jp/
ショップリスト:https://genten-life.kuipo.co.jp/contents/83/

サスティナブルカットワーク トートバッグ(中)

「サスティナブルカットワーク トートバッグ(中)」(横幅:28㎝、高さ:24㎝、マチ:9㎝、持ち手:14㎝、重さ:445g、カラー展開:チャ・ヌメベージュ・ノウチャ・クロ)
価格:¥49,500(税込)
商品URL:https://genten-onlineshop.jp/item/detail/44051/50
genten公式オンラインショップ:https://genten-onlineshop.jp/
ショップリスト:https://genten-life.kuipo.co.jp/contents/83/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
岡田敏(株式会社クイーポ 代表取締役社長)

1960年富山県生まれ。1982年に小杉産業株式会社(現・株式会社コスギ)入社。
1990年縁あって株式会社クイーポに入社。経理部・総務部配属後、営業本部長を経て2009年代表取締役社長に就任。創業者の意思を受け継ぎ、ファッションとエコロジーの融合を軸とした経営を行っている。

<文/亀田由美子 MC/三好彩子 画像協力/クイーポ>

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