石川県の最南端に位置し、九谷焼・山中漆器などの伝統工芸で知られる加賀市。そんな加賀市で新しい技術に挑戦し、樹脂製漆器をはじめ画期的な商品を生み出し、時代の先端を走り続けているのが石川樹脂工業株式会社です。今回編集長アッキーこと坂口明子が注目したのは、同社ブランドARAS（エイラス）の「カレースプーン」と「深皿スクープ」。環境・耐久性に配慮した品々は、日常で気軽に使いやすく、さらに見た目も美しいと好評。石川樹脂工業株式会専務取締役の石川勤氏に商品の特徴やものづくりへのこだわりについて取材陣が伺いました。

石川樹脂工業株式会社 専務取締役 石川勤氏

―御社の歩みをお聞かせください。

石川　元々は私の曾祖父が石川県加賀市山中温泉地域で生産されていた山中漆器の木地師をしており、それを山中地域および輪島地域に販売したところから、ビジネスが大きくなっていったと聞いています。法人化したのは60年ほど前で、そこから徐々に木地ではなくて、時代に合わせて大量量産が可能な樹脂に移行する形で成長してきました。

私の父（代表取締役会長・石川章）は職人気質といいますか、新しもの好きであることもあって、我々が取り扱う樹脂の原料の種類や技術が次々に増えていったように思います。現在では、食器以外にも電線の部品や仏具の部品など、暮らしを支える商品、あるいは彩る商品を作っており、幅広いラインナップを手掛けています。

―強みはどんなところにありますか？

石川　やはり樹脂に関しては、専門家として日々勉強させていただいている領域なので、技術的な部分や素材の良さを引き出すことにおいては負けたくないですし、どんどん強みにしていきたいと思っています。また、自社工場で製造を行っているからこそ、ものづくりに対する愛情や真摯さは大事にしているので、まずはその点で負けないようにしたいものです。

特に自社ブランドARASのお皿に関しては、金沢という食文化が豊かな土地柄や、曾祖父がそもそも職人だったこと、そして私自身が幼い頃から工芸品に親しみを持っていたという原体験もあり、強い思い入れがあります。先進技術と伝統が融合した新素材を開発したことで生まれた、いわば新しい食器なのです。

ARASの商品はすべて石川県加賀市の自社工場で生産。
現場の職人とデザイナーで綿密に話し合い、機能性や見た目の美しさを追求。料理を引き立てるシックな色を生み出した。

―ARAS「カレースプーン」の魅力を教えてください。

石川　樹脂の良さ、素材の価値が最も活かされているのが、このスプーンです。先端が0.5ミリとかなり薄くなっておりまして、これを金属でやると刃物のようになってしまいますが、樹脂なので口当たりがよく、口の中で存在感を主張しません。また、金属製だと特有の雑味や、熱の伝わり方が急激というような側面がありますが、この商品の素材（トライタン＋ガラス繊維）はそのあたりをクリアしているので、食体験に集中でき、料理の味わいそのものを楽しめます。軽くて手に馴染みやすく、使いやすいのも魅力です。

さらに、サステナブルな要素を採用した商品でもあり、永く使える耐久性がありながらも、役目を終えて廃棄する際にはリサイクルが可能な素材を使用しています。

洗練されたシックなカラーが印象的なARAS「カレースプーン」。
ブラック（写真左）やホワイト（写真右）の他、グレー、グリーングレー、ピンクグレーが揃う。

―同ブランド「深皿スクープ 杉皮」の特徴は何でしょうか？

石川　ARASの「杉皮」シリーズは、環境と共生するものづくりをコンセプトにしたサステナブルコレクションで、素材が杉皮というところに特徴があります。杉皮は間伐材を木材にする過程で出るもので、多くは廃棄されてしまうのですが、これをアップサイクルして50%以上使用し、樹脂とガラス繊維で強化することでお皿という形にしました。風合いがありながらも食洗機対応可能で使いやすいというところが大きな魅力かと思います。

また、杉皮は天然の香りが強めなので、食事の邪魔にならないよう、2回洗浄処理しております。原料の調達から仕上げまで一つ一つの工程に手間がかかるため、毎月販売できる枚数が限られており数量限定の販売とさせていただいております。おかげさまでご好評をいただき、ソールドアウトが続く売れ筋商品となっています。

木の温もりが感じられる自然な色合いが魅力。
食洗器対応、漂白剤対応で使い勝手の良さも嬉しい。写真は「杉皮」シリーズの「ブラウン」。

―今後の展望についてお聞かせください。

石川　樹脂の可能性をどう形にするか、というのが我々の大きなミッションだと思うので、樹脂の可能性を信じて表現できる形を模索し、食体験を中心に置いたものづくりをしていきたいです。あとは海外の方からも少しずつお声がかかっているので国外にも発信していけたらとは思っています。既存の商品を丁寧につくりながら、ARASの杉皮シリーズのように新商品開発にも取り組み、新しい価値創造へと繋げていければと思います。

―貴重なお話をありがとうございました。

「カレースプーン」（21cm）
カラー：ブラック、グレー、グリーングレー、ホワイト、ピンクグレー
価格：¥1,320（税込）
店名：ARAS
電話：0761-77-4556（10:00～17:00 11:30～13:00を除く、日祝日除く）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://aras-jp.com/products/%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%B3
オンラインショップ：https://aras-jp.com/

「深皿スクープ 杉皮」（26cm）
カラー：ライトブラウン、ブラウン、ブラック
価格：¥3,850（税込）
店名：ARAS
電話：0761-77-4556（10:00～17:00 11:30～13:00、日祝日除く）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://aras-jp.com/products/aras-%E6%B7%B1%E7%9A%BF%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%97-%E6%9D%89%E7%9A%AE
オンラインショップ：https://aras-jp.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞
石川勤（石川樹脂工業株式会社 専務取締役）

1984年、石川県加賀市生まれ。東京大学工学部卒業後、Procter&Gambleに入社し、Finance&Accounting部門配属で勤務。国内工場や営業企画での数年間の経験後、シンガポールに転勤。帰国後は日本CFOの右腕として営業企画や物流改革に従事。その後、“自分の手でものづくりをしたい”と一念発起し、石川樹脂工業株式会社に参画。商品開発、コスト改革、組織づくりなど経営全般を担当する。

＜文／Takako.H　MC／澤水拳太　画像協力／石川樹脂工業＞