今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、炭と観葉植物がひとつになったインテリア小物「炭花壇」。斬新な組み合わせと、その美しく愛らしい姿に心を惹きつけられます。この「炭花壇」はどのようにして誕生したのでしょうか。販売元の株式会社増田屋・代表取締役社長・増田剛氏に取材陣がお話をうかがいました。
炭×観葉植物で癒しのインテリア「炭花壇」。人と差がつくギフトとしてもおすすめ!
2024/11/15
―会社の沿革を教えてください。
増田 創業は1935年、火鉢やストーブなどの燃料問屋としてスタートしました。その頃、一般的に熱源として使われていたのは、薪や木炭、豆炭といった固形燃料です。それが1960年代に起こったエネルギー革命で、ガスや石油に変わりました。
炭の需要が低下するなか、当社でも天然ガスや石油燃料を取り扱い、事業も拡大していきましたが、炭へのこだわりは変わらずに持ち続けました。特に1970年代後半から手がけている茶の湯炭は、その質はもちろん、取扱量も業界一を誇っています。
―ターニングポイントとなった出来事は?
増田 1993年に起こった「平成の米騒動」と呼ばれる出来事です。その年、大冷夏が原因で日本は深刻な新米不足に陥り、国産の古米や外国産米が多く流通するようになりました。そのとき、さまざまなメディアで、お米と一緒に備長炭を入れてご飯を炊くとおいしくなる、水の浄化にもつながる、といったように炭が取り上げられ、燃料以外の使い方が世の中に広く知られるようになりました。これをきっかけに、私の父である先代社長が炭シートなど炭製品の開発を開始。当社の炭事業における転機になりました。
―社長に就任されたのは?
増田 社長に就任したのは2010年です。私で3代目になります。それまでは、自動車部品などを扱っている商社に勤めていました。その商社を就職先に選んだのは、幼い頃から、家業はガソリンなどの石油製品を扱う仕事で、自分もそういった道に進むのだろうと漠然と思っていたからです。
商社を辞めて増田屋に戻ってきたときに、うちは石油を扱う会社だけれど、炭も扱っていたな、と。そのときに初めて炭を強く意識したように思います。家には炭の倉庫もあって幼少の頃から炭が身近にあったのに、炭のことを何も知らないような状態から増田屋での仕事がスタートしました。
―「炭花壇」の開発経緯を教えてください。
増田 当社では炭や火鉢に使う道具のほかに、備長炭パウダーを配合した石鹸や歯ブラシ、美容グッズなどを販売しています。いずれも好評をいただき、よい製品であると自負しておりますが、競合商品が「炭アイテム」ではなく、より分野の広い「生活雑貨」になるという点において、その製品力・販売力を存分に発揮できていないのでは、という課題を抱えていました。
そうしたなかで生まれたのが「炭花壇」です。ほかにはない当社だけの製品、オリジナルという強みがあります。アイデアマンだった父が発案し、私が作り上げました。炭を鉢にするための穴の開け方から植物を植える方法、植物の選定、製品の販路まで、試行錯誤を繰り返しました。ただ子どもの頃からものづくりが好きで、素材をどう生かすか、どうアレンジするか、ということを考えるのが得意でしたので、大変さや苦労はあまり感じなかったです。
「炭花壇」の炭のサイズや植物の種類はさまざま。部屋の雰囲気や好みに合わせて選べる。鉢受皿として使える器が付属する。
―「炭花壇」の特徴を教えてください。
増田 くぬぎ炭をくり貫いて観葉植物を植え込み、苔玉風に仕上げた鉢植えです。くぬぎ炭はその美しさと上品さから茶道にも用いられ、備長炭に並ぶ最高品として世界中で称賛される木炭です。炭には吸着力があり、脱臭や湿気の除去、浄化作用などが期待できます。また観葉植物には空気清浄効果やリラックス効果があるといわれます。「炭花壇」はこの炭と観葉植物を組み合わせた、住空間に癒しを取り込めるインテリアです。
「くぬぎ炭」は切り口に菊花のような美しい割れ目があるのが特長。「菊炭」とも呼ばれ、茶道の炭として用いられる。
植え込まれた部分は苔玉風になっている。
―観葉植物の種類にこだわりは?
増田 炭のなかに土を入れると、炭自体が土の汚れを吸着して汚れてしまうため、水苔を使用しています。これはハイドロカルチャーという栽培方法です。「炭花壇」の観葉植物には、ハイドロカルチャー苗(*水耕栽)で、なおかつ炭と相性のよい性質のもの、比較的育てやすいものを選んでいます。
観葉植物の種類はガジュマル、バンブーなど(時期によって取り扱いがない種類もある)。
写真の植物はガジュマル、炭は幅約15㎝×径約7~8㎝サイズのもの。
―お客様からはどんなお声をいただきますか?
増田 見た目に印象深く、ほかにはないアイテムで贈った相手に喜ばれた、という声をよくいただきます。観葉植物はギフトとしても大変人気ですが、「炭花壇」は、そうした広く喜ばれやすいアイテムでありつつ、炭というプラスαの要素を備えています。ほかと差別化できるオリジナルの炭アイテムとして企画したものであり、当社としても狙ったところを喜んでいただけて、とても嬉しいです。
また飲食店の方からは、土が使われていないため、衛生的、というお声もいただいております。
付属の鉢受皿(器)では和モダンな雰囲気を楽しめるが、飾る場所に合わせて別の鉢受皿を用意すれば、印象の変化も楽しめる。
―扱う際の注意事項は?
増田 まず水やりについては、乾いたらたっぷり与える、を実践してください。夏でも冬でも同じです。「炭花壇」は苔玉風に仕上げていますので、その部分が乾いたら、炭から水が流れ出るくらい与えます。乾かないうちにひたひたになるまで水をあげることを繰り返すと、根腐れしやすくなります。
また植物は寒暖差が激しいと弱ってしまいますので、一日をとおしてなるべく温度差が少なくなるよう、置き場所を工夫するとよいかと思います。普通の観葉植物の育て方と同じですが、肥料をあげるのは、炭の吸着作用もあり、基本的にはおすすめしていません。
―商品を作る際に、重視していることは?
増田 炭を身近に感じてもらうにはどうすればいいか、炭をもっと家庭の中に取り入れてもらうためにはどうすればいいか、ということを念頭に置きながら、商品づくりに取り組んでいます。「炭花壇」を始めとする炭のインテリア雑貨の展開は、そういった点を意識して始めたものです。
―炭の需要についてはどうですか?
増田 炭の需要を維持したり、増やしたりすることができれば、炭にまつわる伝統や文化を継承し、残していくことができます。世界各地に炭はあっても、日本の炭ほど洗練された上質なものはありません。こうした伝統技術も、炭の需要がなければ途絶えてしまうでしょう。
当社は長年にわたり、燃料問屋を営んできました。炭に携わる炭事業者として、炭そのものだけでなく、炭を作る製炭士、製炭の技術、炭の伝統・文化などを、当社ができることは僅かしかないかもしれませんが、これからも守っていきたいと考えています。
炭の需要の維持・増加には、炭の価値やよさを知識として知ってもらうのではなく、実際に体感してもらうのが重要です。そのために、価格帯も含めて、身近に感じられ、生活に取り入れやすいことにこだわった商品づくりを行っています。
―今後の展望を教えてください。
増田 炭の正しい価値を伝え、また価値を高めることのほかに、価値を理解してもらったうえで商品を販売していくにはどうしたらよいか、という点も当社の課題のひとつになっています。今後のビジネス展開によい影響をもたらすと思いますので、時代のニーズに合わせたさまざまな方法を検討し、クリアしていきたいです。
―最後に、読者にメッセージはありますか?
増田 木炭に適しているのは樹齢10~30年の原木です。原木の伐採は、日の当たるきれいな山を生み、二酸化炭素の吸収量の多い若い木を増やします。森を若返らせることにつながり、地球温暖化の一因ともいわれる温室効果ガスの削減に貢献しています。炭を使っていただくことは、環境保全やSDGsの推進につながります。こうした観点からも炭に興味を持っていただき、炭アイテムを手に取っていただけると嬉しいです。
―貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「炭花壇(L 観葉植物)」(器付き、全高約25cm)
価格:¥4,290(税込)
店名:【炭・燃料の専門通販】+炭STYLE 増田屋
電話:03-3755-3181(8:30~17:30 平日)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://masudaya.shop/products/8503
オンラインショップ:https://masudaya.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
増田剛(株式会社増田屋 代表取締役社長)
1972年まれ。大学卒業後、自動車部品・用品の卸商社に入社し、増田屋へ入社。2010年に同社代表取締役社長に就任。全国燃料協会、東京都燃料商業組合、すみやきの会などの薪炭その他燃料の改良発達並びに燃料関係各機関の連絡、供給を行う団体に所属。
<文・撮影/棚田れんげ MC/白水斗馬 画像協力/増田屋>